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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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獣闘祭6


 強化タイラントを撃破したあと。


 街から飛び去り、すぐに変身する。

 俺はヨル・ガンドの姿になり、大急ぎで街に戻った。


『想定外のハプニングと謎のドラゴンの登場で中断しておりました獣闘祭ですが、破られた結界の修復が完了しましたので、現時点をもって再開といたします!』


 ちょうどいいタイミングだったらしい。

 とはいえ、タイムリミットの夕暮れは近い。


 シャルを探しているうちに、獣闘祭は終了となった。


 運営委員の人たちが倒した魔物たちを片付けていき、街の至るところに張られた防御結界が解除された。


「おとーさぁぁぁぁぁぁあん!」


 トテトテ、とシャルが走ってくる。


「いぃぃぃっぱいたおしたよ!」


 じゃれて体当たりしてくる娘を抱っこする。


「偉いぞ、さすが俺の娘」

「えへへ~」


 なでなで、とすると、自分のほうから頭を俺の手にくっつけてきた。

 なでなでに飢えているらしい。

 なんなら、自分から頭を動かしてるまである。


 今は、獣闘祭の結果集計中。

『フライングアイ』で誰がどれだけ倒したのか数えるそうだ。


 街に人が増えていき、祭りらしく屋台の準備をする人たちもいた。


「ヨルさん、シャル、お疲れ様」


 エリーがやってきた。


「エリーも出ればよかったのに」

「私はいいわよ。前に何度か出てことあるし。それよりも、観戦してて楽しかったわよ? 観客のみんなが度肝を抜かれていく様を見るのは」


 思い出して、エリーはクスクスと笑っている。


「ヨルさんが【重装兵】で格闘家で【賢者】ってことになっているわ」


 実況と解説がああだこうだしゃべっていたのは聞こえていたが、よくわからんな。


『まず、不測の事態が起きてしまったことを運営一同よりお詫びいたします。――では、集計結果が出ましたので、発表していきます!」


 街中に響く声で、実況氏がランキングを読み上げていく。

 一〇位以上は、順位に応じて賞金がもらえるそうだ。


 どんどん順位が発表され、俺とシャルの二人が残った。


「数で言うならシャルが有利ね。コボルトを倒しまくって、小さく加点をしていっていたし。質ならヨルさん有利ってところかしら」


「どきどき……」


 小声でぼそっとシャルがつぶやく。緊張の面持ちだった。


『残るは二名です。第三位とポイントは倍近く開きました。――第二位七八〇ポイント――【アルケミスト】シャルロット・ガンド!』


 ううううううう~! とシャルが小型犬のように唸る。


「どうした?」


 (>_<)←こんな顔で俺をポコスコポコスコと叩きはじめた。


「おとーさんっ、ちょっとは手加減してぇええええ!」

「手加減したらしたで、文句言うくせに」

「うううううううう~!」


 ポコポコ、と叩いているのはいいけど、ときどき良い具合にヒットしているからそろそろやめてほしい。


「シャルは悔しいのよ。昨日、一位になるって気合い入ってたもの」

「娘よ。父をそう簡単に超えられると思うでないぞ」

「うううううううう~!」


『では、続いて第一位の発表です。第一位、九九〇ポイント。我々運営の驚かせ続けた謎のお父さん! ヨル・ガンド!』


 タイラントの配点が結構高く設定されていたようだ。


『ぶっちゃけ、参加者の冒険ランクを見て、ソロではまず倒せない敵だと運営では判断いたしました。その分配点を高くし、参加者同士で協力し倒したとき、改めて配点を割り振るというつもりだったのです』


 てことは、数人がかりで戦うっていうのが前提だったのか。


「シャルの全力に近い魔法攻撃より、ヨルさんの魔法? のほうが威力が高かったのよね……」


 結果的にそうなる。

 タイラントは、シャルの攻撃を受けて笑ってたからな。


 けど、エリーが釈然としてない様子。


「どうしたんだ」

「どうしたもこうしたも……シャルは後衛の魔法攻撃特化【アルケミスト】よ? ある程度魔法攻撃に補正がかかるの」

「へえ。知らんかった」

「知らんかった、じゃなくてあなたは聞いてないだけよ。カティア、説明してたもの」

「それで、何が納得いかないんだ?」

「たとえば、前回が後衛攻撃職で、現在前衛ってことになれば、魔法攻撃補正はなくなって、同じスキルを使っても魔法の威力はまったく違うの。逆もまた然り」


 シャルもよくわかってなさそうで、きゅるんと首をかしげている。


「全力の後衛攻撃職の魔法が効かない敵なのに、前衛の、それも防御特化職の魔法のほうが威力が高いなんて、おかしいじゃない」


 俺はエリーの肩をぽん、と叩いた。


「スキルに捉われるなって前言っただろう」


 細かく言えば、俺のアレはブレスだから俺だけの固有スキル。

 魔法とは違うんだ。


「……もう、あなたを常識で計ろうとするのは諦めるわ。【重装兵】で格闘家で【賢者】なんだもの」

「おとーさん、すごい……?」

「ええ。シャルのお父さんは、すごいわよ」

「ほほほぉぉぉ~」


 シャルが至近距離で尊敬の眼差しをむけてくる。

 お父さん照れるから、至近距離はやめてほしい。


 アナウンスでは、聞いていた通り、優勝した俺には賞金一〇〇万リンと副賞にドラゴンのウロコを素材とした籠手がもらえるそうだ。

 準優勝のシャルにも賞金五〇万リンがもらえるという。


「子供が持つには途方もない額だな……シャルの装備を新しくしたり、メンテするときの資金にしよう」

「お菓子は……」

「ちょっとならいいよ」

「わぁーいっ」


 ちなみに、最終的な俺のオッズは、ずいぶんと低くなったらしい。

 俺は八倍。シャルはもうちょっと低く、四倍だったという。


「シャルの倍率が低いのは、応援しているってのも込みだと思うわ。それにしても……ヨルさんがお昼まで力を隠してくれていたら……高額配当金だったのにぃ……!」


 うぎぎ、とエリーは悔しそうだった。

 俺に五万リンを賭けていたらしい。

 エリーのやつ、獣闘祭に出なかったのはこれが理由なんじゃ……?


 この獣闘祭の運営は冒険者ギルドとも提携しているそうなので、配当金や賞金や装備は冒険者ギルドで受け取るとのことだ。


 さっそく冒険者ギルドに行き、周りの羨望の視線を浴びながら受け取るものを受け取り、そそくさとあとにする。


「一日で三人合わせて一九〇万リンよ!」


 エリーが扇状に広げたお札を見てうっとりしている。


「おとーさん、エリーがへん」


 俺はシャルに目隠しをする。


「見ちゃダメ。これが金に目がくらんだニンゲンだ」


 お札を団扇のようにして仰ぎ、「いい風……」とエリーが表情をとろけさせていた。


「有り金全部ヨルさんに突っ込んでおけばよかったわ……」


 ぽこん、と俺はエリーの頭を叩いた。


「あ痛っ」

「目を覚ませ。エリー見ろ、この純粋な眼差しを……」


 じいっと純粋度一〇〇%の目で、シャルがエリーを不思議そうに見ている。


「シャル、み、見ないでっ。欲にまみれた私なんて、見ないでっ」


 正気に戻っていただけたようだ。

 一九〇万リンを取りあげ、そのうちの四〇万をエリーに返してあげた。


 冒険者の狩猟を見て楽しむのが獣闘祭の半分。もう半分は、普通のお祭りのように屋台で色んなものを食べて楽しむのだそうだ。


「何回も獣闘祭を楽しんできたこの私が、お祭りを案内してあげるわ! シャル、ついてらっしゃい!」

「おお、エリーが、やる気まんまんっ」


 ときどき友達みたいで、ときどきエリーはお姉ちゃんっぽくなるらしい。


「おとーさんも、おとーさんもっ」

「俺はいいって。騒がしいのは苦手なんだ」

「今日の主役が何言ってるのよ。いいから、ヨルさんも行くわよ!」


 シャルとエリーに両側を固められた俺は、渋々祭りで賑わう大通りを歩く。


 シャルにちょっと多めの二〇〇〇リンを渡して、あれこれ買ってきてもらい、一緒に食べた。


 ベンチに座る俺の膝にちょこんとシャルが座り、こっちをふりむく。


「おとーさん、ふーふーしてあげるから、あーんしてあげる」

「自分で食べるからいいって」

「いいから、いいからー」


 お姉さんぶるシャルに、ふーふーしてもらったタコ焼きを口に押し込まれる。


「おいしい?」

「うん、うまいよ」


 むふー、と鼻を鳴らすシャルは嬉しそうだった。


 ……うん、娘との祭りも悪くない。

今回で獣闘祭編のエピソードは終わりです!

楽しんでいただけたのなら嬉しいです。



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