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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第六章 北進公路
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第二百九話

 

「それで、何が聞きたいのさ?」


 銀の蜥蜴アルゲントゥ・リザードが宙返りしながら僕に訊く。


「話しが早いな」


「少し強くなって余所の迷宮(ダンジョン)に行ったら、少しは気になることが出てくるよ」


「そうだな。

 知らないことだらけで、もっと聞いとくんだったと思ったよ」


「でしょう。

 それで、何を知りたいんだい?」


 銀の蜥蜴アルゲントゥ・リザードは自分の方が迷宮(ダンジョン)について知っているという優越感で上から目線だ。


迷宮核(ダンジョンコア)って何だ?」


迷宮核(ダンジョンコア)

 君も見ただろう。迷宮(ダンジョン)を存在させるための中心。エネルギーの集合体だよ」


「そのエネルギーは何処から来る?」


「エネルギーが何処からって、難しいことを聞くね。

 大地の奥底を走る地脈からだよ」


「地脈?」


「そう地脈。

 大地のエネルギーが流れる道さ。

 エネルギーが溢れて、間欠泉のように噴き出してできるのが迷宮(ダンジョン)って訳さ」


「地脈の強い場所に迷宮(ダンジョン)ができる?」


「いいね。その通りだよ。

 そして地脈からエネルギーを受けて迷宮(ダンジョン)が育つ」


迷宮(ダンジョン)が育つ?」


「そうだよ。

 迷宮(ダンジョン)は地脈からエネルギーを吸い上げて育つんだ。

 その(キー)になるのが迷宮核(ダンジョンコア)


「それじゃあ、迷宮核(ダンジョンコア)があれば迷宮(ダンジョン)が大きくなって、迷宮核(ダンジョンコア)が無ければ迷宮(ダンジョン)は育たない?」


「半分正解で半分ハズレ。

 普通に迷宮核(ダンジョンコア)迷宮(ダンジョン)にあれば、迷宮核(ダンジョンコア)を中心にして迷宮(ダンジョン)が育つ。より深く大きくなっていく。

 そして迷宮核(ダンジョンコア)がない場合、偽者の(コア)があればそれを媒介にして育つし、(コア)が無ければ新しい(コア)を作り出す」


「はぁ?!」


 思わず大きな声を出してしまった。


 本物だろうが偽者だろうが(コア)があれば(コア)を使うし、無ければ(コア)を作るんだったら、本物の迷宮核(ダンジョンコア)は何のためにある?


「それだと迷宮核(ダンジョンコア)があっても無くても変わんねぇじゃねぇか?」


迷宮(ダンジョン)は地脈から溢れたエネルギーの噴き出し口だから、(コア)があろうが無かろうが、エネルギーは噴き出すよ。

 ただ、最初(オリジナル)(コア)はエネルギーが莫大に詰まってる。それこそ迷宮(ダンジョン)を作り上げるほどに。

 でも偽物(ダミー)にはそれほどのエネルギーは無い。下手すると迷宮(ダンジョン)を維持できなくて潰れてしまうこともある。

 そして(コア)が無い場合、新しい(コア)が何処にできるか分からない。

 今の迷宮(ダンジョン)と同じ場所かも知れないし、少し離れた場所かも知れない。全く違う場所かも知れない。

 違う場所にできるときは当然、エネルギーが溢れて集団暴走(スタンピード)だ」


「おいおい、本当か?」


「嘘ついて、何かメリットがあるかい?」


「もしオレが何処かの迷宮核(ダンジョンコア)を潰したらどうなる?」


「あはは、エネルギーの塊を壊すにはそれに匹敵するエネルギーが要るよ」


「それだけの力で潰したら?」


「地脈からエネルギーが溢れ出る。

 残ったエネルギーが他のところへ流れることもあれば、その場で爆発することもある」


「……」


 碧玉の森(ジャスパーウッズ)で新しい迷宮(ダンジョン)を見つけたとき、迷宮核(ダンジョンコア)を潰した後どうなった?


 確か迷宮主(ダンジョンマスター)冥王天使(アズライール)を倒した後、迷宮核(ダンジョンコア)を力任せに割った。


 そしたら、黒い何かが溢れてきた。


 必死で逃げて逃げて、後から見に行ったら何も無くなっていた。


 ……どういうことだ?


「お〜い。

 聞くだけ聞いて(だんま)りかい?」


「いや、悪い。

 ちょっと整理してた」


「で、どういうことだい?」


「二ヶ月ほど前に、新しい迷宮(ダンジョン)を見つけた」


「本当に君は憑いてるね」


「あぁ、しかもできたばかりの迷宮(ダンジョン)だった」


「できたばかり?」


集団暴走(スタンピード)で暴れる魔物(モンスター)を退治してて見つけたんだ」


「なるほどね」


「それで、迷宮主(ダンジョンマスター)を倒し、迷宮核(ダンジョンコア)を破壊した」


「それ、本当かい?」


「本当だ。

 その後、恐ろしい何かが溢れたけど、逃げ切ってから様子を見に戻ると、迷宮(ダンジョン)の跡も無く普通の森に戻ってた」


「……」

「……」


 簡単に顛末を話すと銀の蜥蜴アルゲントゥ・リザードは黙り込んでしまった。


 僕も同じようにして何かを考える。


 何をどう考えていいのか?


 筋道の無い思考がグルグルと回る。


「まず、迷宮(ダンジョン)ができるほど地脈のエネルギーが溢れたのは何故?」


「へっ?

 それは……、分からない」


「君は知らないかも知れないけど、迷宮(ダンジョン)ができるほどのエネルギーはそんなに簡単に貯まらない。

 迷宮(ダンジョン)はそんなにポコポコとできたりしないんだ。

 この迷宮(ダンジョン)ができて半年や一年ですぐに新しい迷宮(ダンジョン)ができるなんて、恐ろしく奇跡的なことだ」


「そうなのか?」


「それで、できたばかりの迷宮(ダンジョンコア)を潰したら、そのエネルギーは何処へ行く?

 また新しい迷宮(ダンジョン)が何処かにできたのか?」


「それも分からない」


「それなら、話しはここまでさ。

 理解できない奇妙な話しで終わり」


 銀の蜥蜴アルゲントゥ・リザードはアッサリと話しを打ち切ってしまった。


 確かに分からないことだらけで考えてもムダかも知れないけど、無性に気になる。


「何でここに迷宮(ダンジョン)ができたんだ?」


「さぁ? ここが地脈の流れの吹き溜まりだったんじゃない」


「こんな辺境が?」


「辺境だって、森の奥だって地脈は流れてるよ。

 中央に流れて集まる訳じゃない」


「そうなんだ」


「当然でしょ。

 むしろ、濃い森の中こそ地脈が強いと思わない?」


「そう言われれば、……そうかも知れない」


「地脈の強いところは大地の恵みも多いんだよ。

 それは森だったり、湖だったり、鉱山なんかになって現れるときもある」


 ついレドリオンみたいなところが地脈が強くて人が集まると考えてたけど、そうじゃないのか。


 そうだとすると。


迷宮(ダンジョン)によって縦階層主フロアマスター神授工芸品(アーティファクト)にある種の傾向があるのはどうしてだ?」


「地脈にも流れがあるから、溢れたエネルギーの影響によって迷宮(ダンジョン)は一定のルールに近い影響を受けるよ。

 それが魔物(モンスター)の系統だったり、神授工芸品(アーティファクト)の属性みたいなものにあらわれるのさ」


 やっぱり。


 地脈には五行みたいな特性があるってことだ。


「精霊って何だ?」


「さぁ? 何だろうね?」


「それじゃ精霊使い(エレメンタラー)は?」


「珍しい言葉を知ってるね」


「ちょっと小耳に挟んだんだ」


「ふ〜ん。

 今、教えられるのはこの辺までかな。

 ちなみに、ここから先へは進まない方がいいよ」


「あ?

 今回は帰るけど、どうして?」


「この迷宮(ダンジョン)も育ってるからね」


「は?!

 おい、そんなすぐにに育つなんて聞いてねぇぞ」


「今、言ったからね。

 お姫様たちを連れて気をつけて帰ってね」


「おいっ!」


 銀の蜥蜴アルゲントゥ・リザードは宙を飛んで行ってしまった。




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