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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第二章 双子迷宮
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第三十九話

 

 夜。帳が降りて辺りが宵闇に包まれると、幾つかの部屋ではランプをつけ、幾つかの部屋では照光板(ライトボード)の魔導具に光が灯った。


 レドリオンの街、冒険者ギルド。

 三階にある小部屋に珍しいメンバーが集まっている。


 ギルドマスター、ギャレット。

 レドリオンの冒険者ギルドのトップであり、バスティタ内の迷宮にも詳しい元冒険者。

 サーバルキャット種らしい細身の身体に金毛に黒い斑点が沢山浮かんでいる。頭が小さいのでより細身に見えるけど、身体が締まっていて動きに隙が無い。


 Bランク冒険者ジェシー。

 ギャレットに引っ張られて冒険者としてだけではなく、レドリオンの冒険者ギルドのスタッフとしても活動している。

 冒険者ギルドでハクの登録試験を担当したのもギルドの依頼を受けたからだ。


 Cランク冒険者パトリック。

 レドリオンを拠点にする猫人のシンガプーラ種の中堅冒険者。

 グレイの短毛種で細く長い尻尾が特徴的な男。小型種だけど筋肉質な体格をしている。


「パトリック、時間をとってもらってすまないな」


「いえ、こっちこそ遅くなってしまって……」


 ジェシーがパトリックを労いながら話を促した。

 それぞれが小さな会議室で椅子に座って寛いでいるのは、それなりに気心の知れたメンバーである証だ。


「今日、冥界の塔(ハデスタワー)の方を見てきました」


 一息ついてパトリックが説明を始める。


「やはり、何かおかしかったです。

 まずは冒険者が少なかったです。元々冥界の塔(ハデスタワー)を主にしてる冒険者は少ないのですが、それにしても少な過ぎます。

 私たちが見かけたのは十パーティほどでした」


「そうか、今まで冥界の塔(ハデスタワー)を主にしてた冒険者たちはどうしたのか?

 ……噂について詳しく調べる必要があるな」


 ジェシーが頷きながら聞いている。


「それから十階層の階層主(フロアマスター)が生きてました」


「ん? 黒妖犬(ヘルハウンド)がか?」


「はい。恐らく再生してから二週間は経ってるはずです。それが生きていました」


「誰も倒さなかったのか?」


「……あるいは誰も倒せなかったか」


 ジェシーの問いに、ギルドマスターのギャレットが呟きを返した。


「……それで今はどうなっている?」


 ジェシーはギャレットの言葉に目を見開き驚いていたが、話を進めるためにパトリックへ質問を続けた。


「今日、子供の冒険者が一撃で倒しました。

 私たちが着いたときはまだ生きていました。

 そこにすぐ後からやって来た子供があっと言う間に倒して上に進んで行きました」


 ギャレットとジェシーが怪訝な表情を浮かべる。


「おいおい、黒妖犬(ヘルハウンド)を一撃って、それが本当ならB級だぞ」


「今日はキャロラインと一緒に冥界の塔(ハデスタワー)に入って調査していました。

 あちこちに回ったので確かに時間がかかりましたが、十階層に着いたときは黒妖犬(ヘルハウンド)が中央広場にいました。

 黒妖犬(ヘルハウンド)を確認した私たちは、先に雑魚の腐死体犬(ゾンビドッグ)を倒そうと話し合いを始めたのですが、そこにその子供が突入していってそのまま腐死体犬(ゾンビドッグ)の群れと黒妖犬(ヘルハウンド)を一方的に倒していきました」


「そいつはパトリックの知らない奴なのか?」


「ええ、私もキャロラインも知らない子供でした。

 白毛の長毛種で十歳ぐらいです」


「「あ!」」


「そうか。

 白毛の長毛種。十歳ぐらいか。

 全身真っ白な奴だろ」


「知ってるんですか?」


 パトリックの問いに対して、ギャレットがジェシーに対して答えるように目配せした。


「確定じゃないが、今日俺が試験した奴だ」


「試験って、なんの試験ですか?」


「ギルドの登録試験だ」


「えっ? それって今日ライセンスを受けたってことですか?」


「多分な……。

 俺が試験をして、そいつに木剣を折られて合格にした奴だ」


「えっ? ジェシーさんが木剣を折ったんじゃなくて?」


「それは私も聞いたよ。

 ジェシーが自分で自分の木剣を砕いたってね」


「それは、違いますね。

 俺がソイツの剣を砕いてやろうとしたら、逆に砕かれたんです」


「そうなんすか?」


「あぁ、最初に打ち込んで来たときも軽く砕いて子供らしくしばらくは訓練でもしてもらおうと思ったんだけど、砕けなかったんだ。

 なんて子供だと思ってたら、普通に打ち合いになってしまってこっちから打ち込んだら逆に折られてしまった」


「恐ろしい子供っすね」


「そんな子なら黒妖犬(ヘルハウンド)を倒すのも余裕だろうね」


「それにしても、午前中に試験を受けて、午後には階層主(フロアマスター)ですか?

 当然、冥界の塔(ハデスタワー)も初めてですよね?」


「あぁ、そうだろうな。

 武器は何を使っていた?」


「よく覚えてませんが、剣だったと思います」


 三人ともが黙りこくって一人の少年をイメージした。

 残念ながらギャレットだけは話を聞いた情報なので想像だけだが、真っ白な子供がマークされた。


「私はさっきジェシーから凄腕の子供の話を聞いたところだけど、こうやってパトリックからも白毛の子供の話を聞くとこれからすぐに噂になりそうだね」


「そう、ですね。確かに。

 しばらくはギルドでも様子を見た方がいいかも知れません。

 問題を起こすか? 起こされるか?

 どちらにしろ白毛の子供と言ったら目立つでしょう」


「すまないな。

 冥界の塔(ハデスタワー)の噂の調査と、白毛の子供。たまたまだと思うが変な噂になると面倒だ。

 しばらく様子を見て、何かあったらすぐに教えて欲しい」


「「はい」」


 そう言って三人は解散した。




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