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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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マンドラゴの森1

 魔石の欠片を手にした俺は、シャルとエリーを伴って、武器屋へむかった。


「魔石の欠片で武器の改造なんてできるのかしら?」


 エリーがそう言って、自分の剣をすりすり、と撫でている。


「これで、武器が強くなるの?」


 シャル目を輝かせながら言う。


「どう改造して強くするかは、オッサンに訊いてみような?」

「うんっ」


 扉を開けて、中へ入る。


「よお、おそろいで。今日はどうした?」


 こほん、とエリーが咳払いすると、シャルと同時に言った。


「私の剣を魔石で改造しに来たの」

「わたしの杖を魔石で改造しにきたの」


 エリーとシャルの目が合う。


「お? そんなに魔石を持ってるのか? どっちも見てやろう。来な」


 ゴルドーが手招きするが、俺たちは入口に固まったまま。


「おとーさん、エリーの剣を改造するの……?」

「あ、あれ、私、何か勘違いして……?」


 そういうや、エリー……俺の魔石欲しがってて、あげるって約束したっけ……。


「シャルを優先してあげて。私はその……チチャリート家のクエストでは、何もしていないし……」


 しょぼーん、とへこんでしまったエリー。


「おとーさん、エリーかわいそう……」


 なんて優しい子なのか。

 いっぱいなでなでしてやろう。


 シャルの攻撃の出力を上げるためには、今の杖をバージョンアップさせる必要がある。


 俺とエリーはどちらも前衛タイプ。

 バランスを考えると、後衛の火力強化のほうが今は大事だ。


「エリー、すまん。次は必ず、絶対! だから……」

「ううん、いいのよ。……どうせ私なんて……神童シャルを護衛するだけの剣士だもの……」


 いつもの自信もどこかへ吹っ飛んだエリーが、本気でへこんでしまった。


「おい、ヨル、エリザちゃん泣かしてんじゃねえよ」

「うるせえよ、まだ泣いてねえだろ」


 エリーが店内で他の武器を見ている間、俺とシャルは、ゴルドーに改造の相談をした。


「で、オレが言った通り魔石を持ってきた、と」


 欠片を渡すと、光りにかざしてあれこれと調べるゴルドー。


「純度はまずまず……だが、三分の一か……」


 つぶやきながら、ゴルドーはメモに簡単なプランを書いてくれた。


 ひとつは、物理的な攻撃力が上がるタイプの杖。迫った敵を物理で撃退できるように、という配慮らしい。


 もうひとつは、敏捷性が上がる仕様の杖。こちらは、後衛の動きの鈍さをカバーして、生存率を上げるというのが目的。


 最後のひとつは、敏捷性と物理防御力が下がり、魔力制御も難しくなるが、その分魔法の威力が上がるタイプのもの。後衛攻撃職の長所特化型の杖だ。


「シャル、どれがいい?」


 抱き上げて、シャルにメモを見てもらう。


 俺は二番目かなぁ。出力を上げるのが目的だったけど、生存率を上げるというのを掲示されると、子を思う親としてはどうしてもそっちを重視してしまう。


「可愛くなるのは、どれ、ですか……?」


 性能とかどうでもよかったらしい。


「どれも、クール&スタイリッシュになるぞ、シャルちゃん」


 よかれと思っているゴルドーが、にかっと笑う。

 きょとんとしたシャルが、もう一回訊いた。


「可愛くは」

「ならない」


 ががーん、とシャルがショックを受けた。


 今度は唇を尖らせて、ちょっと拗ねたように指差した。


「………………じゃあ、みっつめ」

「よし、魔法の攻撃力を上げるタイプか。ずっしりするから、杖を使って物理的な防御をしたり、攻撃を回避したり移動する敏捷性は落ちるが、それでもいいかい?」


 改めてそう言われると、物理防御力も敏捷性が今よりも落ちるのは、ちょっと心配。


「はい」

「ようし、わかった」


 まあいい。

 シャルがそうしたいのなら、俺が守るだけだ。


 ああ、そうかぁ……とゴルドーが渋い顔をした。


「いつもは在庫がある素材なんだが、ちょっと切れちまっててな……。冒険者ギルドにその素材を持って来てくれるように依頼していおたんだが、これがまだ届かないんだ」


「なんていう素材? 俺たちが採ってくるよ」


「行き違いになる可能性もあるから何とも言えないんだが……『マンドラゴの魔根』ってやつだ。このドストエフの街からそう遠くない森で採れるそうだ」


 話を聞いていたエリーが入ってきた。


「『マンドラゴの魔根』だったら、そんなに時間はかからないはずよ? ゴルドーさん、依頼をしたのはいつ頃?」


「一週間前。受けたのは、Cランクのパーティだっていう話だが、冒険者ギルドからまだ報告が来ないんだ」


「Cランクパーティなら問題はないと思うけれど……何か想定外のことが起きて手間取っているのかもしれないわ」

「事故ってるんだったら、助けてやらないと」


 そうね、とエリー。


「わかった。そういうことなら、すまねえが、素材の採取と、その依頼を受けたパーティの様子がわかれば、それも頼む。報酬はそうだな、この杖の改造費をタダってことでどうだ?」


「ああ、それでいい」


 魔石を使った改造ってのは、割とお高いらしい。ゴルドーがメモをしたプランの横に、改造費の見積もりがあったが、ゼロが五つあった。その分、性能はいいんだろう。


 俺たちはゴルドーの店を出ていき、雑貨屋で回復アイテムを買い、市場で水と食料を準備した。


「『マンドラゴの魔根』……マンドラゴという魔物の根のことなのだけど、そのマンドラゴがいる森が、ドストエフの東門を出てしばらく行った森よ。そう遠くないわ」


 ここを拠点に冒険活動をしていただけあって、エリーは詳しい。

 二頭馬を借り、東門を出た俺たちは、一時間ほどでその森へ到着した。


 小高い山が奥にあり、その麓の森にそのマンドラゴがいるそうだ。


「俺たちのパーティランクってどれくらいなんだ?」

「そうね……実力でいえばBランクを超えていると思うけれど……冒険ランクの平均がパーティランクになるの」

「わたしと、おとーさんは、Eランク。エリーがB」

「そう。だから、D+がいいところかしら」


 パーティ専用のクエストを受けたいがために、寄せ集めのパーティを作ることだってある。

 そんなパーティの連携が上手くいくわけもないし、だからあくまでもパーティランクは目安なのだとエリーは教えてくれた。


「冒険者ギルドでは簡単なクエストばかり受けているから、ランクが上がってないけど、実力的にヨルさんはAランク。シャルは……Bくらいかしら」

「エリーと一緒?」

「そう、私と一緒よ」


 評価が嬉しかったらしいシャルは、むふー、と鼻を鳴らした。


 そのマンドラゴという魔物を探して、俺たちは森を奥へと進んでいく。


 こしこし、とシャルが目をこする。


「~~、~~~、~~~~~~」


 何かの声がする。飛んでくる音波が魔力を含んでいることに気づいた。


「この声――ヨルさん、シャル、耳を塞いで!」

「耳?」


 言うと、こてん、とシャルが倒れた。

 お眠の時間らしい。

 寝る子は育つっていうからな。ぐっすりとおやすみ。


「ふぁさあ、って毛布かけてる場合じゃないわよ! 魔物、魔物のせいだから!」


「何? そういえば、俺も眠くなってきた」


 離れたところに木の形をした魔物がいた。

 洞のような黒い空洞に黄色い目があり、俺たちを見ていた。


――――――――――

種族:魔樹族 ホーンテッド・ウッド(土)

Lv:32

スキル:フィジカルアップ

ロングレンジ(中長距離を攻撃するとき、命中力、攻撃力上昇)

ララバイ(対象を眠りにする)

森の一族(森の中では物理魔法防御上昇)

――――――――――


 あいつか。シャルを眠らせたのは。


「来るわよ!」


 足下から気配がする。


 俺がステップを踏んで移動すると、俺のいた場所から太く鋭い木の根みたいなものが突き出た。


 それを皮切りに、木の根、蔓、葉っぱ。硬く鋭くなったそれらが俺たちを襲ってきた。


 俺は竜牙刃を抜いて、大盾を構える。


 すると……大盾のむこうが透けて見えた。


 なんだこれ。

 そうか。籠手の影響か。

 同じドラゴンの素材同士、共鳴しているのか、それとも俺が装備しているからか、それはわからないが、今までほぼゼロだった視界が一気に開けた。


 よくよく見ると、木の魔物が操っているのか、関係のない普通の木も俺たちへ敵意をむけていた。

 シャルを背負って、と。


 いつも通り、『挑発』で俺を囮にしよう。


「俺が引きつける! エリー、今のうちに――」

「きゃぁああああああ!?」


 悲鳴が上がると、後ろからの攻撃に気づかなかったエリーが、蔓に足を掴まれ、逆さ状態で吊るされていた。


「くっ、このッ――」


 蔓を攻撃しようとするエリーの剣を、細長い枝が叩き落とした。


「エリー!」

「私は大丈夫! ヨルさんはあの敵を」

「パンツ見えてるぞ!」

「見ないでええええええええええええええええええ! いいからさっさと倒しなさいよぉおおおおおおおおおおおお!」


 教えてあげたのに。

 顔を赤くして何をそんなに怒ってるんだ。

 パンツは白のくせに。


 シャルをおんぶしたまま、俺は大盾で攻撃をガードしていく。

 前が見えるってのすごい便利だ。以前は顔をのぞかせないとダメだったのに。


「ボウ、ボウウウッ!」


 地中から、右から、左から、と蔓や枝で攻撃してくる。

 だが、完全に見えている俺には脅威にはなりえなかった。


『――、――、――~~』


 竜牙刃と籠手が何か反応した……?


 ホーンテッド・ウッドに接近すると、大盾が変形した。


 装備が俺の魔力を喰っている――。

 今までは、取るに足らない量を消費しているとは思っていたが、この感じは明らかにそうだ。


 大盾は、籠手と一体型の剣へ姿を変えた。


 いつかのゴーレムを倒したときのように、剣から緑色の魔力があふれてきた。

 俺とはまったく別の属性の風属性だ。


 俺をまた攻撃してきたホーンテッド・ウッドの蔓を剣で叩き斬る。


「ボォオウッ!?」


「お眠の時間だ」


 上段に構えた風属性の剣を俺は一気に振り下ろす。


「ボウウウウウウウウウウウウ――」


 断末魔の声を上げたホーンテッド・ウッドを一撃で両断した。

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