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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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次の町へ!2


「ガンドさん、あれが例のキャラバン隊です」


 町の出入口で、こちらにやってくる幌馬車と荷馬車数台をカティアさんが指さした。


 荷馬車には、積み荷である麦を詰め込んだであろうズタ袋がいくつもあり、他にチーズなどの加工品もあった。


「ああ、あなたたちが同行する冒険者さん? 私はこのキャラバン隊の隊長、クロウドと申します」


「よろしくお願いします。俺はヨル・ガンド。で、こっちが同じく冒険者で、娘の……」


 ちら、とシャルを見ると、人見知りが発動しているらしく、俺に隠れていた。


「シャルロット、です……」

「おや。ずいぶんと可愛い冒険者さんだ」

「可愛いだけじゃないわよ? 結構強いんだから。私はエリザベート。よろしく」

「こちらこそ、どうぞよろしく。有事の際は、助けていただくことになると思いますが、そのときは手を貸していただければと思います」


 もちろんお礼はさせていただきますから、とクロウド。

 俺たちの運賃は要らないらしい。

 その代わりに何かあったときはヨロシクってことのようだ。

 そのときは謝礼を出すっていうんだから、それほど悪い話でもなかった。


 キャラバン隊が町の出口に揃う。

 荷馬車が六台。幌馬車が一台。

 荷馬車には積み荷が満載されているからキャラバン隊の人数はそれほど多くないが、移動するとなるとなかなか大変そうだ。


「護衛をすでに依頼されているのよね?」

「ええ。幌馬車の中に三人いらっしゃいますよ」


 三人……ということはたぶんパーティだろう。

 一週間近く一緒に移動するんだ。

 一大人として挨拶しておこう。


「こんにちはー」


 幌馬車の中をのぞくと、若い男が三人いた。


「「「げっ!? あのときのオッサン!?」」」


 男たちが三人とも顔をひきつらせた。


 誰かと思ったら、トクタミソウをカツアゲしようとしたニンゲンランクFの三人組だった。


 槍持ちの戦士風の短髪男。盾持ちの騎士風の金髪男。弓持ちの後衛の黒髪男だ。


「なんだ……護衛はあんたたちのことだったのか」


「な、なんだよ、や、やんのか……!?」


「やらねえよ。これから一緒に移動するんだ。仲良くやろう」


 手を差し出して、俺は三人と握手をした。


「あの、あんときは、すんませんっした……トクタミソウが見つかんなくて、イラついてたんス……」


 槍持ちを筆頭に、盾持ちも弓持ちも殊勝なことに謝ってきた。


「いいよ、もう。無事クエストも達成できたし」


 シャルはずっと隠れっぱなし。どうやら、かなり嫌っているらしい。


「何かあったときは、私たちの足を引っ張らないでくれるとありがたいわ」


 あのときの仕返しと言わんばかりのエリーの嫌みだった。


「くっ……! ……勉強させてもらいます……!」


 対して三人は、俺一人にボロボロにされているから、何も言い返せなかった。


 こうして、俺たちはカティアさんに見送られ、キャラバン隊とFランクガイズとともにレパントの町を出発した。


 隊長のクロウドの説明によると、街道を道なりに北上していきながら城塞都市ドストエフを目指すそうだ。


 説明された通りの道を、キャラバン隊はのんびりと進んでいく。

 道を確認するため、キャラバン隊の者が先に馬で進んで戻ってくることを何度も繰り返していた。


 Fランクガイズは、周辺警戒中。

 意外と真面目なところがあるらしい。


 俺も幌馬車からときどき頭を出して、見晴らしのいい平原を見た。

 こっちにむかってくる魔物や襲撃者がいれば、すぐにわかる。


 シャルはというと、色んな荷馬車をのぞいてはあれこれ観察をしていた。

 何か粗相をしないか心配だが、エリーがついているから大丈夫だろう。


「隊長、どうしましょう……」

「それは困ったな……」


 幌馬車の御者台に座っているクロウドが、部下の報告を聞いて眉を寄せていた。


「どうかしました?」

「実は……もう少し先に橋があるんですが、どうやら先日の雨のせいで流されてしまったようなんです。なので、迂回路を通るしかなくて……」

「迂回路?」

「はい。ゲイテ山を中心とした山間の旧道です」

「それ以外に橋はないんですか?」

「あるにはあるんですが、橋が小さく荷馬車が通れるほどの大きさがないんです」


 地図であれこれ説明してもらったところ、その旧道を通る以外に道はなさそうだった。


「旧道は、数年ほど前まで城塞都市ドストエフからレパント方面を繋ぐ道だったのですが、少々問題がありまして……」

「問題?」

「旧道一帯に魔物が巣を作ってしまったんです。討伐をしてもキリがないので、その地域を治める領主様が橋を架けてくださったのです」


「じゃあ、どうにかしてその旧道を切り抜けないと」

「ええ。冒険者ギルドのカティアさんからお話はうかがっております。ガンドさん、お力をお貸しいただけますか?」

「わかりました。俺たちパーティが先行して、旧道の様子を見てきます」

「ありがとうございます」


 シャルとエリーの二人にクロウドがもう一度説明し、道を教えてくれた。


「……そう、橋が落ちてしまったのね」

「というわけだ。行こう」


 キャラバン隊の護衛にFランクガイズを置いていくから、ひとまずは積み荷は大丈夫だろう。


 馬を二頭借りて、俺たちは前方に見える山へと馬を走らせる。


「ゲイテ山には、魔鳥型の魔物が多いから注意して」

「だってさ。シャルの出番だな」

「うんっ。まかせてっ」


 噂の旧道にはすぐ着いた。俺たちは馬を降りて道の安全を確認していく。

 山間の道はたしかに広いが、左右に斜面があり、いつ崖崩れが起きてもおかしくないような道だった。


「キィィィイイ! キィィィイイ!」


 岩の上に一羽の鳥がいた。


――――――――――

種族:魔鳥族 ゲイテホーク(風)

Lv:25

スキル:三連突き・対地優勢・回避の心得

――――――――――


 こいつが例の巣を作った魔物だろう。


 甲高い鳴き声をあげると、どこからともなく、斜面の岩陰や木陰、上空にも魔鳥たちが何羽も姿を現した。


 どいつもこいつも、翼を広げて一気にこっちへ滑空してくる。


「やるぞ! いつも通りだ」

「魔法で、どっかん!」

「シャルを守りながら隙を突いていくわ」


 竜牙刃を抜くと、親玉ウルフと戦ったときの大盾に変化した。

 心なしか、大盾が軽い。それに、変化するときに時間がかからなくなっている。

 成長したってことでいいのか。


『挑発』を発動。


 一斉に俺のほうへクチバシがむいた。

 翼を広げると、かなり大きく見えるゲイテホーク。

 全長で三メートルくらいはありそうだ。


「キィィィィ!」


 ガガッ、ガガガ、ガギン。


 全部で一〇羽以上。そのクチバシの攻撃を俺の大盾が防御していく。


「『イッシンジョーのツゴー』!」


 俺に気を取られたゲイテホークが、シャルの攻撃魔法で撃ち落とされていく。


「キィイイッ」


 バサバサ、とゲイテホークが標的を俺からシャルに変えた瞬間だった。


「『ファストエッジ』!」


 ザンッ、とエリーが剣技を浴びせた。得意属性とあって一撃ダウンだ。


「キキィ!」

「キイイ!」


 爪やクチバシの攻撃を大盾でしのいでいると、淡く大盾が光りはじめた。

 お返しだ。


『大盾の怒り』を発動。


「「キキッ!?」」


 ッッッッッ!


 衝撃波が一帯に広がり、身近にいた五羽を不可視の攻撃で撃墜。


「キイイイイイ――ッ」


 バサバサバサバサバサ、と焦って羽を動かす残りのゲイテホーク。


 逃げる気だ。


「――『ダークフレイム』!』


 ボフォオウ、とシャルが放った攻撃魔法をひらりとかわす。

 そのとき、大盾が光り、武器が細長い物体へと変形した。


 弧をゆるく描く弓と弦、それと矢に竜牙刃は姿を変えた。


「俺じゃなかったら使えないぞ、こんなの――」


『――。――すよ!』


 矢をつがえギリリ、と弦を引き絞る。


 逃げていく数羽いるゲイテホークの一羽に狙いを定めた。


 ガヒョンッ!


 放った矢は一瞬キラリと光り、一直線にゲイテホークへ飛んでいく。


 もうすぐ当たるだろうと思ったとき、矢が複数に分離し、残りのゲイテホークに次々に直撃した。


「「「「ギィィィィィイイ!?」」」」


 全羽撃墜できた。


「おとーさんの、一気にバババッってなって、鳥さんに当たったー!?」


 キラキラ、とシャルが尊敬の眼差しを俺にむけてくる。


 二〇羽のゲイテホークは回収しておき、あとで追いついてきたキャラバン隊のみんなと美味しくいただいた。

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