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白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第四章 水神宮
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第百二十三話

 

 昨日の報告で、冒険者ギルドの指名依頼を初達成した。


 ついでに買取りしてもらった魔物(モンスター)

 香梅猪(プラムボア)三十二体

 藍背熊(インディゴバック)十五体

 一角獣(ユニコーン)十九体

 二角獣(バイコーン)三体

 天馬(ペガサス)一体

 で、合計七十体にもなり、金貨二千八百八十二枚になった。

 指名依頼の達成で金貨十枚が加算されて、総計で金貨二千八百九十二枚、


 一角獣(ユニコーン)が一体あたり金貨百枚。

 二角獣(バイコーン)天馬(ペガサス)は一体あたり金貨二百枚と言う超値引き価格だ。


 最初は狂暴犀(バーサクライノ)が一体で金貨二百枚で買い取ってくれたのに……。


 それでもまぁ、依頼達成したことでネグロスとクロムウェルはランクが上がるだろうし、よしとしよう。

 いつまでもFランクだと一人で迷宮(ダンジョン)に入れない。


 今日からは素材採取と周辺探索にあてる。




 連結鉄柵までは討伐も済んでるし冒険者もかなり入っているので、連結鉄柵よりも奥の森を探索することに決めて森に入る。


「昨日森に入ってみて何か気づいた?」


 森の中を歩きながらネグロスとクロムウェルに声をかける。


「ハクの戦い方を見て、やっぱ魔法がいるなって思ったぐらいかな」


 ネグロスが自嘲気味に答える。


「あぁ、私も香梅猪(プラムボア)藍背熊(インディゴバック)なら何とかなりそうだが、一角獣(ユニコーン)は無理だな」


「それは、武器の問題ってこと?」


「いや、俺が蒼光銀(ミスリル)の剣を持っても一緒だ。使いこなせない」


「そうだな。香梅猪(プラムボア)を簡単に倒せるようにはなっても、一角獣(ユニコーン)には効かないだろう」


蒼光銀(ミスリル)を使いこなすか、魔法で倒すかってこと?」


「そうだな」


 そう答えてネグロスが考え混むと三人して無言で森の中を歩く。


 ダメだ。

 いいアイデアが思い浮かばない。


 蒼光銀(ミスリル)を渡していいものか?

 永精木(エタニティウッド)の木剣があればちょうどいいのに。


 原生樫(プリミヴァルオーク)の杖を出して振り回してみると、自分自身、普通の魔法を使ってないことに気づいた。


 剣を魔力で覆うのと、魔法を使うのことの違いは何だろう?


 そう言えば、クロムウェルの作った水と魔水薬(ポーション)の違いも調べていない。


「ちょっと実験に付き合ってもらってもいいかな?」


 足を止めて原生樫(プリミヴァルオーク)の杖を構える。


 最初は剣を振るように、魔力を纏わせて維持する。

 杖が淡く光り、魔力が流れてるのが分かる。


 その辺の小枝を斬るとスパッと斬れる。


 うん。


 いつもの感じだ。


 次はその魔力を先端に集中するように意識する。


 そして、魔力の中から鉄が生まれるように念じると……。


 出た。


 鉄の粒ができて落ちた。


「おぉ〜。手慣れたもんだな。

 それで、どの辺が実験だったんだ?」


 ネグロスが地面に落ちた鉄の粒を拾いながら聞いてくる。


「う〜ん。蒼光銀(ミスリル)を扱うのと、魔法を放つのの切り替え実験?」


「なんで疑問形なんだよ」


「……自分でもよく分かってないから?」


「何だよ、それ?」


「今の実験をもう一度、私たちに説明しながらやってもらえないか?」


 ネグロスと僕がよく分からないままでいると、クロムウェルが自分も杖を取り出して言った。


「うん。そうだ。

 クロムウェルとネグロスも一緒にやってみてよ。

 まずは、杖全体に魔力を流す。

 淡く光ると、魔力が流れてる状態。

 これが散らないように抑える」


 クロムウェルの杖は光ってる。水を作れたからイメージできるんだろう。


 ネグロスはゆっくりと明滅してる。

 おぉ、魔力を流せてるってことだ。

 ただし、安定してない。


「そんな感じ。

 ネグロスは焦らずにゆっくりと。

 そして、次はその魔力を杖の先端に集中する。

 そして、集中したら水や風に変わるように念じる」


 僕の杖先からは鉄の粒が落ちて、クロムウェルの杖先には水球ができた。

 水球が落ちないのは、多分落ちないように念じてるはずだ。


 ネグロスの杖先から少し風が吹いた。


 おぉ? できた?


「おぉ! 今、風が吹いたよな!

 おおぉぉ〜!」


 ネグロスが吠えるとクロムウェルの水球が落ちて弾けた。


「……っと、こんな実験だったんだよ」


「おぉ〜、俺にもできた〜!」


「なるほど、少し制御しやすくなった気がする。

 どうして水球ができたか分からなかったが、こんな感じだったんだな」


 ネグロスが飛び跳ねる横でクロムウェルが杖を握った手を見て深呼吸してる。


「魔力をコントロールする練習はできそうだな……」


 三人して原生樫(プリミヴァルオーク)の杖を光らせながら更に森の奥に向かって歩き始めた。






「風を見る方法はないかな?」


 突然、ネグロスが聞いてきた。


 連結鉄柵まではもう少しある。

 少しでもコツを掴もうとして、三人ともずっと杖を光らせてる。


「風を見る方法?」


「あぁ、クロムウェルもハクも目に見えるからいいけど、風は分かりにくいんだよ」


「確かにそうだけど……」


「杖先に紐でもつけとくかい?

 風が吹くとヒラヒラして分かるよ」


 僕が含み笑いをしながら提案すると、ネグロスは顔を顰めて考え込んだ。


「後は冷たい風や熱い風、色をつけて緑の風とか」


 調子に乗って揶揄ってると閃いた。


 クロムウェルとネグロスは近いうちに蒼光銀(ミスリル)が必要になるだろうし、魔法鞄(マジックバッグ)も必要だ。


 お嬢様たちも蒼光銀(ミスリル)魔法鞄(マジックバッグ)は共通で持ってた。

 パスリムだけは杖の方を常用してたけど、セラドブランとノアスポットは蒼光銀(ミスリル)の剣を装備してた。


 魔法鞄(マジックバッグ)は今回の稼ぎと叙勲の賞金があるので、買おうと思えば買えるはず。


 そうなると蒼光銀(ミスリル)の武器をどうするかが課題になる。


 僕が持っている蒼光銀(ミスリル)の剣をあげてもいいけど、蒼光銀(ミスリル)はプレゼントするには高価過ぎる。


 色々と気を使われるのも嫌だ。


 だから、今の剣をバージョンアップさせる。

 硬度を上げるか、魔力の通りを良くするか。

 蒼光銀(ミスリル)じゃなくても、魔力を活かせる武器になればいい。


 うん、いいアイデアだ。


 クロムウェルとネグロスにプレゼントする前に自分用に作って試さないとマズイので、僕専用の剣について考えてみる。


 今のところ一番使えるのは蒼光銀(ミスリル)

 鉄の日本刀もいいけど、魔力を纏わせたら何回かで折れる。


 焼入れ、焼き戻しで硬さと粘りを入れても折れたから、刀の使い方とセットで変えなきゃならない。

 そうすると赤熱させても折れない日本刀。


 ……高温に耐えれるようにするか?


 鉄が千五百度で、確か最も融点の高い金属がタングステンが三千四百度だったはず。


 タングステン単独だと硬いけど、割れやすくなるのでコバルトやクロムを混ぜた合金にして耐熱、耐食性能を上げて使われるんだったか。


 まぁ、やってみよう。

 鉄の精錬をしたときも、蒼光銀(ミスリル)を取り出せるか試したときも、やってみてから検証した。


 今回も試してみて、良さそうな頃合いを探すしかないだろう。


 ちょうど連結鉄柵に着くので、あそこでしばらく実験しよう。


「探索の前に一度、連結鉄柵のところで休憩にしよう。

 さっきの実験の続きをしたいんだ。

 どうかな?」


「あぁ、ちょうどいいんじゃないか」


「私も少し試したいことがあるから助かる」


 連結鉄柵に着くとパスリムの作った重層堅土(ハードレイヤー)を拠点にして、それぞれが細工を始める。


 ネグロスは杖の先に紐をつけ、クロムウェルは杖の先に水球を作っている。


 僕は材質の使いやすさを試すために鉄、タングステン、コバルト、クロムを主金属とした合金で西洋剣を作る。


 まずは主金属の割合を七十パーセント、残りを三元素で十パーセントずつに配分する。

 厳密にどうなっているか分からないけど、イメージとしては明確に違いをつけて作った。


 まずは四本。


 普通に長剣を作ったけど、外見では見分けがつかない。

 地面に書いた文字で判別しながら、評価する。


 最初は鉄合金剣。


 魔力を流すとすぐに散る。留めようとしても難しい。

 精錬すると表面に鉄くずが浮いてくる。魔力強化した指で撫でると研磨できる。

 魔力を込めると赤熱する。更に込めると白熱する。


 何か斬ってみた方がいいな。


 近場にある試し斬りの素材は、ミニ方尖碑(オベリスク)ぐらいだけど、……。


 それでいくか。




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