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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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獣闘祭5


 俺がシャルを探しながら走っていると、大きな雄叫びが聞こえた。


 Aランク指定のタイラントのものだろう。


 そっちのほうへむかう。


 実況と解説がやたらとシリアスな声で何かを叫んでいるのがわかった。


「ウルォラァアアアアアアアアアアアアッ!」


 凄まじい雄叫びの音波が、離れたここまで届いた。


 なんだろう、嫌な感じがする。

 さっき聞いた雄叫びとは重圧がまるで違う。


『想定外の事態です! 参加者はそのタイラントから離れ、一時退避してください。運営委員の鎮圧隊を出します――! 獣闘祭は一時中断! 参加者は一時退避してください!』


 なんだ、なんだ?

 穏やかじゃねえな。


 シャルはどこにいるんだ。


 別区画の広場にやってくると、タイラントとそれにやられたらしい冒険者が何人もいた。


――――――――――

種族:魔人族 強化タイラント(闇)

Lv:244

スキル:硬化・特級格闘術・回避の極意・八倍速・合体

――――――――――


 闇色をしたオーラのようなものを体にまとわせているタイラント。

 二階建ての家よりもデカイ。

 巨人と呼んで差し支えないほどだった。


「ウラァアアアアアアアッ!」

「「「ひぃいっ」」」


 雄叫びでまた数人の参加者が腰を抜かした。


 タイラントが異様に大きい左腕を家にむかって振るう。

 一瞬、虹色に光った防御結界だったが、バリバリッ、と音を立てて破れた。


 そのタイラントに討伐対象外のクロスケが飛びつき、溶けていくのが見えた。


 タイラントのスキルとさっきのクロスケの行動――。

 俺が握りつぶしたクロスケの他に何体いたのか知らないが、クロスケたちがタイラントに合体したんだ。


 クロスケの『合体』スキルは同族に限らないらしい。

 タイラントは同じ闇属性。

 だから親和性も高かったんだろう。


「参加者の冒険者たちは下がっててくれ!」

「ここは俺たちが」


 そう言って現れたのは、運営委員の鎮圧隊だった。


 大盾を持っている前衛職らしき男が四人。

 杖を持っている魔法使いらしき後衛職が六人。


 魔法使いらしき三人が攻撃魔法を詠唱。

 残りの三人が、弱体化魔法、麻痺を与える状態異常の魔法をそれぞれ唱えはじめた。


「ウラァアアオオウ!」


 強化タイラントが右腕を一振り。

 盾を粉々に砕かれ、四人が吹き飛んだ。


「ぐはッ」


 壁に叩きつけられ、気を失ったらしくがっくりと脱力。

 前衛はあっという間に壊滅した。


 今まさに魔法を放とうとした瞬間。

 自分の体以上の太い左腕が、後衛の魔法使いたちを直撃。


 暴風に舞う木の葉のように、人間一人一人が軽々と飛んでいった。


 敵のレベルは二四四。多少能力がある程度の冒険者が敵うわけがない。


「闇の精よ。闇の炎をこの手に! 『ダークフレイム』」


 聞き慣れた声がすると、狭い路地からシャルが魔法を放っていた。


「ウァオウ?」


 ぼふん、と直撃はしたものの、ダメージはなさそうだ。

 見つかったシャルが、路地の奥へ逃げる。

 またこっそり戻ってきては魔法攻撃をする。そしてまた逃げる――。


 ヒット&アウェイか。

 攻撃の効果は薄いが、時間は稼げる。


 俺がこのまま戦っても勝算は薄いだろう。不思議ソードがあれば何かしら最適な武器に変形してくれるのかもしれないが。


 俺は振り返って、俺をずっと映し続けていた魔道具『フライングアイ』を壊す。


 誰にも見られてないことを確認。


 シャルが頑張っている間に、俺は変身を解く。


 体が一気に大きくなり、翼と尻尾が生える。爪が伸び、ウロコが体中を覆う。


 久しぶりに俺は元のバハムートの姿に戻った。


「ギャォォォォォォオオオオオオウウウウウンンンンンンンンンン!」


 久しぶりの雄叫びは気持ちいい。

 小さいニンゲンの体に変身していたせいか、解放感がある。


「「「「ど、ドラゴンだ! 逃げろぉぉぉぉおおおおお!」」」」


 あ。いけね。

 これはこれで騒ぎになってる。


 シャルに気を取られていた強化タイラントが俺に気づいた。


「ウォ? オウ、ウォオオウ!(ドラゴン? その魔力……さっきの貴様が!)」

「ギャウウウ?(何を言っているのかさっぱりわからんが?)」

「ウオオオウウ、オオウウ、ラオオ!(オレたちの同胞を素手で潰しやがった! 許さねえ!)」


 仲間が俺に殺されたことに怒っているらしい。

 それでタイラントに合体して、復讐しようとしてるみたいだな。


「ドラゴンさんんんんん! がんばってねえええええええ!」

「ギャォウン!(任せなさい!)」


 娘の声援に俺は尻尾を振って応える。


「ウラァァァァァァア!(よそ見してんじゃねええ!)」


 動きが速くなった。スキルを使ったな?


 攻撃力が高そうな左腕を俺に振るってくる強化タイラント。


 ドゴンッッッッッッッ!


 爆音にも近い衝突音が響き渡る。


「ギャルウウ(よそ見してちゃ悪いのか)」


 世界最強(バハムート)のウロコを、そこらへんのドラゴンのウロコと一緒にするな。


 派手な音だけ立てたものの、俺へのダメージはゼロ。


 レベルだって俺のほうが、上も上。


――――――――――

種族:竜種 神竜バハムート(光)

Lv:347

スキル

アイアンクロウ・原初竜炎・変身・銀閃尾

――――――――――


「あのドラゴン、魔物と戦ってくれるのか……?」

「白いドラゴン、がんばれ!」

「白ドラゴン頑張れ!」


 弱い者イジメして粋がっていられる時間は終わりだ。


「ルォラァアアアアアアアアアッ!」


 叫び声を上げながら強化タイラントは得意の左腕で攻撃をしてくる。


 俺は『銀閃尾(シルバーエッジ)』を使う。

 その場でくるんと回転。


 一瞬、銀色の光りが瞬く。


 同時に、強化タイラントの顔面に尻尾を叩きつけた。

 尻尾での攻撃速度は世界最速だ。

 敵の攻撃に合わせて使うだけで、自然とカウンターが決まる。


 さすがに吹っ飛びはしなかったが、大きく体勢を崩した強化タイラント。

『硬化』のスキルのおかげだろう。

 続いて、回転した勢いを利用し、『アイアンクロウ』を発動。


 右、左、と振るった俺の爪が強化タイラントの体に深く刻まれる。


「ウァアアオオオオウ!?」


 これでラスト――。


 すっと息を吸い込む。


 ――塵と化せ!


「ギャォオオオオオオオオオウウウン!」


原初竜炎(オリジンファイア)』を放つ。


 黒銀の炎が放射状に強化タイラントに伸び、激しい爆音を轟かせた。


 爆煙があたりに立ち込める。


 股から上は消し飛び、塵になったらしい。

 二本の足だけが倒れ、大きな物音を立てた。


 さて。

 やることはやったし、お暇することにしよう。


 バッサバッサ、と翼をはためかせ、周囲にいるニンゲンたちに強風をお見舞いする。

 宙に浮くと俺はそのまま飛び去った。

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