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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第四章 水神宮
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第百三十三話

 

 サーバリュー侯爵領の外れ、水神宮の迷宮(ダンジョン)


 階層主(フロアマスター)虹蛇(エインガナ)を倒して黒竹筒(ブラックバンブー)を手に入れた僕たちは石の扉の前に並んでいる。


「それでは先に進みましょうか?」


 黒竹筒(ブラックバンブー)魔法鞄(マジックバッグ)に仕舞ったセラドブランに声をかけると、少し躊躇ってから返事があった。


「この洞窟は迷宮(ダンジョン)、先ほどの虹色の蛇は階層主(フロアマスター)と言うことですね?」


「はい。

 先ほどの虹色の蛇、恐らく虹蛇(エインガナ)階層主(フロアマスター)で合ってると思います。

 階層主(フロアマスター)を倒したので宝箱が発生し、そこの扉が開くようになったはずです」


「この扉の先は迷宮(ダンジョン)……」


「はい」


「分かりました。

 心して進みましょう」


 僕とネグロスで扉を押し開くと細い通路が続いてる。


 そして、壁面が薄く光っている。

 松明がなくても様子が分かる。


「あぁ、通路が明るい……」


 セラドブランが呟き、クロムウェルがサポートするように動きかけたけど、ノアスポットの方が早かった。


 ノアスポットが横から肩を支えてセラドブランがよろめくのを防ぐ。


 そう言えばさっきからクロムウェルは全然発言してないけど、その分一緒にいるメンバーの様子を見ててくれてるようだ。


 クロムウェルの中で役割を課しているんだろう。


「ここまではただの洞窟に見せる擬装だったようですね」


 そのまま僕とネグロスで先頭を進む。


 そして初めて見つけた階段を降りた。






 十一階層。


 ここまでは明確な階段や坂も無く真っ暗だった洞窟。

 それが階層主(フロアマスター)虹蛇(エインガナ)を倒すことで本来の姿を見せた。


 壁が薄く光り、視界が少し良くなった。


 代わりに入り組んだ通路、岩の割れ目がダラダラと続く。


 どんな魔物(モンスター)が出てくるかと警戒していたら錦蛇(パイソン)が現れた。


 全長十五メートル、太さは三十センチメートルほどで茶色の地色の鱗には黒い斑紋があり、割れた舌先をチロチロと出し入れしてる。


「デカイけど、大丈夫。ネグロス、行ける?」


「当然」


 僕が正面につき、ネグロスが側面に回る。

 クロムウェルとノアスポットがセラドブランとパスリムの前に立つと三段構えの陣形になる。


 正面の僕が剣を突き出し警戒してると、横から飛び込んだネグロスが一瞬で錦蛇(パイソン)の首を斬り落とした。


「完了」


「「「ふぅ〜」」」


 錦蛇(パイソン)の首が落ちて、長い体から力がぬけると、張り詰めていたこちらの空気も緩んだ。


「ハク、死体はどうする?」


「このままにして、もう一度確認したい」


「分かった」


 仕留めたネグロスがアッサリと受け入れてくれたので話しやすい。


「さっきの虹蛇(エインガナ)では直接視認できなかったので、もう一度魔物(モンスター)の死体が吸い込まれるか確認させてもらいます」


 振り返りながら主にセラドブランに向かって告げると、しばらく離れたところから錦蛇(パイソン)の死体を見守る。


 すると錦蛇(パイソン)の死体は泥に溶けるようにして迷宮(ダンジョン)の地面に消えていった。


「「「あっ……」」」


 皆んなが唖然とする中、静かに死体が消えた。


「ここは迷宮(ダンジョン)で確定です」


 僕が言うと再び表現し難い緊張感が生まれる。


 ここにいるメンバーは迷宮(ダンジョン)初挑戦だ。

 皆んな実力があるので見落としてたけど、不安と緊張があって当たり前。


 少し慣れて力を抜くことを覚えてもらう必要がありそうだ。


「ネグロス、皆んなにも慣れてもらいたいから、次見つけたらローテーションでいこう」


「ふふっ、分かった。

 任せとけ、手頃な魔物(モンスター)を見つけてやる」






 そんな風に言ったものの、魔物(モンスター)が全然いない。


「全然いないな」


「うん。僕も初めてだ。奇妙な迷宮(ダンジョン)だよ」


 警戒しながら歩く僕たちだけど魔物(モンスター)がいないので、緊張疲れだけが積み重なっていく。


「あっ、階段だ」


 そうしてる間に十二階層に下りる階段を見つけた。


 不思議に思いながら階段を下りると、そこには十一階層と同じような十二階層の通路が続いている。


 最初に入った三十畳畳ほどの広間で少し休憩を挟みながら皆んなに声をかけて、段取りを決めていく。


「ええっと、皆んなにも早めに迷宮(ダンジョン)での戦闘を経験して欲しいので、次に魔物(モンスター)を見つけたらノアスポットさん、クロムウェル、セラドブランさん、パスリムさんの順で慌てずに戦闘に参加してください。

 皆んなの実力なら問題ないんだけど、迷宮(ダンジョン)内で連携が取りにくいので、まずは軽い攻撃で身体を慣らしてください」


「そうですわね。

 どうも慣れない感覚で動き難く感じます。

 この狭さでの戦闘を知る必要があります」


「はい。

 私も狭いところでは一人で戦った経験しか無いので、ちょっとした迷いや躊躇いがあります。

 少しずつ慣らしたいので協力してください」


「ええ、当然です。

 手頃な魔法から使いますので安心してください」


 セラドブランも緊張を自覚していたのだろう。肩をさすりながら揉みほぐしている。




 休憩後、しばらく進むと三匹ほどの錦蛇(パイソン)が小さな割れ目にひしめいていた。


 ……ぐっ、どうする?


「クロムウェルとノアスポットさんが前に。

 セラドブランさんの魔法の後、パスリムさんの魔法を。

 飛び出して来た錦蛇(パイソン)は各個撃破で」


 僕の指示の後、すぐに隊形が組み直されてセラドブランが魔法を放つ。


火球(ファイアボール)


 火球(ファイアボール)が直撃した錦蛇(パイソン)が次々と割れ目から出て蜷局(とぐろ)を巻く。


 炎に包まれながら飛びかかって来た一匹はノアスポットが頭を一刀両断して割った。


土縛拘束(クレイホールド)


 蜷局(とぐろ)を巻いて防御体勢を取った二匹の錦蛇(パイソン)はパスリムが土で覆って固めていく。

 土に覆われた錦蛇(パイソン)は首を出したまま動けないようだ。


 二匹の首だけ出した錦蛇(パイソン)はクロムウェルが順に首を落として仕留めていく。


 完勝だ。


 全く危なげが無かった。


 軽い様子見だけど、メンバーの動きを見て役割分担できている。


「バッチリですわね」

「綺麗に勝てたな」


 セラドブランとクロムウェルが意気揚々と帰ってくる。


「お疲れ様。

 皆んないい感じだったね」

「いい動きしてたよ」


 僕たちが声をかけるとノアスポットとパスリムも照れ臭そうに笑う。


「私たちにもできそうです」


 良かった。少しは緊張がほぐれたようだ。

 固い身体じゃ探索を長く続けられない。


 蛇ということで忌避感があるかと不安だったが、問題なさそうだ。


 魔物(モンスター)の数が少ないと練度を上げられないけど、この様子ならもう少し無理をしても大丈夫だろう。


 次の階層主(フロアマスター)までは皆んなに戦闘わ分担してもらって進もう。

 上手くいけば二十階層より上にも進めそうだ。




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