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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第四章 水神宮
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第百四十八話

 

 黒い水の入ったような迷宮核(ダンジョンコア)収納庫(ストレージ)に保管して、三十階層で手に入れた緑色の魔晶石(エーテル)偽装品(ダミー)として置いて来た。


 元は迷宮核(ダンジョンコア)を持ち出すつもりはなかったが、話の流れで迷宮核(ダンジョンコア)を破壊されるリスクを減らすためにオレが持ち歩くことになったためだ。


 つまりはこれまでの迷宮(ダンジョン)と同じようなストーリー。

 迷宮核(ダンジョンコア)をすり換えておけば、いざというときにも迷宮(ダンジョン)を破壊されることは無い。

 オレが殺されたら幾つもの迷宮(ダンジョン)が破壊されることになるが、今のところオレの収納庫(ストレージ)内が一番安全ということだ。


 そんな訳で、迷宮核(ダンジョンコア)を仕舞い、三十一階層の後片付けをした。


 蛟龍(レインドラゴン)のアートルがボロボロで、三十一階層の泉もほぼ焼き尽くした上に迷宮核(ダンジョンコア)を奪って行くのは流石に悪いと思って、綺麗に原状回復をした。


 泉を焼くのに使った銀鋼蜘蛛網(シルバーウェブ)を今度は水を出すのに使ってみた。

 水分を凝結させて水を作り出すのに、あちこちに張り巡らせた銀糸を媒体にしたら結構簡単に水が満ちた。


 蛟龍(レインドラゴン)と契約を交わしたので、水属性が強化されたようだ。


 影水(ウンブラアクア)のノワルーナと連携できるようになれば、もっと早くたくさん水を作り出せるような気がする。


 今度こっそりと練習しておこう。

 クロムウェルと同じようなことができるかも知れない。






 そうやって綺麗に片付けた後、蛟龍(レインドラゴン)には強い冒険者が現れたら連絡するように伝えて、迷宮(ダンジョン)を引き返している。


 迷宮(ダンジョン)に潜るのはいいが、この帰り道は何とかならないかと不満になる。


 ワクワク感やスリルが無いのでやたらと長く感じる道だ。


 ただ、蛟龍(レインドラゴン)が冒険者は三十一階層まで来てないと言っていたので道を戻りながら、強い魔物(モンスター)を探して回る。


 二十階層以降で強い魔物(モンスター)と言えば紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)だが、どのくらいの強さだっただろうか?


 確か、鉄触手(アイアンテンタクル)の原型になる魔法で鉄の棒を使って動きを止めてから飛天十字戟(クロスデントシュート)で仕留めた。

 あらかじめ張り巡らされた糸があり戦闘中も口から糸を吐いてきた。その糸が切れなくて焦った魔物(モンスター)だ。


 アイツなら妖精人(エルフ)を止められるのか?


 それを確認したい。


 何階層だったか数えながら上って行くと、二十六階層で足元に蜘蛛の糸を見つけた。


 二十五階層じゃなくて二十六階層だったことにささやかな違和感を感じながら先に進む。


 普通なら中ボスのような魔物(モンスター)は五の付く階層にいるのに、この迷宮(ダンジョン)では二十六階層に紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)がいる。


 この迷宮(ダンジョン)が特殊なのか、紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)は中ボスじゃなくて普通の魔物(モンスター)に過ぎないということか。


 糸の先を辿っても迷宮(ダンジョン)が入り組んでいて紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)の姿は見えない。


 一度倒しているので恐い相手ではないが、糸によって身動きが取れなくなる可能性があるので注意が必要だ。


 糸に触れないようにしてゆっくりと進み、実験方法を考える。


 さっきは魔法で作った十字戟(クロスデント)で倒した。

 十字戟(クロスデント)は魔力を込めた矛で、長槍の先に十字の刃を取りつけ、突き刺すだけではなく斬る、引っ掛ける、叩きつけるなど、刃を十字にしたことで応用が効く武器になっている。


 紫の肌に普通の鉄の武器が効くとは思えないので、十字戟(クロスデント)は魔力強化できていたんだと思う。

 それか無意識に蒼光銀(ミスリル)製の武器を作り出した、のか?


 紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)の糸は元から張り巡らされている罠も、戦闘時に口から吐き出した方も斬れなかったし、焼けなかった。

 アレはタングステン合金の剣だった。


 強化したタングステン合金の剣で斬れず、焼けない糸。


 対抗できるとしたら蒼光銀(ミスリル)の武器。


 妖精人(エルフ)に限らず、魔法主体の戦い方だと紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)を倒すのは難しそうだ。

 物理主体の場合も蒼光銀(ミスリル)の武器を魔力強化して使いこなさないと難しい。


 ……いた。


 紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)が糸の上で丸くなって宙に浮いている。


鉄触手(アイアンテンタクル)


 色々と試そうと思っていたけど、改めて見ると勢いで倒し切らないとかなり苦戦しそうなので、初手から動きを封じに行く。


 蒼光銀(ミスリル)の長剣から四方八方に伸びた触手が紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)に絡んでいく。

 紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)がこちらに気づいたときには、既に脚の動きを止めている。


飛天十字戟(クロスデントシュート)


 空中に十字戟(クロスデント)を生み出すと、紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)に向かって飛ばし、胴体を串刺しにした。


 その一撃で紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)を倒すと、蜘蛛の糸が消えて死体が落ちてきた。


 あっさりと倒せて良かった。


 今回大事なのは紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)の死体では無く、十字戟(クロスデント)の方だ。


 前回は紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)を倒して、そのまま十字戟(クロスデント)を放置したけど、タングステン合金やコバルト合金の長剣との違いを確認したい。


 タングステン合金とコバルト合金では紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)の糸を斬れなかった。

 体に傷を与えられるかは確認してないけど、ダメージを与えるのは難しい気がする。


 一方、十字戟(クロスデント)は前回と今回、紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)を倒している。


 自分で作った武器だから、この違いを知りたい。


 前回は放置したから多分迷宮(ダンジョン)に沈んでしまっただろう。

 いつか神授工芸品(アーティファクト)として排出される日が来るかも知れない。


 今回、ちゃんと紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)を倒して同等の能力があることを確認したから、この十字戟(クロスデント)を持ち帰って、新しい素材に利用したい。


 何も考えずに魔法を唱えて上手くいくならいいが、狙った武器が出なかったら困るので試行錯誤は必要だろう。


 紫人蟲蜘蛛(パープルアラクネ)の死体から十字戟(クロスデント)を抜き手に取ると、微かに蒼い発色をしている。

 蒼光銀(ミスリル)の武器と明言できるほどの出来ではないが、恐らく蒼光銀(ミスリル)の含有量が高くなっている。


 偶然とは言え、魔法による蒼光銀(ミスリル)の精製能力が上がったらしい。


 これならかなり実用性の高い武器を自作することができるかも知れない。

 ネグロスとクロムウェルの武器をどう調達するか考えていたけど、案外簡単にクリアできそうだ。




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