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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ふたりぼっち

作者: 朱那

思いつきで書きました。後悔はしていない。

「「メリークリスマス」」


そのかけ声とともに手に持っているグラスを打ち合わせる。


「さあ、食って食って食いまくるぞー。」


「ちょっと由衣、行儀悪いわよ。もうちょっとおとなしく食べなさい。」


私は、目の前に座る友人にそう注意する。


「はーい。わかりましたよー。」


そう言いつつも、由衣は手を動かし続ける。


「ちょっと、なにもわかってないじゃない。」


「まあまあ、いいじゃんか。今日はクリスマスなんだよ。楽しまなきゃ損だよ、損。」


由衣はそう言ってごまかそうとしてくる。


「そんなこと言ってもダメなものはダメ。この後のケーキ食べさせてあげないわよ?」


「はーい。まったく、こんな時でも蘭は真面目なんだからー。」


そう言うと、ようやく手を止めた由衣。それを確認した私は、グラスを傾けお酒を少し口に含む。


「それにしても、結局今年も私たち二人でパーティーしてるね。」


「そうね。」


「今年で何回目だっけ?二人でクリスマスパーティーするのって。」


「5回目ではなかったかしら。高校の時に仲良くなってから毎年していたから。」


「もうそんなに経つのか~。なんか最近、時が過ぎるのが早く感じるよ。」


「またおばあちゃんみたいなことを言って。あなたまだ20代じゃない。」


「そこは気にしたら負けだよ、蘭。」


「一体何と競っているのよ……」


「そういえば誰だっけ?去年のクリスマスに”来年こそは彼氏とクリスマス過ごしてやるんだから!”って意気込んでた人は。」


「し、仕方ないじゃない。いい人が見つからなかったんだから……」


「なんか去年もその言い訳聞いた気がするよ?」


「き、気のせいよ、気のせい。そういうあんたはどうなのよ。」


「私?私は別に彼氏が欲しいとかないからなー。」


「どうしてよ!一度は彼氏とクリスマスを過ごしてみたいとか思ったりするもんでしょ、普通。」


「だって、私には蘭がいるからね。」


何のためらいもなしに言ってくる由衣に思わずドキッとしてしまった。自分の思いを素直に口に出来るところ、ほんとにずるいと思う。


「……ほんとに調子いいんだから。」


*


「口にクリームついてるよ。」


料理を食べ尽くしデザートにケーキを食べていると、由衣がそう言いながら顔を近づけてきた。そのまま私の口についていたクリームを指で取ると、その指を口に含む。


「あ、ありがとう。」


急に由比の顔が近づいてきたのでびっくりしてしまった。しかし、クリームはとれたはずなのに由衣は顔を近づけたまま離そうとしない。どうしたのだろうか。


「まだ何かついてる?」


由衣に聞いてみる。すると予想もしなかった言葉が返ってきた。


「ねえ、このままキスしてもいい?」


「えっ」


由衣は何を言っているのだろうか。


「ちょっと由衣、どうしたの。もしかして酔ってるでしょ。」


「酔ってない。私は本気だよ。大丈夫、ちょっとだけだから。」


「ちょっとも何もないでしょ。一体何を考えているの。」


ちょっと強めに問いかけてみる。


「蘭、私たち友達を超えてみない?」


やっぱり由衣が何を言っているのか分からない。いや、分かってはいるんだが脳がそれを拒否している。


「ほんとに蘭って鈍いよね。高校の頃から割とアピールしてきたと思ってるんだけど。どうして気づかないかな。」


いや、普通同性の友人から恋愛感情を持たれているとは誰も思わないだろう。決して私が鈍いわけではないはずだ。


「大丈夫、優しくするから。」


だから、優しくするとかそういう問題ではない。私はどうにかして由衣から距離をとろうとしたが、いつの間にか手を握られていて逃げられなかった。


「ちょ、ちょっと……まって……」


由衣の顔がだんだん近づいてくる。逃げようとするも逃げられる気配はなく、どうしようもなかった。唇が触れそうになる。私は思わず目をつむった。しかし、いくら時間がたっても唇に何かが触れることはなかった。


「えっ……」


恐る恐る目を開いてみると、目の前にいたずらっぽく笑う由比の顔があった。


「ふふ、冗談だよ。」


どうやら今のは由衣の悪ふざけだったようだ。まったく、驚かさないでほしい。


「由衣、やっぱり酔ってるでしょ。」


「そうかもね。さすがに飲み過ぎたかな。」


そう言いながら体を離していく。私も全身に入っていた力を抜こうとした。


ちゅ


突然唇に何かが触れた。何が起きたのか理解できず、由衣の方を呆然と見る。


「でも、蘭のことが好きなのは冗談じゃないから。」


由衣が満面の笑みで言ってくる。それでようやく由衣にキスされたことに気がついた。瞬間、全身が沸騰したかのように体が熱くなる。心臓がバクバクと音を立て収まる気配がない。顔が真っ赤に染まり、由比の顔をまっすぐ見ることができない。私は一体どうしてしまったのだろう。さっきまではこんなことなかったのに。


「絶対におとしてみせるから。覚悟していてね。」


由衣がそう宣言する。不覚にもその言葉に少しときめいてしまった。おかしい、私はノーマルのはずだ。それなのにどうしてこんなにも由衣にドキドキしているのだろうか。このまま由衣と付き合うのもいいかも、とか思っている自分がいる。混乱して頭の中がグチャグチャになっている。まともに考えることが出来ない。きっとお酒を飲んだせいだ。そのせいで酔ってしまっているのだろう、由衣も私も。そうでもなければ、こんなふうになるはずがない。だからこの胸のドキドキも、この感情も全部お酒のせいだ。きっと。


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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルがいい。本文からも、二人だけの世界が展開されているみたいな気がして。 [気になる点] 二人の知り合ってからの月日が不明なところ。 [一言] クリスマスはまだまだこれから、ですね。ど…
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