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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第七章 帰らずの谷
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第二百四十五話

 

 妖精人(エルフ)が彼らの都市ペルハストの研究所で竜人(ドラゴニュート)を相手にして魔法実験を繰り返していた。

 そしてそれが引き金になって集団暴走(スタンピード)が起きた。


 虹真珠亀アルガトゥムデストゥードの昔話は余りにも古い話だけど、冥界の塔(ハデスタワー)迷宮主(ダンジョンマスター)太陽の方尖碑(ソル・オベリスク)のアマテラスは双子迷宮の冥界の塔(ハデスタワー)妖精人(エルフ)の都市ペルハストだと言っていた。


 火竜(ファイアドラゴン)を倒したとき妖精人(エルフ)のエルクスたちは研究所のことを引き合いに出して入念に火竜(ファイアドラゴン)の力を抑え込んでいた。


妖精人(エルフ)たちが竜人(ドラゴニュート)に対して魔法実験したことで集団暴走(スタンピード)が起きたのでしょうか?」


「それは分からん。

 魔法が暴走したのかも知れんし、竜人(ドラゴニュート)が暴れたのかも知れん。

 偶然、地脈が乱れたのかも知れんしの」


集団暴走(スタンピード)が起きたのはいつのことでしょうか?」


「千年か二千年か、昔はあれやこれやと情報が入って来て時系列を理解していたが、今では何の変化も無いからな。時間の感覚も無くなってしまった」


「では、当時の地理は覚えておられませんか?」


「地理か……。

 黒霧山(モンサルトゥス)を挟んで南西に妖精人(エルフ)の都市ペルハスト、北東に大地人(ドワーフ)の街ガイアス。

 ずっと北に人間(ヒューマン)の国があった」


「この山の南西にペルハスト。

 山を越えて反対側に大地人(ドワーフ)の街ガイアスですか?」


「そうじゃ。

 だがそれも、今では山を越えて来る大地人(ドワーフ)はいなくなった」


「この山を越えて大地人(ドワーフ)が来るのですか?」


「昔はもっと森が(まば)らだったからな。

 もっと平和な森だったんじゃ。たまに素材を求めて冒険者が立ち寄る程度には開けておった」


猫人(ワーキャット)犬人(ワードッグ)はどうしていたのでしょうか?」


「儂の所へやって来る獣人(ホモベスティア)はほとんどおらんかった。

 人間(ヒューマン)の国にいたと聞いた程度じゃな。

 獣人(ホモベスティア)の街など聞いたことも無い。

 人間(ヒューマン)が絶滅した際に各地に逃げ延び、集落を作って生き延びたのではないか?」


「えっ?

 猫人(ワーキャット)の国や犬人(ワードッグ)の国は?」


「そんなものがあるのか?

 儂は聞いたことが無いが……」


「時代が違うのか、或いは地理的に関わり合いが無かったか……」


 虹真珠亀アルガトゥムデストゥードの話は先ほどまではしっかりとイメージができたけど、猫人(ワーキャット)の国バスティタや犬人(ワードッグ)の国アヌビシェを知らないと言われると急に胡散臭くなってしまった。


 虹真珠亀アルガトゥムデストゥードに話を聞けたのは良いけど、いつの時代の話か分からないぐらい古い話なので、神話やお伽話を聞いているようだ。


妖精人(エルフ)についてもう少し詳しく教えて頂けますか?

 妖精人(エルフ)を探しているのですが、情報が無くて……」


「そう言えば妖精人(エルフ)を探しに、と言っていたな。

 何で妖精人(エルフ)を探す?」


「何で?」


 妖精人(エルフ)を探すのは、妖精人(エルフ)が何かを企んでいる可能性があるからだ。でも、何と言ってそれを伝える?


 冥界の塔(ハデスタワー)のことを話すか、それとも火竜(ファイアドラゴン)のことを話すか?


「ペルハストのあった都市跡にできた迷宮(ダンジョン)で、猫人(ワーキャット)妖精人(エルフ)に襲われたと言う噂があったので……」


猫人(ワーキャット)妖精人(エルフ)に襲われた、か。

 妖精人(エルフ)のやりそうことだな。

 それにしても生き残りがいたか。

 儂はてっきり絶滅したと思っておった」


「それはどうしてですか?」


妖精人(エルフ)は自分たちの住む都市を集団暴走(スタンピード)に襲われて、散り散りになった。

 元々他の種族と仲良くできる性質じゃないからな。

 戦争中じゃし妖精人(エルフ)に逃げ場は無かった」


「だとすると、妖精人(エルフ)は極僅かが隠れて生き延びるのが精一杯と言うことでしょうか?」


「じゃろうな。

 大勢の妖精人(エルフ)が結束して生き延びるのは難しかったはずじゃ。

 その上、妖精人(エルフ)は長寿じゃが、その分子供が少ない。

 亜人戦争(デミオベルム)を生き延びた妖精人(エルフ)が新しく集落を作ったとしても、一気に人口が増えると言うことはあるまい」


「では何故今になって姿を見せたのでしょうか?」


「新しい世代が台頭してきたか?

 勝算ができたか?」


「隠れ住むのが嫌になった?」


妖精人(エルフ)は好戦的な種族では無い。

 ただ、自尊心(プライド)が異常に高い。

 本来ならば隠れ里で独自の文化を育むじゃろうが、年若い跳ね返り者が里を出て暴れ出しても不思議は無いな」


「そうですか……」


「そうは言っても保守的な妖精人(エルフ)じゃから、エルフの都市ペルハストに現れたんじゃろうな」


「なるほど」


 冥界の塔(ハデスタワー)妖精人(エルフ)が現れただけならその考え方もありだろう。

 でも火竜(ファイアドラゴン)の件があるから個人ではなく組織的な感じがする。


妖精人(エルフ)を匿ってくれる。

 或いは支援(サポート)してくる存在はないのですか?」


妖精人(エルフ)支援(サポート)か?

 馬鹿なことを言うな。

 選民思想の塊のような妖精人(エルフ)じゃぞ。

 こちらが助けようと思っても向こうが断るわ。

 奴らは自分たちが一番だと思っておるから、他の種族に頼るなんぞあり得んわ」


 虹真珠亀アルガトゥムデストゥードはハッキリと断言して、支援者(サポーター)の存在を否定した。


「それでは何か強力な魔法で他者を隷属させたり支配することはできるのでしょうか?」


「うーむ。

 それも難しいだろう。

 確かに妖精人(エルフ)は多種族を支配しようとしておった。研究所で行われていた魔法実験も強力な竜人(ドラゴニュート)を自在に操ろうとしておったようだしな」


「それでは?!」


「それが失敗して集団暴走(スタンピード)が起きたんじゃろう?

 そんな魔法を使って生き延びたとは考えにくい」


「そうですか……」


 妖精人(エルフ)が逃げそうな国や街があればと思ったけど、そんな簡単なことでは無いようだ。


 しかし森に逃げ込んだ妖精人(エルフ)亜人戦争(デミオベルム)を生き延び、今、レドリオンを、バスティタの国を狙って行動を始めている。



 何かきっかけがあるはずだ。


竜人(ドラゴニュート)を相手にして魔法実験を行ったと言われましたが、竜人(ドラゴニュート)はどうなったのでしょうか?」




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