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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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中級職とパーティランク3


 ワイバーンが求愛行動を取るってなると、時期的にはもうすぐで産卵の時期に入る。

 グリフォンを襲っていたのは、その産卵に備えて滋養強壮の意味もあったんだろう。


「グルウ……(親分……)」


 だいたい、なんで俺が親分なんだよ。

 心なしか、目がうっとりとしている。

 発情メス竜が、ベロンと俺の顔を舐めた。


 唾液でぬちょっとなった。


「おとーさんばっかり、ズルぃいいいいい!」

「グル? (お父さん?)」


 シャルが、駄々こねモードに入ってじたばたするので、抱っこしてイバたんの背中にのせてやった。


「グル、グルウ(親分の娘ということは、お嬢ですね)」

「イバたん、飛んで!」


 ぺしぺし、とシャルが背中を叩く。


「危ないからお父さんと一緒じゃないと飛ばないの」

「むううう、ケチー!」


 餌売りの老人が小屋から出てきた。


「冒険者くん、ありがとー! たぶん、そいつだよ! そいつがいなくなれば、グリフォンもまたここに戻ってくるはずだ!」

「やっぱり、イバたんがグリフォン狩りの犯人だったのか」

「グウ、グウ!(グリフォンなんて、敵ではありません!)」

「褒めてるわけじゃねえんだよ」


 俺がどうしてイバたんとしゃべられるのか、不思議でならないエリーはずっと首をかしげていた。


「毎回毎回、あなたには驚かされるわ」


 イバたんの背中は馬よりも大きく、大人二人と子供一人が乗る分には苦労しないで済みそうだった。


 シャルを俺の前、エリーが俺の後ろにくっつき、イバたんに飛んでもらう。


「このまま東にまっすぐ飛んでちょうだい」

「だってよ、イバたん」

「グウウ、ルウウウ!(了解です、親分!)」


 高速というわけでもなく、のんびりバッサバッサ、とイバたんは飛んでくれる。

 綱もなけりゃ鞍もない。

 本気で飛行したら、俺たちは風圧で後ろに吹っ飛んでるだろう。


「ヨルさんとシャルは、中級職は何にするか決めた?」

「そもそも、何があるか知らん」

「しらなーい」

「だと思ったわ……」


 はあ、と呆れたようにエリーはため息をつく。


「中級職のスタートジョブ……まあ、面倒だから中級職1としましょう。私もその中級職1なのだけど、前衛攻撃特化の【ソードマスター】になったのは、私がずっと前衛で物理攻撃をメインとする職業、【戦士】を取って、初級職2も前衛の攻撃職で……」


「なあ、その話、長くなる?」


 説明が長そうだと察したシャルは、さっそくお眠モードで俺のほうをむいて、ぎゅっとしがみついてきた。


「戦闘中の集中力はすごいのに……どうしてこれくらい聞いてられないのよ」

「細かいんだよな。この職業ってやつ」

「そうだとしても、普通の人は、必死に耳を傾けるもんなのよ?」


 というわけで、あれこれとエリーが説明してくれた。

 それまで、どの職業を通ってきたかで、次になれる職業も変わるそうだ。

 エリーは、ずっと前衛攻撃職だけを取っていたから、進路の幅もすくなく【ソードマスター】とあとひとつだけだったらしい。

 それが嫌なら、もう一回初級職で違う職業をするといいみたいだ。


 ま、時間に余裕ができたらやってもいいかもな。

 今は面倒だからしないけど。


 俺もシャルも、ずっとパーティ内での役割に特化する職業しかとってないから、エリーと似たような選択肢の数になるんだろう。


「前衛防御職にまた特化させるなら、中級職1は【守護騎士】になるはずよ。今が【アルケミスト】のシャルがまた同じように特化させたいなら【ダークメイジ】」


 前回、【騎士】から【重装兵】に職業を変えたとき、自然と防御力が上がった。

 今回も同様に能力が向上するんだろう。


「これで、職業のランクはエリーと同じになるのか」

「私が遅いように見えるかもしれないけど、ヨルさんとシャルが早すぎるだけなのよ?」


 Dランクというのは、それほど難しくないが、中級職になるための功績が結構膨大らしい。

 エリーが言うには、クエストをこなす功績の他にも、冒険者ギルドへの貢献度も大切になってくるそうだ。


 職業についてエリーから授業を受けていると、いつの間にかぐんぐんスピードが落ちていった。


「おい、イバたん? 大丈夫か」

「グ……ルウ……(お腹、お腹痛い……)」

「イバたん、どうかしたの?」

「なんか、腹痛いんだって」


 変なモンでも食ったに違いない。

 適当なところに着地すると、イバたんの顔色が悪くなっているのがわかる。


「ルウ……ルウ……(卵……卵が……)」


 いつの間に。

 イバたんは、実は妊娠していたらしい。


「グウ……(親分の子……)」



 待て。



 いつだ。

 いつ、俺が何をした。


「ねえ、ヨルさん、イバたんどうしたの?」

「いや、なんか、その……卵を産むらしい」

「えっ? が、頑張ってイバたん!」


 うるうる、とした目で俺を見つめてくるイバたん。


「グル……グルウ……(今、親分との卵を……)」


 俺の子はシャルだけで十分なんだが。

 俺とエリーの話を聞いていたシャルも、声援を送っていた。


「イバたん、がんばってぇ!」

「ウウウウウウウウ……!」


 唸ったイバたんが、ぽこん、と腹の下あたりから卵を産んだ。


「おとーさん、産まれたっ! たまごっ! ほら、イバたん、すごいっ」


 ぐすん、とエリーが泣いていた。


「私、感動した……」


 なんでだよ。どこにだよ。


 俺がイバたんと交尾する時間なんてあるわけもない。

 ていうか、イバたんを見つけてからまだ二時間くらいだ。


 これが、生命の神秘ってやつか……?


 イバたん――まさか……想像か。


 もしかしたら私妊娠してるかもっ☆ みたいなことを強く思うと、実際に本物と同じ現象が起きるという、あの、あれか。


 イバたん、想像妊娠しやがったのか。

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