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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第七章 帰らずの谷
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第二百四十九話

 

多重圧縮結界(マルチエアシールド)!!」


 二匹の藍旋風鼬(インディグムスティラ)が同時に叫ぶ。


 楕円網籠オーバルメッシュケージの中で藍旋風鼬(インディグムスティラ)を追い詰め、竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーを振り下ろしたとき、奴らが新しい魔法を唱えた。


 それ(・・)は蒼い光で僕を包み込んだ。。


 ガキィィィィーーーン!


 竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーが蒼い光に弾かれる。


 藍旋風鼬(インディグムスティラ)は目を見開いて固まっている。


 ……何が起きた?


「はっ、はははっ。

 馬鹿め。この多重圧縮結界(マルチエアシールド)は空気の壁を何重にも重ねた結界だ。

 お前ごときが破れるようなヤワな魔法じゃない」


 僕を囲っている蒼い光は球形の結界らしい。

 直径五メートルぐらいか。

 全力で振り下ろした竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーを弾くぐらいの力がある。


 竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーの剣先でその蒼い膜のような結界を触ると硬質で、押してみても剣先が刺さる気配は無い。


 目の前の藍旋風鼬(インディグムスティラ)は後退ろうとした姿勢のまま高笑いをしている。


 もう一匹の藍旋風鼬(インディグムスティラ)が駆け寄って来る。


「大丈夫か?」


「問題無い。

 ヤツの間抜けな顔を見ろ。

 さっきまで調子に乗っていたが、これで形勢逆転だ」


 ……形勢逆転って、やっぱりアレが精一杯だったんだな。


「しかし、ヤツを閉じ込めても、我らも籠の中。

 この籠を破らないことには我らもここから出られんぞ」


「問題無い。

 我は一度この籠を破っておる。

 力を集中すれば、時間はかかるがやがて綻びが出る」


 ……ほぅ、そうやって破ったのか。


 実際にどうやって破ったのか観察させてもらおう。


 二匹の藍旋風鼬(インディグムスティラ)は僕のことを放っておいて、楕円網籠オーバルメッシュケージの破り方を話し始める。


 楕円網籠オーバルメッシュケージに近づきその鉄の網を確認して噛みつく。


 楕円網籠オーバルメッシュケージは直径二、三センチメートルの鉄の太い鉄線でできた金網なので、噛みついたところで歯の方がボロボロになるぞ、と見ていた。


「確かにこの籠は硬いが、力を歯に集中すればやがて噛み切ることができる。

 それを繰り返せば少し時間はかかるが、問題無い」


 ……結局、地道に頑張ったんだな。


 二匹が一ヶ所で楕円網籠オーバルメッシュケージを噛み噛みし始めたので、僕もこの多重圧縮結界(マルチエアシールド)とやらを破るために竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーを握り締める。


 二刀流は力が分散するので一本は魔法鞄(マジックバック)に仕舞って、一本だけに集中する。


「ふんっ!」


 ガンッ!


 多重圧縮結界(マルチエアシールド)はビクともしない。


 空気の壁って言ってだけど、何でできてるんだ?


 剣を下ろして掌で触るとひんやりとした鉄のような肌触り。

 ツルツルに磨き込んだ鉄の表面のようだ。

 それでいて向こう側が透けて見える。

 ガラスのようでもあるけど、先ほど剣を叩きつけたときの感触は石のようだった。


 空気の膜がどういう物か分からないけど、圧縮して何層も重ねるとこんな感じかも知れない。

 漠然とだけどイメージできる。


 空気の層が破壊されないように積み重なっている。


 ……防弾ガラスのようなものか。


 銃弾のようにガンガン攻め立てても、複層の膜が衝撃を吸収するかのように抑え込む。


 となると、それを超える衝撃か、斬れ味か。


 すぅ。


 大きく息を吸って竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーに魔力を流す。


 竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーの鱗がザワザワと震えて紅く発光し始めた。


 更に力を込めて強引に魔力を押し込む。


 ブワッと竜鱗が波打ち、白熱すると、剣身から鱗粉のような紅い光の粒が舞う。


「これでどうだっ!」


 両手で振りかぶり、竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダー多重圧縮結界(マルチエアシールド)で袈裟斬りにする。


 ガンッ!


 くっ!


 これでもダメか。


 弾かれた竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーをゆっくりと持ち上げ、切先を多重圧縮結界(マルチエアシールド)に突き立てる。


 切先は一点だけが多重圧縮結界(マルチエアシールド)に接した状態で、その先に刺さることは無い。


 まだ足りない。


 もっとだ。


 両手を拳を絞り込み、脇を締める。


 中段、正眼に構え、短く吸って長く吐く。

 呼吸を整え、じっくりと魔力を練り込む。


 切先を多重圧縮結界(マルチエアシールド)に押しつけながら竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーを白熱させる。


 ザワッ。


 竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーが震えながら暴れる。


 震えさえも抑え込むように固く剣を握り締める。


 白熱した竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーの震えが徐々に小さくなった。


 紅く発光していた剣身が白く輝いている。


「これで、どうだ!」


 グッと力を入れて竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダー多重圧縮結界(マルチエアシールド)に押し込む。


 ……しかし、竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーは一ミリも動かない。


 まだ足りない。


 もっとだ。


 力をもっと集めろ。


 剣身を眩く輝かせてる魔力を更に集中させる。


 ただ一点。

 切先にその力を集める。


 僕は竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーを自分の手の先のようにイメージして、全身の力をただ切先に集めていくと、徐々に剣身の輝きが切先に移動していく。


 少し刃渡り部分の明るさが落ちたようになり、その分切先の輝きが増す。


 竜鱗がビシッと切先に向けて向きを揃える。


 ザワザワとしてたときは魔力を吹き出して、それを攻撃力に変えている感じだったが、今はスムーズに魔力を流し鱗の一枚一枚に力を溜めている。


 眩しく輝いていた切先もゆっくりと光が収まり、紅く透き通った剣身が現れてきた。


 紅玉(ルビー)


 いや、紅玉ルビーのような透明感と輝きを持っているためにそう見えるだけだ。


 ぐっと腰を入れて竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダー多重圧縮結界(マルチエアシールド)に突き刺すと、スッと刺さった。


 パァンッ!!


 竜鱗両手剣ドラゴニックツヴァイハンダーが刺さると多重圧縮結界(マルチエアシールド)が割れて衝撃波が走った。


 中にいた僕は関係無かったけど、多重圧縮結界(マルチエアシールド)の外にいた二匹の藍旋風鼬(インディグムスティラ)は巻き起こった突風に吹き飛ばされて転げ回る。


「僕の方が早かったようだ」


 何が起こったか分かっていない藍旋風鼬(インディグムスティラ)たちに向かって悠然と告げた。




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