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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第五章 黒霧山
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第百七十話

 

 金の麦(ゴールデンウィート)館に見張りはいなかった。


 会食後に三人で豪華な馬車に乗って帰ったけど、尾行や見張りはいなくてレドリオン公爵に脅されただけかと思うぐらい普通だった。


 そのうち色々と警戒する必要が出てくるかも知れないけど、今は大丈夫なようだ。


 今日は碧落の微風(ブルーブリーズ)のメンバーに竜の洞窟(ドラゴンケイブ)を案内してもらう。


 レドリオンに着いた初日に彼らが竜の洞窟(ドラゴンケイブ)に入るようになって、既に十五階層まで入って稼ぎが安定してきたと言っていたから、僕が浅い階層の案内をお願いした。


 僕たちは金の麦(ゴールデンウィート)館で食事を済ませると、碧落の微風(ブルーブリーズ)の四人との待ち合わせ場所にした冒険者ギルドに向かって歩き出す。


 僕は他のパーティーの戦い方を知らない。

 昨日、ネグロスとクロムウェルの戦い方を見て自分との違いを感じたので、碧落の微風(ブルーブリーズ)の戦い方を見るのを楽しみにしてる。


 食事会ではミユに押し切られるような感じで一緒に迷宮(ダンジョン)に行くことになったけど、こんな機会はなかなか無い。

 初めての迷宮(ダンジョン)だし、合同攻略だし、少し興奮してる。


「なぁシルバー、竜の洞窟(ドラゴンケイブ)でも二十階層の階層主(フロアマスター)を倒したらBランクになれるかな?」


「どうだろうね?」


「確かにここでBランクになったら、少しは自信が持てそうだな」


「ユンヴィアもそう思うだろ。

 なんかこの前の勲章とかランクは飾り物っぽくて嫌なんだよな」


「あぁ、私もだ。何もしてないのに勲章だ(シルバー)だ、と言われても実感が無い……」


「そうか……。

 それなら前半は碧落の微風(ブルーブリーズ)に先行してもらって、途中からは二人で攻略する?」


「う〜ん。どうだろ?

 様子を見てそうしたいけど、どうせならシルバーのソロの戦い方も見てみたいし……」


「僕の戦い方?

 この前の碧玉の森(ジャスパーウッズ)で見ただろ」


「あれは屋外だった。

 迷宮(ダンジョン)でのソロの戦い方を見てみたい」


「あぁ、私も同感だ。

 昨日、バレットと二人で迷宮(ダンジョン)を攻略したけど、ソロの戦い方を見てみたい」


「そうなんだ……。

 それなら碧落の微風(ブルーブリーズ)に相談してみようか?」


「頼む。

 ソロで二十階層とか、パーティーなら二十階層よりも先を目指したいからな」


 何だか変なことになってきた。

 他の人の戦い方を見るのは大事だけど、僕のソロの戦い方かぁ。


 昨日気づいた魔法も使って戦う練習でもしようかな。




 考えごとをしながら冒険者ギルドに到着すると、すぐにミユが駆け寄って来る。


「おはよ、シルバー君。

 バレット君とユンヴィア君もおはよう」


「おはようございます」

「おはよう」

「お待たせしましたか?」


 僕とネグロスが朝の挨拶を返すと、クロムウェルが様子を聞いた。


「いや、俺たちもさっき着いたばかりだよ」


 ボロンゴがデクサントとミユを連れてやって来る。


「今日は宜しく頼みます」


「俺たちよりも強いヤツを案内するのは変な感じだけど、せっかくだから俺たちの戦い方を見てアドバイスとかしてくれると助かる」


「アドバイスになるか分からないですけど、気づいたことがあれば伝えます。

 実は僕たちの戦い方も見て欲しいんです。

 ボロンゴさんたちは他のパーティーの戦い方を見たこともあるでしょう?

 僕たちの戦い方とどこが違うか教えて欲しいです」


「俺たちにできるかな?」


「気づいたところだけでいいです。

 魔物(モンスター)によっては常道(セオリー)があったり、僕たちのパーティーに癖があったりすると思って」


「ふぅん。ま、できるだけ頑張ってみるよ」


「すみませんが、お願いします」


 僕たちは受付嬢のリナに挨拶すると竜の洞窟(ドラゴンケイブ)に向かって出発した。






 竜の洞窟(ドラゴンケイブ)冥界の塔(ハデスタワー)の更に向こうにある。


 レドリオンの街を出て北西に向かうとすぐに見えて来るのが泥でできた巨大な塔、冥界の塔(ハデスタワー)

 この塔を過ぎて更に歩くと冥界の塔(ハデスタワー)にあったのと同じような高さ三メートルの岩壁が張り巡らされている。


 この中に竜の洞窟(ドラゴンケイブ)がある。


 妖精人(エルフ)の都市ペルハストを集団暴走(スタンピード)で滅した迷宮(ダンジョン)

 双子迷宮の兄がこの竜の洞窟(ドラゴンケイブ)だ。


「おはようございます。

 碧落の微風(ブルーブリーズ)のボロンゴです。

 後ろにいるのは黒瑪瑙(オニキス)のシルバーとバレットとユンヴィア。

 受付をお願いします」


 おおっ! 迷宮(ダンジョン)に入るときはこんな風に挨拶するのか。

 何気(なにげ)にボロンゴがちゃんとリーダーしてて感動する。


黒瑪瑙(オニキス)

 って、Bランクのシルバーか?」


 衛士の一人が僕を見て大きな声を出した。


「はい。シルバーです」


「すまないが、全員ライセンスカードを確認させてくれ」


「えぇっ? いつもはそんなのしてないのに……」


 ミユがライセンスカードを取り出しながら不満気に呟いたら、衛士が申し訳なさそうに説明する。


「シルバーは特別なんだよ。

 誰と一緒だったか、いつ入ったかちゃんと確認して記録しとかないとマズいんだよ」


「えぇ〜」


「って、バレットとユンヴィアもCランクじゃねぇか!

 まだ子供なのに、なんてパーティーだ」


「「「……」」」


 何て言っていいか分からず、三人揃って無言になってしまった。


「何でボロンゴがシルバーと一緒なんだよ?」


 改めて衛士がボロンゴに聞いている。


冥界の塔(ハデスタワー)で助けてもらったことがあるんだ」


 それだけ言って衛士に手を振って歩いて行く。

 マユたちや僕たちも続けて衛士たちの前を通って中に入った。


「シルバー君はあちこちで有名人だね」


 ミユがクスリと笑いながら隣を歩く。


「まぁ、領軍と冒険者ギルドの関係するところでは有名みたいですね」


「またまた、謙遜しちゃって」


「お〜い、シルバー。結局どうする?」


 ミユの軽口を遮ってボロンゴが迷宮(ダンジョン)の進み方を聞いてきたので、こちらの案を伝えてみる。


「そうですね。まずは一階層目を碧落の微風(ブルーブリーズ)の皆さんに先行してもらって、二階層をバレットとユンヴィア、三階層を僕がソロで先行してみてもいいですか?」


「おおっ! 結構やる気なんだな。

 初日だから様子見かと思ってたけどシルバーに合わせるよ。

 何かあっても浅い階層なら大丈夫だろうしな」


「ええ、それに実際に戦ってみないと魔物(モンスター)の強さが分からないし、皆さんの戦い方の理由が掴めないと思うので……」


「そうか?

 三階層までは巨大蛙(ヒュージフロッグ)しか出ないから、そんなに考えなくても大丈夫だぜ」


「あ、そうなんですね。

 まぁ、とりあえずやってみましょう」


「分かったよ。

 じゃあ、俺たちがいつもと同じように進むからついて来てくれ」


「はい」


 僕はタングステン合金の剣とコバルト合金の剣、ネグロスは双牙刀(ツインデント)、クロムウェルは十字戟(クロスデント)を構えて碧落の微風(ブルーブリーズ)について行く。


 黄色く燻んだ光に照らされた竜の洞窟(ドラゴンケイブ)の内部は普通の洞窟のようなっている。しかし足元は泥のように濁っている。


 蛙が出るのは沼か……。

 泥の洞窟が続くようだ。


 冥界の塔(ハデスタワー)では腐死体(ゾンビ)骸骨(スケルトン)ばっかりだったから、素材回収してなかったけど、巨大蛙(ヒュージフロッグ)は売れると聞いた気がする。


 一応、倒した魔物(モンスター)は回収しながら進もう。




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