表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/76

中級職とパーティランク2


 やってきたのは、ドストエフの街から東にだいたい三時間くらいの名もない高原。


 ボロの小屋に餌を売っている老人がいたので、いくつか餌を買った。


 手の平サイズの肉団子。たぶん、魔物とか他の動物の肉だろう。


「これをグリちゃんに、なげればいいのー?」

「ああ、そうだとも」


 シャルの疑問に老人が答えてくれた。


「ただ、買ってもらってから言うのもアレなんだけどよぅ……」

「はい? どうかしました?」


 老人は頭をボリボリとかく。


「いやぁ、ちょっと前までは飛んできては、そこいらの魔物を食ってたんだけども、最近、そのグリフォンを狙う魔物がいてねえ……そいつを警戒して、グリフォンが姿を見せねえんだ」

「それは困ったわね……けど、グリフォンを狙うって……結構な魔物じゃ……?」


 子供だとしてもグリフォンの図体は結構大きい。

 人懐っこい性格をしているが、敵意を持てば、初心者の冒険者が束になっても相手にならない。


 ゴァァァァァァオオオオオ!


 この鳴き声……?

 聞き覚えがあるぞ。


「あいつだよ……」


 老人が店から顔を出して空を指差した。


 そこには、翼竜の一種、ワイバーンがいた。


 バッサバッサ、と翼をはためかせて、地上を見ながら旋回している。


「あいつのせいで、グリフォンどころか冒険者も来やしない。あんた方が二週間ぶりの客なんだよ」


「ゴァァァァオオオ!」


 竜種のワイバーンがグリフォンを狙っているんなら、そりゃグリフォンはここに来ないし、それ目当ての冒険者も来ない。中級職になろうっていう冒険者が、ワイバーンに勝てるかどうかも怪しい。


 人間として生活してから数年、同族を見かけたのはあいつがはじめてだ。


「グリフォンじゃなくて、あいつを捕まえよう」

「そんな簡単に言わないで……ワイバーンを何だと思ってるのよ。捕まえるのは、倒すより難しいのよ? グリフォンは人懐っこい性格だから、色々と言うことを聞かせやすいのであって……」


 ああだこうだ、と言うエリーを無視して、俺は小屋を出てワイバーンに手を振った。


「おおーい!」


 バッサバッサ、と旋回をやめたワイバーンがこっちへ急降下してくる。

 人間サイズからすると、ワイバーンってやっぱりでかいな。


――――――――――

種族:翼竜 ワイバーン(風)

Lv:36

スキル:噛みつき・対地優勢

――――――――――


 スキルはふたつっきりか。

 まだまだだなー。


「ゴォォォアアア!」


 前後の足には鋭い爪。翼竜の一種だけあって胴はそれほど太くない。大きな翼をはためかせて浮遊していると、強風が起きる。


「よお! ちょっとお願い聞いてほしいんだけど、いいか?」


「ゴォォア!」


 大口を開けて噛みつこうとするワイバーン。


「人の話は最後まで聞きましょう!」


 竜牙刃を鞘ごと抜いてフルスイング。

 めきょっ、とワイバーンの顔面に鞘がめり込んだ。


「ゴアア!?」


 鞘を振り抜くと、錐もみしながら飛んでいった。


「あ、『人の話』じゃわかんねえのか……」


 ぶっ飛んだワイバーンが、俺のほうを見ると、怯えたような顔をするのがわかった。


 む。いかん。あれじゃ俺の言うことを聞いてくれない。


 買ったばかりの肉団子をぽい、と投げる。


「……ゴル?」


 においを嗅いで、ぱくんと食べた。


「おお、やった! 食べた!」


 バサバサ、と動かしていた翼を畳んで、ワイバーンが地に伏せる。

 首を差し出すように伸ばして、喉のあたりもきちんと地面につけた。


 あれは……竜種特有の……。


「おとーさん、ずるいっ! わたしも、わたしもやるぅーっ!」


 ててて、とやってきたシャルに、肉団子をひとつわたす。


「えいっ」


 ワイバーンにむかって投げると、上手に口でキャッチした。


「すごぉーい! 口で! おとーさん! 口でとっちゃった!」


 大興奮のシャルだった。


「ゴルウ……」


 心なしか、さっきまで鋭かった眼光が柔らかくなっている。

 やっぱり。

 さっきのは心から服従する、っていう仕草だ。


「ゴルウ!(親分!)』


 何言っているか聞こえた!!

 たぶん、魔力が自分に近いと気づいたんだろう。

 俺の中身が何なのかわかったらしい。


 近づいていき、頭を撫でる。


「グルル……」

「お願いを聞いてほしいんだ。島に行きたい。おまえの背中を貸してくれ」

「グルっ(了解ですっ)」


 おぉ……俺の言っていることを理解できるとは。

 さすが竜種。

 そこらへんの種族とは頭の出来が違う。


「わたしも、わたしもっ、イバたんの頭、なでたいっ」


 ワイバーンは、シャルによって『イバたん』と命名された。

 ワイバーンの『イバ』を取ったものだと予想。


「いいこ、いいこ……」

「グルル……」


「ね、ねえ!? なんで!? どうやって手懐けたの!?」


 エリーが恐る恐る近づいてきた。


「心を通わせれば、種族なんて関係ないんだよ」

「何カッコつけてんのよ」

「グルゥ……(親分……)」


 イバたんは俺の体に頭をグリグリと押しつけてくる。

 頭の上にあるトサカの具合からして、イバたんはメスだ。


「ずいぶん懐いたわね。竜種が人間に懐くなんて、私はじめて見た……」


 感心しながら、エリーはイバたんの翼やウロコを触っていた。


 懐かれるのはいいけど、この「グリグリ」は、ワイバーンの求愛行動なんだよなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作 好評連載中! ↓↓ こちらも応援いただけると嬉しいです!

https://ncode.syosetu.com/n2551ik/
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ