表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白金の獣人貴族  作者: 白 カイユ
第三章 碧玉の森
100/257

第百話

 

 碧玉の森(ジャスパーウッズ)、石積み遺跡の迷宮(ダンジョン)、二階層。


 二階層の構造は一階層と変わらない。

 天井の高い大きな広間に太い柱が乱立している。広間なので奥の方まで見えてもいいんだけれど、無数の柱のせいで視界が遮られている。


 見ようによっては森の奥、樹海のような階層(フロア)だ。


 方向的には入口に戻るようにして二階層を走り抜ける。


 たまにいる蛞蝓(なめくじ)は避けて走る。

 柱の間を塞ぐようにして転がっていたら斬り捨てていく。


 多分、素材としての価値は無いだろう。


 蛞蝓(なめくじ)よりも神授工芸品(アーティファクト)を見つけたいけど、見つからない。


 この階層(フロア)も半刻ほどで走り抜けた。




 三階層。


 相変わらず同じ雰囲気が続く。

 二階層にも神授工芸品(アーティファクト)が無かった。


 ……誰かが先行してる。


 それは間違い無いだろう。

 いや、間違い無いと考えた方がいい。

 誰かがいると考えた方が危険が少ない。


 誰だ?


 集団暴走(スタンピード)魔物(モンスター)が溢れる中、わざわざ迷宮(ダンジョン)を優先した?


 それとも限定特典(リミテッドボーナス)を知っていて、危険(リスク)を承知で迷宮(ダンジョン)に潜ったか?


 どちらにしろ好意的に受け入れられそうに無い。

 ……お互いに。


 相手の様子を見るために静かに進みたいと思ったけど、前からグェッグェッ煩い魔物(モンスター)が現れる。


 イボイボで泥々な蛙がこちらを見てる。


 体が大きく僕ぐらいの身長だと丸呑みできそうな口をしてる。

 蛞蝓(なめくじ)と同じようにあまり近づきたくないと思って躊躇したら、口を開けて舌を伸ばしてくる。


 大人の腕よりも太く長い舌が真っ直ぐ伸びてくるので、横にかわしつつ、舌の中ほどで斬り上げる。

 斬った舌から何か液体が飛び散ったのを避けながら更に踏み込んで、蛙の口から横一文字に斬り裂いた。


 上下に切り分けられた蛙がベッタリと潰れるようにして地面に消えていく。


 蛞蝓(なめくじ)に続いて泥蛙(マッドフロッグ)か、若干嫌な予感を抱いて先に進む。




 先に進むと今度は柱にくっ付いている蛞蝓(なめくじ)とその下の地面をゆっくりと進む巨大芋虫(ヒュージクロウラー)がいる。


 うげぇ……、やっぱりこの迷宮(ダンジョン)魔物(モンスター)は虫系のようだ。


 柱にいるおおきな蛞蝓(なめくじ)を斬り剥がし、地面に転がる巨大芋虫(ヒュージクロウラー)もギザギザとした口がついている頭を落として倒す。


 ジュッ。


 蛞蝓(なめくじ)の体液が巨大芋虫(ヒュージクロウラー)にかかると、巨大芋虫(ヒュージクロウラー)の体が煙を出して溶けた。

 ……今まで気づかなかったけど、ただの蛞蝓(なめくじ)じゃなくて酸蛞蝓(アシッドスラグ)のようだ。


 蒼光銀(ミスリル)の長剣だから影響ないけど、鉄剣だと傷がついたり折れたりするだろう。


 銀の蜥蜴アルゲントゥ・リザード迷宮(ダンジョン)に出てくる粘性捕食体(スライム)のようにいやらしい魔物(モンスター)だ。


 謎の先行者はどんな武器を使っているのか?


 普通の武器だと酸蛞蝓(アシッドスラグ)を倒し続けられない。

 倒さずに進んでいるか、魔法を使うか?


 ……どちらにしろ嫌な相手だ。


 安全を重視して魔物(モンスター)を倒して進むレゾンド・レオパードのような人物ならば、早々に迷宮(ダンジョン)から引き返す。


 しかし魔物(モンスター)を倒さずに先に進むような相手だと神授工芸品(アーティファクト)だけ持ち去って、痕跡を残さない。


 魔法を使って魔物(モンスター)を倒し続ける相手なら全てを倒しながら神授工芸品(アーティファクト)を拾って行く。


 そんなヤツとは鉢合わせたくない。


 また別の可能性として、蒼光銀(ミスリル)の武器を持っている冒険者というのも嫌なケースだ。

 そんな冒険者が先行してるとしたら、どれだけ警戒しても足りない。

 相手次第で何が起きるか分からない。






 四階層、五階層と徐々に深く潜って行く。


 坂道が長くなり、少しずつ天井が高くなっているような気がする。


 ネグロスやクロムウェルたちを放置して来て、様子を見るだけのつもりだったのに、先行者の思惑が気になって帰れない。


 どんどんと深みに嵌ってる気がする。


 広間の横の方からブゥゥーンとした。

 この天井の高さを活かした魔物(モンスター)のお出ましだ。


 蜂。


 しかも大きくて銀色の金属光沢がある。


 鉄蜂(アイアンビー)


 僕の頭ほどの大きさでお尻には針と言うには大き過ぎる鉄槍がついている。


 その鉄蜂(アイアンビー)が上の方から何匹か飛んで来る。


 あ〜、これだから虫系は嫌だ。


 両手に蒼光銀(ミスリル)の長剣を持ち、迎え撃つ準備をすると鉄蜂(アイアンビー)が到着して戦闘が始まった。


 鉄蜂(アイアンビー)は硬い。

 鉄蜂(アイアンビー)の鉄色は見かけ倒しじゃなく剣を振るたびに、キンキンッと音がする。

 そして斬り落とした鉄蜂(アイアンビー)はズンッと落ちる。

 まさに金属製の蜂だ。


 それなのに動きは速い。


 数もいて綺麗に首を落とすのが難しいので、間合いに入った鉄蜂(アイアンビー)からとにかく斬りつける。翅でも体でも傷つけて撃墜していく。


 落ちた鉄蜂(アイアンビー)はタイミングをみて止めを刺すだけでいい。


 五、六匹を倒すのに結構手間取った。


 これはかなり難易度の高い迷宮(ダンジョン)だ。


 酸蛞蝓(アシッドスラグ)を剣技で倒し続けるのはキツい。

 鉄蜂(アイアンビー)は硬くて速い。剣技でも魔法でも苦労するだろう。


 ……先行者はパーティか?

 僕が単独だからパーティで潜ってることは無意識に想定してなかった。

 神授工芸品(アーティファクト)を持ち帰るのもパーティの方が容易だ。

 パーティなら分担して運べばいい。そうでなければ魔法鞄(マジックバッグ)か何かが必要になる。


 どんどんと先行者の条件が厳しくなってくる。


 はぁ、……憂鬱になり溜め息も出てくる。






 五階層の大きさもこれまでと変わらない。


 同じ時間をかけて走り抜け、神授工芸品(アーティファクト)は一つも見つからない。


 唯一変わったのは、六階層に下りるのが坂道から階段になった。


 そうして六階層に入る。


 柱の影から急に現れた泥蛙(マッドフロッグ)鉄蜂(アイアンビー)のコンビを瞬殺すると、上の方から鱗粉が舞った。


 ……マジか?


 鱗粉には嫌な思い出しかないので焦ったけれど、鱗粉は舞い散るだけで特に影響は無さそうだ。

 でも、その鱗粉を撒いた蝶の様子がおかしい。


 揺らめくように宙を舞って、ときおり姿が消える。


 鱗粉の影響か?


 動きを予測して斬りつけても剣で斬れない。

 擦り抜けるようにして近づいてくる。


 バックステップで距離を取り動きをよく観察するけど、変なところも無い。


 鱗粉に気をつけながら、メチャクチャに剣を振るとやっとヒットした。


 ……物理的なダメージは無いけれど、精神的に疲れる。


 多分幻影蝶(ミラージュパピヨン)だったんだろう。


 幻に翻弄されてる内に、いつの間にか他の魔物(モンスター)に囲まれてしまい、やられてしまう。

 そんな話を聞いたことがある。


 積極的に戦うつもりは無かったんだけど、結構戦闘を続けてる。

 広間のような空間なので、見通しは悪いけど動くものは見つけやすいのかも知れない。


 ……かと言って、柱の影に身を潜ませながら状況を確認してから進むのは時間がかかる。

 突っ切って走るのが一番早そうなので、もう少し魔物(モンスター)を無視して進んだ方が早く進めるかな?


 鉄蜂(アイアンビー)幻影蝶(ミラージュパピヨン)を無視して進むことにしたら、今度は泥蛙(マッドフロッグ)が上から落ちて来た。


 何で蛙が上から落ちてくる?


 不思議に思って上を見ると、ただの柱だと思っていた柱に横枝みたいなものが増えている。

 天井が高くなり柱も長くなって補強するかのように横枝が増えていて、その横枝の上に何匹か泥蛙(マッドフロッグ)が固まっている。


 コイツらは図体もデカいし邪魔なので、辻斬りで道を作りながら進む。


 六階層、七階層とできる限り魔物(モンスター)を避けながら図体のデカい魔物(モンスター)だけ倒して進むと、やっと八階層に着いた。


 十階層まで進めば階層主(フロアマスター)だ。


 階層主(フロアマスター)がいるかどうか?

 倒した後に十一階層に行けるかどうかで、先行者がまだ先に進んでいるかどうかも分かるだろう。


 そのために八階層も走り始めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ