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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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中級職とパーティランク9


 最下層から上へ行ける階段が、何者かによって破壊……というか跡形もなく吹っ飛んでいた。どこかの凶暴なドラゴンがブレスを吐いたに違いない。


 というか俺のせいだった。


「イバたんを呼んでここまで来てもらうしかないな」


 暗いところが怖いって言ってたけど、親分の緊急事態だからどうにか来てもらおう。


 キェェェェェェエエエッ!


 鳥の鳴き声に似た何かの絶叫が聞こえた。

 瘴気のようなものが漂ってきた。

 同時に、ひどい腐臭がする。


 俺たち全員が顔をしかめていると、目の前の壁が吹っ飛んだ。


「きゃ!? な、何……?」

「おとーさん、あれっ」


 シャルが指さした先に、アラクネがいた。

 さっき見かけたエリートとサイズは同じだが、瘴気をまとっている。


 強いのが一目見てわかる。


「キェェェェェエエエエエエッ!」


 あれか、女王ってやつは!


――――――――――

種族:怪蜘蛛族 クイーン・アラクネ(闇)

Lv:55

スキル:ドレイン・変身・粘糸・毒牙・夜目・上級格闘術

ブラッディ・サークル

シャドウスラッシュ

――――――――――


 シャルと同じ攻撃魔法持ちか。

 それに加えて格闘術……。

 厄介だな。

 四本の腕に、一〇本ほども脚があった。


 前と後ろに顔がある。気色悪い。


 黄色い三つの目を光らせ、こっちへ突進してきた。


 ――速い。


 俺は何も言わず、全員に『フィジカルアップ』を使い物理防御を上げる。


 クイーンが数本の足を活かして、上下左右関係なく壁を走った。


 竜牙刃を抜き大盾を構えた。【挑発】を発動。


 二人から離れるようにして俺も走る。


「キェェェ!」


 俺につられてこっちにやってきたクイーン。


 スキルを使ったのがわかった。

 闇色のオーラのようなものが四つの拳を包む。


 ガガガガガガガガガ!


 腰を落として構えた盾に打撃攻撃を連打されまくる。

 俺はそれをガードしきった。


 ふ、と視界の横に何かを捉えた。


 数あるうちの一本の足だった。


「ッ」


 やばい、直撃コース――。


 俺は腕を立ててかろうじてガードの構えを取る。


 ガゴンッッッッ!


 ドラゴンスレイヤーの籠手は伊達じゃないらしい。

 クイーンの不意を打った蹴りをガードした。


 たぶん【重装兵】くらいなら衝撃で吹っ飛ばされていた。


「ハァッ!」


 俺に気を取られているうちに、エリーが背後を襲う。


「キゥゥゥ……!」


 変な唸り声をあげると、足元に紫の魔法陣が広がった。


「エリー! 魔法だ!」

「っ、鬱陶しいわね!」


 敵が放ったのは、シャドウエッジだった。

 ただ、発動までシャルの倍は速い。


 闇色の刃をエリーが回避する。


「『イッシンジョーのツゴー』!」


 シャルがクイーンにむけて弾幕を張った。


 攻撃魔法で釘付けにする間、俺は一旦距離を取る。


「……」


 砂煙が舞って姿が見えなくなる。


「倒したの……?」


 エリーが言った瞬間だった。


 クイーンが砂煙から飛び出し、シャルへ迫る。

 そのとき、くるん、と前後を入れ替えた。


 また拳を握る。


「シャル!」


 身軽なエリーがとっさに反応した。

 だが、クイーンが口から『粘糸』を吐き出す。


 それを足に食らったエリーが、身動きがとれなくなった。


「またこの糸!」


 今はエリーよりシャルだ。


「『ブラッディ・サークル』」


 シャルが撃った魔法は、自分の足下だった。

 地面から鋭い棘が突き出す刹那、バックステップでその場から離れる。


 ザン、ザザンッ


 闇色の棘が接近してきたクイーンを貫いた。


「ギェェエッ! キェェェエエエ!」


 多少のダメージはあるが、致命傷には至らなかった。


「このおおお、足が全然動かない……!」


 敵が出した糸にも効くのか……?

 物は試しだ。


「『リフレッシュ』」


 エリーの足にスキルを使うと、普通に動かせるようになった。

 拘束状態、っていう異常状態という扱いみたいだ。


「なんなの、あいつ……!」


 今度は、俺とエリーにむかって敵が『ブラッディ・サークル』を放つ。


 どんな魔法なのかよく知っているおかげで、回避に苦労はしなかった。


 あ、わかった。

 格闘術を使うときと、魔法を使うときで役割分担があるな?


 格闘術は前面。魔法を使うときは後面。

 でないと、後面が格闘なら自分の体が邪魔になる。


「シャル、エリー! 前の顔が格闘担当で、後ろが魔法担当だ!」


 そうだとわかっても、足が速いし細かく動ける敵だ。


 足を止めさせるには、あれしかない――!


「エリー、合わせろよ!」

「わかった!」


 シャルは援護を、と言おうとして、お利口さんのウチの子は、魔法攻撃で敵の動きを牽制しはじめた。

 ナイス、シャル。


 そのわずかな隙をついた。

 まずは、脚を止めて確実に殺る――!


「『シールドラッシュ』」


 盾の打撃攻撃を放つ。体がでかい分、当てるのは簡単だった。


「ギォォォォォオ!?」


 ダメージは全然だが、スタン状態に入った。


 シャルが攻撃魔法の詠唱をはじめた。

 無防備なクイーンに、エリーが刺突をお見舞いする。


「ハァァァアッ! 『三連牙』!」


 覚えたてのスキルを使っているようで、剣速が前と見違えた。


 ザザザッ!


「ギァァァァッ!?」


 ダメージはやっぱり全然だが、効果はきっちり発動した。

 どぉうん、とクイーンの体が真横に倒れダウンした。


 俺とエリーが距離を取った。

 シャルの攻撃発動準備が完了した。魔法陣から魔力風が吹き上げ、髪の毛を逆立てていく。


「『ブースト ブラッディ・サークル』!」


 今シャルが放てる最大威力の魔法を放つ。


 倒れたクイーンを鋭利な棘が一斉に貫く。


「ギェェェェェェェェェェ……ッ」


 前面の顔でクイーンが絶叫する。だが、後ろの顔はどうってことなさそうだった。


 キイイン、と敵が魔法陣を展開させる。


「え――!? 倒したんじゃないの!?」

「あううう、なんでー!?」


 全然効いてない……?

 格闘側のクイーンは瀕死に近いように見える。


 あ。

 そうか。

 俺とエリーが攻撃してたのは、ずっと前面のほうだ。

 こいつら、物理攻撃と魔法攻撃が得意なんじゃなくて、それぞれの攻撃と防御が得意なんだ。


 防御が得意というか、耐性があるっていったほうが正しいか。


 俺とエリーの攻撃のダメージが入らないわけだ。


 ざざざざ、と素早く動きながら、クイーンが魔法発動までの時間を稼ごうとする。


「私が行くわ!」


 一気に間合いを詰めようとエリーが疾走する。

 距離を保とうと、クイーンがエリーから離れようとする。

 やっぱりそうだ。

 嫌がっているのがわかる。


 もう一度、俺は『挑発』を使う。

 ほんの二秒ほど俺に気を取られたクイーン。


 そのわずかな時間で、エリーが間合いにクイーンを捉えた。


「これでええええええ! 『三連牙』ァァァァアア!」


 ザザザンッ!


 刺突はすべて突き刺さった。


「ギァァァァァァァァァァ!?」


 再びスキル最大の効果が発動。

 どおん、と真横に倒れたクイーン。


 俺も一気に距離を詰める。


「ギ……!」


 ようやく起き上がったときには、俺はクイーンの背に乗り、顔面を覆うように盾を構えていた。


 スキル発動――!


『大盾の怒り』


 おまえがさっき殴りまくったその衝撃だ。


 ――――――――ッッッッッッ。


 空間の空気をすべて吹き飛ばすほどの衝撃波だった。

 ニンゲンの体に似た上半身がちぎれて飛んでいく。


「ぎえっ」


 短い悲鳴をあげて、クイーンは壁に叩きつけられた。

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