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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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中級職とパーティランク6


 中級ダンジョンといっても、中の様子は初級ダンジョンとそんなに大きく変わらなかった。


「ここも最深部に泉があるんだけど……まあ、そこまで辿り着けないようじゃ、まだまだ中級職になるには早い、ってことよね」


 得意そうに中級職の【ソードマスター】様は先輩風を吹かせまくる。


 呼びやすいからダンジョンと言っているけど、ジョブチェンジにまったく関係ないダンジョンも多数存在しているという。


 中の様子は似たようなものだけど、広さが違う。

 行けども行けども、階下へ進むための階段が見えない。


「威力を上げるほうを重視したけど……元の杖は持っておいたほうがよかったかもな」


 あれはあれで、使い勝手のいい武器だった。


「ううん。だいじょうぶ。魔力切れにはならないから」


 と、ちびっ子魔法使いは、自信をのぞかせる。

 ちなみに、イバたんはいない。

 薄暗いところが怖いらしい。


『グルールー♪(親分、オレここで待ってますね♪)』


 ってさっき入口で言っていた。

 おい、って声を掛けたら飛んでいった。


 あのメス……!


 最近の竜種はあんなやつばっかなのか? 嘆かわしい。

 何が暗い所怖い、だ。まったく。

 ま、けどついてこないで正解だったかもしれない。

 天井は高くないし、道幅は狭い。巨漢のイバたんがいたら邪魔だったかもしれん。


 他の冒険者はいない。

 エリーが道を覚えていてくれたおかげで、長い距離を歩いたが、とくに迷うことなく階下に続く階段を見つけた。


 ぎゅ、とシャルが俺の手を握った。


「おとーさん……こわい」

「なんだ、シャルもか」


 完全な暗闇じゃないのは、俺たちの魔力に反応して、等間隔に置いてある特殊な松明が灯るからだ。そこを通り過ぎると暗くなる。


「お父さんがいるから大丈夫だぞ」


 ぷるぷる、とそうじゃないと言いたげにシャルは首を振って、先を歩くエリーを見る。


 そういや、さっきから何もしゃべらないな。

 黙ったまま歩いて、奥へ奥へ行こうとする。


「エリー、あとどれくらいかかりそうだ? そろそろ一回休憩を」

「もうすこしよ、もうすこし」


 シャルが人見知りするときみたいに、俺の足にしがみついて後ろに隠れた。


 あれ? ……違うぞ。いつだ。いつの間に――?


 俺は足を止めた。前を歩くエリーは、「どうしたの?」と立ち止まって訊いた。


「……おまえ、エリーじゃねえな?」

「何を言っているの? 早く行きましょう。もうすぐそこなんだから――」


 竜牙刃を抜くと、盾の形状に変化した。


「魔力が違うんだよ。ニンゲンのモノじゃない」

「そんな繊細な違いなんてわからないでしょ」


 おかしい、と気づくまでに時間はかかったけど、ちょっと集中すればわかるんだな、これが。


 俺が盾を構えて突進する。


「ッチ!」


 大きな舌打ちをした「エリー」。

 足がうぞうぞと腰のあたりから生えはじめ、背が低くなった。

 上半身はニンゲン。下半身は昆虫……いや、蜘蛛のそれだ。


――――――――――

種族:怪蜘蛛族 アラクネ(闇)

Lv:39

スキル:ドレイン・変身・粘糸・毒牙

夜目(暗がりでの回避、命中上昇)

――――――――――


「あとすこしのところで――ッ!」


 目の色がレモンのような黄色に変わり、口の中から牙が二本伸びた。


「おまえ、変身ヘタクソだな。本物はそんなにおっぱい大きくねえんだよ」

「貴様たちも餌にしてくれるッ」


 ぷくっと頬を膨らませたアラクネが、糸を吐き出す。


【粘糸】ってのはあれか。

 魔物だろうがニセモノだろうが、蜘蛛は蜘蛛。

 糸を避けることなく、盾でガードする。


「バカめッ! この糸で繭のようにして毒を送り込んでじわじわと吸い尽くしてやる!」


 指先からも糸は出せるらしく、俺をどんどん包もうとしてくる。

 結構丈夫そうな糸だ。


「キャーハハハハッ! このまま何もできないまま死んでいけッ」


 手にしている竜牙刃が形状を変える。

 小さな短剣になり、俺はそれで周囲の糸を切り刻む。


「っ」

「こっち来いよ!」


 糸を全部束ねて、俺は思いきり糸を引っ張った。

 俺との綱引きに負けたアラクネは、何本もの足を地面から離し、こっちへ飛んできた。


 不意の接近に焦るアラクネ。

 自分で糸を切り離そうとするが、もう遅い。


「……この!」


 諦めて、俺に噛みつこうと牙をむいた。


 その顔面に籠手で覆った拳を叩きこむ。


 やっぱり、竜を素材にしているだけあって、俺との親和性は抜群。

 その一撃には俺の魔力が付加されていた。


 ボンッ


 顔面どころか、首元から上が吹っ飛んだ。


 水中のパンチはここまでの威力はなかったけど、地上で撃つとこうなるらしい。


 お互い属性は得意でもあり苦手でもあるから、属性関係の効果はプラマイゼロだ。


 ピクリともしなくなったアラクネの死体をじーっと見る。


 ふにふに、と胸を揉む。


「やっぱり、変身ヘタクソだな」


 どう考えてもこいつのほうが大きい。

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