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二丁拳銃使いの主人公志望者  作者: 燐夜
第二弾 初実践
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第二弾 初実践(3)

「やあやあ君たち。俺様の華麗な銃捌きを見たかね」


「ああ、すごかったぜ!」


「まあ、やるわね」


「調子に乗らないでください、きもいです」


「イリスちゃん人を褒めるって大事なことだと思うよ?」


「そうですか」


 そうですかじゃねえ、褒めろって言ってるんだよ俺は。


「さっきの試合、どうして相手の方が先に戦気切れを起こしたの?」


「ああ、俺も気になってたぜ。まさか戦気が少ないっていたのは嘘だったのか?」


 戦気が多いといっていたモブが先に戦気切れを起こしたことに疑問を感じていたのかアリサとライが訪ねてくる。


「勝負がついてから嘘言う必要はないだろ……」


「いやぁ、ダンなら相手をバカにするためだけに言うかなと思って」


 へへへと笑いながら地味にけなしてくるライ。


「OK、お前が俺のことをどう思っているかは分かった。とりあえずステージに上がろうか」


 戦争と行こうぜ、ライ君よお。


「嘘じゃないなら、どうしてなのよ?」


 ふう、そんなことも分からないの?困っちゃうね。

 という意を込めながら肩をすくめ、説明してやろうと口を開きかけたところで横からイリスの声によって中断させられる。


「戦気コントロール力の差ですね。相手の方は戦気が多いのをいいことに力任せに能力を使用していて、無駄の多い戦気の使い方をしていました。一方ダンはあまり褒めるのは癪ですが、完璧な戦気コントロールで一切無駄な戦気を使っていませんでした。もうあのレベルまでいくと気持ち悪いですね」


 先ほどのアリサの試合の時に俺が先に能力を言い当てたことを根に持っていたのか、その時の仕返しだと言わんばかりのしたり顔をしながら解説するイリス。


 そして、褒められたかと思ったらいつの間にか貶されていた。

 びっくりするほど綺麗に上げてから落とされた。


「まあ、半分は正解だな」


「……残りの半分は何なんですか」


 完全に合っていなかったのが悔しかったのか、ムッとした表情で聞いてくるイリス。


「まあ相手の戦気の使い方が雑すぎて無駄が多いってのもあるが、もう一つ戦気の使い方が雑で起こる問題があるんだよ」

「戦気の消耗が早くなる以外にですか……」

「ああ」


 イリス、アリサ、ライの三人が一斉に考え始める。


「わっからねぇ!降参だダン、教えてくれ」


 すぐに根を上げるライ、もうちょっと頑張れよ。


「お前らも降参でいいのか?」


「さっぱり分からないわね」


「……悔しいですが」


 アリサとイリスにも確認を取る。みんな降参らしいので俺は答えを明かす。


「まあ、ズバリ言うとな技に弱点が出来るんだよ」


「弱点……ですか?」


「ああ、そうだ。戦気の使い方が雑だとな技を形成するときに戦気が万遍にいきわたらなくてもろい部分が出来るんだよ。で、そこを打ち抜くと弱い威力の攻撃でも簡単に壊せるってわけ。さっきの奴は典型的なそのパターンで楽勝でしたわ。まったく自分が怖いぜ、くふふ」


「弱点を打ち抜くって……あの戦闘の中、一瞬で弱点を見つけてそれを正確に打ち抜いていたということですか?」

 

 そして少し上ずった声で聞いてくるイリス。

 俺のやったことに驚いているのか、開いた口がふさがらない様子のライとアリサ。

 

 まあ確かに相手の技のもろい部分を一瞬で見つけるというのはとても難しい技術だ。

 戦気コントロールの特訓を死ぬほどして、戦気を感じる力が人一倍強い俺だからできた芸当だろう。


「そういうことだな」


「そういうことだなって……簡単に言いますけどそれがどれだけ凄い技術なのか分かっているんですか?」


 ハアとため息をつき、頭を押さえながら呆れた表情でいうイリス。


「まあ、これが俺の実力ってやつぅ?」


「うざいわね」


 これでもかというほどのどや顔を決め込んでいたら、アリサがボソッと一言呟く。

 いや、その呟く感じガチっぽくてケッコー傷つくんですけど……。


「にしても、俺もアリサもダンも無事勝つことが出来たし、残すはイリスだけだな」


 話題を変えるライ。


 そう、今のところ俺たちはイリスを残して全員が対戦に勝利しているのだ。

 ライの試合は気づけば終わってたから見てないけど。


「そうね、準備は大丈夫なの?」


「ええ、問題ありませんよ」


 アリサの問いにいつも通りのすまし顔で答えるイリス。

 アリサみたいに緊張の一つでもすればかわいいのに、全く可愛げのないやつだ。

 

 どれ、ここはひとつ煽っておいてやろう。


「ずいぶん自信ありげじゃあないですかイリスさぁん。これは負けた時の言い訳が楽しみですねぇ」


「……ふっ」


 煽ってやると小ばかにした顔でこちらを一瞥し、鼻で笑われた。

 負けたら死ぬほど煽ってやろう。

 対戦していない人が残り数人なったところでやっとイリスの名前が呼ばれた。


「では行ってきますね」


「なあダン、イリスのレガリアって一体どんなものなんだ?」


 ステージに歩いていくイリスを見ながら何故か俺に聞いてくるライ。


「なぜ俺に聞く」


「いや、いつも攻撃くらってるだろ?だから分かるかなって」


「まあ、少なくとも大道芸ではないらしいぞ」


「?」


 レガリアねぇ、普通レガリアの能力を発動するならレガリア自体を呼び出しておかなければ発動することはできない。


 だが、イリスは俺に向かって攻撃もとい暴力を毎日振るっているが俺は不思議なことにあいつのレガリアを見たことがないのだ。

 まあ、レガリアは知られると弱点になることもあるので上手く隠しているのだろう思っていたが、どうも何かありそうなんだよなぁ。


「ちょっと、二人とも試合が始まるわよ」


 アリサに話しかけられたことにより会話を中断し、ステージの上へと視線を向ける。


 ステージ上ではいつもと何も変わらない様子のイリスとやる気にみなぎっている男子生徒がいる。

 かわいい子と当たってラッキーとでも思っているのだろう。

 

 悪いことはい言わないからそいつは止めておけ名も知らない男子よ、地獄を見るぞ。


「両者構えて……開始!」


 きょう一日でもう聞き飽きるほどに聞いた合図によって試合が開始される。


 開始の合図と共に男子生徒がイリスに向かってレガリアであろう短剣を構えながら駆け寄る。

 だがその行動に対して火球や氷弾を放ったり地面を隆起させ、容易に接近を許さないイリス。

 繰り出される多様な攻撃に対処しきれずダメージを負っていく男子生徒。


 イリスの戦闘技術の高さに俺は試合に見入っていた。

 無駄のない戦気コントロールに付け加え同時に複数の技を展開するキャパシティ、どれをとっても一級品だ。


 レガリアが強力であればあるほどそれを扱いきれずに宝の持ち腐れになってしまうものは多い。

 さっきの俺の対戦相手がいい例だ。

 だが、イリスは自分の能力を完璧に扱えているように見える。

 

 ずっと引っかかってたがこれは確定だな。

 俺の中で疑問に思っていたことがこの戦闘を通して確信に変わる。


「すごいわね……、あんな沢山の技を同時に使うなんて」


「ああ、想像以上の実力だな」


 アリサとライも驚きを隠せない様子でステージに釘付けになっている。

 試合は一方的なものだった。


 イリスの同時に展開される熾烈な攻撃に対応しきれずに、レガリアの能力を使う暇もなく男子生徒は戦闘不能にまで追い込まれた。

 ステージの上で一歩も動くこともなく対戦相手を圧倒したイリスに生徒たちからは沢山の視線が向けられる。


 その視線には様々ものがあった。

 単純に驚いているものや羨望の眼差しで見ている門、挑戦的に睨んでいるもの、面白そうに眺めるものなどだ。


「しょ、勝者、イリス・アライズ」


 容赦のない圧倒的な勝利に先生も驚いているのか、それとも若干ひいているのか言葉に詰まりながらも勝利宣言をする。

 勝利宣言を聞き、周りの視線にもどこ吹く風といった感じでいつものクールな表情でこちらに歩を進めるイリス。


「お前、全く容赦なかったな」


「そうですか?しっかり手加減したつもりだったんですが」


 え、あれで手加減してたの?対戦相手ボロボロだったよ?


「イリス!あなたメチャクチャ強かったのね、とても凄かったわよ」


「強いとは思っていたけど、まさかここまでとは思わなかったよ」


 ベタ褒めするアリサとライ。


「そこまで褒められると少し気恥ずかしいですね。ですがありがとうございます」


 本当に恥ずかしがっているのか、いつもの表情から一転、頬を少し赤らめているイリスに少し驚く。


「な、なんですかその顔は」


「いや、お前もはずかしがるんだなって」


「人を何だと思っているのですか」


「冷徹女」


「ふんっ」


「いてっ!お前、ついに直接的攻撃を……」


 膝を蹴られてうずくまりながら抗議の視線を送るが、相手にされず無意味に終わる。


「そういえば結局イリスのレガリアはどういうものか分からなかったわね」


 そう、イリスは先ほどの試合でも結局レガリアを見せることなく終わったのだ。

 能力もどういったものなのか未だに不明だ。


「ダンは分かったか?」


 ライも分からなかったのか俺に向かって聞いてくる。


「能力がどういったものなのかは分からなかったが、レガリアが見えない理由なら分かったぜ」


「え、ダン分かったの!?一体何なのよ!」


「ていうかお前らでも考えたら分かると思うぞ」


「分からないから聞いてるのよ!」


「英雄アルって知ってるか?」


 英雄アル……それはヒューマンなら子供の時に誰もが聞いたことがあるだろう話で、レガリアを持っていないことにより迫害されていた少年が世界を襲う大厄災から紆余曲折ありながらも人々を守る英雄の話だ。


「ああ、その話なら知ってるけど、どうしてその話を……まさか」


 何かに気づいたように言葉を途中で区切るライ。

 どうやらライは気づいたようだ。


「多分だけどそのまさかだと思うぜ」


「そんな、まさか……あれは本の中だけの話じゃ」


「ちょっとなに二人だけで分かり合ってるのよ!私にも教えなさいよ」

 

 一人だけ分かっていないのが不服なのかアリサが今にも飛び掛かってきそうな勢いで迫ってくる。

 近い近い、そしていい匂いがすゲフンゲフン。


「アリサ子供の頃好きだっただろ英雄アルの話」


「確かに好きだったけど……何か関係あるの?」


 ライの質問の意図が分からず首をかしげるアリサ。


「つまりイリスはその英雄アルと同じ力ってわけだよ」

「……ええぇぇ!つ、つ、つまりレガリアはないけど特別な力が使えるってわけぇ!?」


 闘技場全体に響き渡る大きな声で驚きを表すアリサ。

 試合を行っていた生徒までもが何事かとこちらに振り返っている。

 

 今アリサが言ったように英雄アルはレガリアを使えなかったが、その代わりに不思議な力をその身に宿していた。

 丁度、今のイリスのようにレガリアを持っていなくても戦うすべを持っていたのだ。


「あ、ご、ごめんなさい!……つい興奮しちゃって」


 盛大な個人情報の漏洩をしたことと、いきなり大声を出したことに我を取り戻したアリサが顔を赤くしたり青くしたりしながら謝る。

 レガリアの情報というのは戦闘において勝敗を分ける重要なファクターの一つになる。

 特にイリスのように強力な能力だったりするとなおさらだ。


 それにそんな珍しい力だとその力を悪用しようと考えるものも少なくはない。

 まあ、ここは学校だしそれは大丈夫だとは思うけど。


「いえ、能力までは聞かれていないでしょうし大丈夫でしょう。ダンの予想通り私の力はその英雄譚アルと同質のものでしょう。ただレガリアを持っていないというわけではありません」


 レガリアを持っていないわけではないというイリスの言葉が気になり俺は続きを促す。


「というと?」


「上手く説明できませんが、自分自身がレガリアになっているという感覚でしょうか。他の人が発現されたレガリアを通して能力を使っているように私も自分自身を通して能力を使っているという感じです」


「なるほどな……じゃあ俺達とやっていること自体は変わらないってことか」


「そういう事ですね」


 英雄と同じ力を持つ目の前の少女、イリスに驚きを隠せない俺達。

 

 ―――――俺は俺が主人公の世界を生きたいんだよ!


 不意に過去の出来事が俺の頭をよぎる。

 師匠のところに弟子入りするために恥も外聞も己の身の程さえも忘れて自分の意思を口した“俺 ”が本当の意味でこの世に生まれた日。


 俺が主人公になることを望んで生まれてきたものだとしたら、イリスは主人公として生まれてきた存在なんだろう。


「どうしたんだダン?いきなり黙り込んで」


 いつの間にか黙り込んでいたことにライの呼びかけによって気づかされる。


「いや、何でもねぇよ」

「結局イリスのレガリアがイリス自身だって言うことは分かったけど、能力は何なの?」


 アリサが質問する。

 そうだ、イリスのレガリアのことについては解決したが、あの複数の属性を使う卑怯じみた能力のカラクリについてはまだ分かっていない。


「…………私の能力は火、水、風、地、氷の生成・操作です」


 少し言葉を詰まらせながら言うイリス。


「強力な能力だな。それに何だかエルフの魔法に似てるよな」


「そうね、それにそのエルフだってニ属性扱えれば優秀って言われるのに五属性も使えるんだもの。規格外の能力よ」


 イリスの能力をべた褒めするライとアリサ。

 確かに二人の言う通り規格外の能力である。

 ただ一つ気にかかるのは、あれはエルフの魔法に似てるというよりは魔法そのままじゃ……。


「よし、終わったな。みんな集合してくれ!」


 ちょうど生徒全員の実践が終わったようで先生が集合の合図をかける。

 結局その日は先生のもとに集合した後は話を聞いて授業が終わり解散となった。

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