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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第五章 黒霧山
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第百六十六話

 

 流石はライセンス取得試験でいきなりCランクになっただけのことはある。

 今のところ全く危なげが無い。


 骸骨(スケルトン)腐死体熊(ゾンビベア)も単体だとあっさり倒すし、複数いるときは距離を取って動きを確認してから囲まれないようにして戦っている。

 二人で連携の練習なんてしたこと無いはずなのに、周りを見ながら戦っている。


 双牙刀(ツインデント)十字戟(クロスデント)の扱いも上手い。

 剣を振るたびに発光して蒼い筋が浮かんでいる。

 魔力強化によってかなりの斬れ味になってるはずだ。


 十階層で腐死体犬(ゾンビドッグ)に囲まれたときも上手く回避しながら確実に数を減らしてた。

 黒妖犬(ヘルハウンド)がいても問題無く倒してただろう。


 ……でも、次はどうだ?


 十四階層から十五階層への階段を上がりながら少しワクワクしながらついて行く。


「次は十五階層か?」


「そうだな。大通りのある階層(フロア)だ」


「危なそうだな。

 前にシルバーが五階層ごとに中ボスみたいなヤツがいる場合があるって言ってなかったか?」


「言ってた気がするな」


冥界の塔(ハデスタワー)のことじゃないか?」


「……可能性は高いと思う」


「じゃあ、そのつもりで気を抜くなよ」


「当たり前だ。それでなくても一階層ごとに徐々に強くなってるし、ドキドキしながら歩いてるよ」


 僕からするといい感じで集中できてると思う。

 できれば、もう少しバンバン魔法を使って欲しいかな。

 でもこれは自分自身に対しても言えることだ。


 危機的な状況になるまでは魔法を控えてる。剣で対応できるうちは魔法を使ってない。

 そうじゃ無くて、使える場面ではドンドン魔法を使っていくのが上手い戦い方のような気がする。

 ネグロスとクロムウェルの二人が魔法で何をできるのか知っているので、もっと使えば良いと感じる。


 階段を上り切るとそこは小部屋。

 大通りまでは少し離れている。


 部屋の中に魔物(モンスター)がいないことを確認すると、すぐに二人が出入口の向こう、通路の様子を確認するためにそっと部屋から顔を出す。


「右はいない」


「左もいない」


「右から大通りに行くか」


「そうだな」


 素早く言葉を交わすと、足音を立てずに通路に出て行った。


 途中、骸骨(スケルトン)を三体ほど倒して進むとやっと大通りが見えて来る。


 小部屋から出るときと同じようにして二人が通路から顔を出して大通りの様子を確認する。


「右、十字路付近に骸骨(スケルトン)腐死体熊(ゾンビベア)が二十体」


「左は骸骨(スケルトン)のみ十体」


「行けるか?」


「いや、何かあるかも知れない。

 二人で左を殲滅しよう。

 それぐらいならそれほど時間もかからないし、何も無ければそのまま中央に行けばいい」


「そうだな。

 ……俺は左の右側へ行く」


「分かった。

 私は左の左へ……、三、二、一」


「「ゴーッ!」」


 二人は通路から飛び出すと左に向かった。

 左の骸骨(スケルトン)を殲滅して挟み撃ちを回避してから、右の一団を倒す作戦だ。


 確かに右に行って骸骨(スケルトン)腐死体熊(ゾンビベア)の二十体との戦闘中に骸骨(スケルトン)が十体が加勢するとキツい。


 各個撃破が妥当だろう。


 ……僕一人だったら腐死体熊(ゾンビベア)からかな。各個撃破でも主力から倒して行く。

 結構無茶な戦い方だ。


空気瞬発(エアダッシュ)


 ネグロスが一団の右側の骸骨(スケルトン)に突っ込んで切り崩して行く。陣形が乱れたところにクロムウェルが十字戟(クロスデント)を振り回して行くと、一気に半数ほどの骸骨(スケルトン)の体がバラバラに砕けた。


 早いなぁ。


 残りの半数もネグロスとクロムウェルに挟まれ、すぐに倒れていく。

 二人して骸骨(スケルトン)が動かなくなったことを確認して、交差点側の一団に向き直ると剣を構え直す。


「よしっ! これで挟み撃ちは無い」


「新手が来ないか注意しろよ」


 おぉ、クロムウェルはいい勘してる。


「もう少し引きつけてから、同じように飛び込むから援護頼む」


「あぁ、腐死体熊(ゾンビベア)よりも骸骨(スケルトン)を優先して数を減らすぞ」


「了解。

 空気瞬発(エアダッシュ)


 ネグロスが交差点側の二十体の一団に飛び込むと、さっきと同じように骸骨(スケルトン)の陣形が崩れていく。


 続いてクロムウェルが斬り込もうとしたときに影が迫った。


「くっ!」


 咄嗟に横に飛んで爪を回避しながら十字戟(クロスデント)を突き出したクロムウェルだけど、そのときにはすでに影はいない。


「何かいるっ!」


「どこだっ!」


「消えたっ!」


「がっ! こっちはまだ時間がかかる」


「あぁ、私がやるっ!」


 既に乱戦に突入してるネグロスと見えない影を探すクロムウェル。

 見事に分断された。


 でも、クロムウェルの反応は良かった。

 次は見つけられるか?


 キン、ガシャ。

 ガン、キン、キキン。


 ネグロスが骸骨(スケルトン)の群れと斬り結ぶ音が響く中、クロムウェルが四方八方を警戒してる。


 見つけられるか?

 気付けるか?


「ぐあっ!」


 クロムウェルが影隼(シャドウファルコン)をかわし損ねて大通りを転げ回った。


 影隼(シャドウファルコン)に気づいて十字戟(クロスデント)を振ったので、爪の攻撃は受けてないけど翼に当たって跳ね飛ばされたらしい。


「クロムウェル!」


「大丈夫だ!」


 ネグロスが駆け寄ろうとしたけどクロムウェルが手を突き出して、その動きを止める。


 膝をつき十字戟(クロスデント)を杖代わりについた状態で上空(うえ)を見る。


 ……気づいたようだ。


上空(うえ)だ。

 鳥。もの凄く速い」


 今は飛び去って視界にいない。


 クロムウェルはどうする?


 大通りに出ずに通路の影から見てると影隼(シャドウファルコン)の位置が分からない。


 クロムウェルの様子だけを注意して見ていると、反対側ん見てるときに動きが止まった。


 ゆっくりと腰を落として突き出すようにして十字戟(クロスデント)を構える。


 来るか?


 ドンッ!


 影隼(シャドウファルコン)の特攻に合わせてクロムウェルが突きを放つ。


 ズシャ〜!


 十字戟(クロスデント)影隼(シャドウファルコン)が突き刺さった状態でクロムウェルが押されて来た。

 同じ姿勢のまま三メートルは押されただろう。


 両足を前後に大きく開いて十字戟(クロスデント)を突き出したクロムウェルが、その槍の先の影隼(シャドウファルコン)を睨んでいる。


 体長二メートルの真っ黒な鳥の胸の中心に十字戟(クロスデント)が突き刺さり、絶命してる。


 クロムウェルは影隼(シャドウファルコン)の死体から十字戟(クロスデント)を抜くと、ネグロスの加勢に向かう。

 疎らになった骸骨(スケルトン)と三頭の腐死体熊(ゾンビベア)ならすぐに殲滅するだろう。


 僕はそっと大通りに出ると左右を確認して影隼(シャドウファルコン)の死体に近づく。

 ジッと見ていると死体は迷宮(ダンジョン)に沈み込んでいって何も無くなった。


 それから殲滅した左の一団を確認するけど神授工芸品(アーティファクト)は落ちていない。


 ここまで魔晶石交換筒(エーテルカートリッジ)しか拾ってないので、そろそろ何か出ても良いと思うけど、なかなか難しいもんだ。


 確認を済ませると二人のいる十字交差点に向かう。


「お疲れさん。上手く対応できたね」


「あぁ、焦ったけど倒せて良かった」


「俺もかなり頑張ったけど、今回はクロムウェルが良かったな」


 僕がクロムウェルとハイタッチすると、ネグロスもハイタッチして激闘を讃えた。


「あの鳥の魔物(モンスター)は何だったんだ?」


影隼(シャドウファルコン)

 新人だと対応できずにやられることも多いらしい」


「確かにあのスピードだと難しいな」


「うん。

 知ってても対応できるかどうかは別なんだ」


「まぁ、これぐらいは対応できないと上に進めないってことか……、あ、アレは?」


 ネグロスが何か見つけて声を上げる。


 あった。


 (ボード)が二枚。


「やっと見つけた」

「聞いてはいたけど神授工芸品(アーティファクト)ってなかなか出ないんだな」


「狙って手に入れるのは難しいね」


 ネグロスとクロムウェルが(ボード)を拾って持って来る。

 二人とも自分の拾った(ボード)をじっくりと見てどんな板か見分けようとしてるけど、分からないようだ。


 初見で見分けられるものじゃないのに。


 (キー)となる十五階層も問題無くクリアした。

 二十階層の階層主(フロアマスター)まで一気に行けるかな。




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