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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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解毒草の採取1


「カティアも言ってあげて。どうしてこの人、こんなクエストを受けようとするのよ」

「いいだろー、別に。迷惑かけるわけでもないだろう」


 俺とエリーは冒険者ギルドの受付カウンターで意見が真っ二つに割れた。


「ケンカは、やめてぇーっ」


 シャルが俺たちの間に割って入るが、エリーが止まらなかった。


「理解ができないわ。あなた、EランクどころかBランク以上の実力があるのに。シャルちゃんもそうよ。なのにどうして……」


「どうしてか? 教えてやる。俺は別に冒険者としての栄光とか名誉に興味ねえからだ」


「ケンカは、やめてぇーっ」


 カティアさんは、ふたつのクエスト票を前にして、「あはは……」と苦笑い。


 カティアさんに次の職業を取得したことを報告してから、一週間。

 俺たちはのんびりほどよい冒険ができるクエストを中心にこなしていた。


 で、今は受けるクエストの方向性でエリーと揉めていた。


 ひとつめのクエストは、薬草を採取するクエスト。

 Fランクのころに受けていたものと大きく違うのは、多少危険と言われる場所まで採取しにいかなくちゃいけないってところだ。


 もうひとつは、討伐クエスト。

 近隣の畑を荒らす魔物がいるらしく、その調査と討伐を兼ねているクエストだ。


 俺が選んだのは前者。

 エリーが選んだのは後者だった。


「じゃあ、エリーはそっちのクエスト受けたら? 俺とシャルはこっちの薬草採取するから」

「ケンカしないでぇーっ」

「何を言っているのよ。別々に行動してたらパーティの意味がないじゃない」

「ケンカしないでぇーっ」


 見かねたカティアさんが俺のフォローをしてくれた。


「エリザ、ガンドさんは、戦うクエストはあまり好きじゃないの」

「……だとしても強いじゃない、この人。何を心配しているのよ。カティア、あなただって知っているでしょう?」

「それはもちろん。担当者ですから」


 どやっ、とカティアさんが大きな胸を張った。


 Bランクのエリーからすれば、どちらもぬるいクエストかもしれないが、戦うってことが前提にある討伐系クエストは、シャルの安全のこともあるし、お父さん、許可できません。


 これ見よがしに、エリーが大きなため息をついてみせる。


「はあああ……わかったわよ。それじゃあ採取クエストにしましょ?」

「エリー、いいこ、いいこ……」


 椅子の上で膝を立てたシャルが、エリーの頭を撫でて上げた。


「ねえ、私もシャルって呼んでもいいかしら」

「うん」

「あ、あれ……エリザのことがエリー? シャルちゃん、私は? 私」


 カティアさんが自分を指差すと、シャルが首をかしげた。


「カティア先生です」

「あれぇ……エリザのそれよりも距離がある……」

「一緒に冒険をしている仲なんだから、仲良くなるのは当たり前じゃない」


 今度はエリーが得意げに胸を張った。カティアさんに比べてずいぶん慎ましいが。


「というわけで、こっちのクエストを三人前お願いします」


――――――――――――――――――

Eランク トクタミソウ採取

成功条件:レパント北東の森に生えているトクタミソウを一〇採取

報酬:五〇〇〇リン

――――――――――――――――――


 トクタミソウは、解毒作用のある薬草の一種だ。


「かしこまりました。今回のクエストは、解毒薬不足を解消するためのものですので、一〇個単位で持ち帰っていただければ、その分、報酬はお渡しします」

「わかりました」


 地図で森の場所を教えてもらっていると、


「あ! おじさぁーん!」


 聞き慣れた声に俺たちはそっちを見た。


「ああ。あのときのボーイズじゃないか」


 はじめて『決意の泉』行ったときに出会った三人が手を振っていた。

 声をかけてきたのは戦士少年だったけど、どこか精悍な顔つきになったような気がする。


 うんうん、若者は成長が早いなあ。


「おじさん、超強かったから、もうこの町にいないんだとばかり」

「俺はのんびりやりたいだけだからな。強敵を倒したいとか、財宝を見つけたいとか、そういうの、どうでもいいんだ」


 本心を言うと、


「「「おおおぉ~」」」


 と、ボーイズは感嘆の声を上げた。


「これが、オトナの余裕ってやつか」

「これで弱かったらダサいけどさ……強いからカッコいいんだよね」

「強いと、一周しちゃって、そういうのに興味なくなるんですね」


 戦士少年、僧侶少年、魔法使い少年がそれぞれ言って、うなずいた。


 よせよせ。おっさん照れちまうだろ。

 ニンゲンのクエストなんざ、バハムートは超余裕だからな。

 討伐クエストは、シャルがいるからダメだけど。


「『強い敵とか金とか、もう、オレそんなのに興味ないっていうか……』」


 戦士少年が、俺の真似をちょっとしながら(若干似ててカティアさんが笑っている)、コップか何かを傾ける仕草をする。


「「おおおおぉ~、似てるっ。激渋!」」


 と、僧侶少年と魔法使い少年が手を叩いて喜んでいた。


「あんなセリフをニッと笑って、お酒を呑みながら言われれば、恋しちゃうかもしれませんね」


 にこっと笑ったカティアさん。

 この巨乳ちゃんはいきなり何言い出すんだ。


「あ、あ、あ、あ、あなたたちっ、そ、そういう関係だったの?」


 あわあわ、とエリーが顔を赤らめ口をぱくぱくさせながら、俺とカティアさんを指差す。


「そういう関係って、どういうのだ?」

「ふし、ふし、ふしだらで不適切な関係ってことよ!」


 いやだから、具体的にどういう関係だよ。


「相変わらず、この手の話題には敏感に反応するのね、エリザは」

「う、うるさいわよっ」


 二人は相変わらず仲がよく、ずっと二人でじゃれ合っていた。


「おじさん、クエストを受けたの?」

「ああ。北東の森で解毒薬の元になる薬草探しだ」

「それなら――」


 背中のマジックボックスを床に置いた戦士少年。

 ごそごそ、と漁って、小さな瓶を三つ取りだした。


「これ、使ってよ。解毒剤」

「いやいやいや、受け取れねえよ」

「これ、今この町でも品薄状態で手に入りにくいんだ。もし何かあったときに役に立つから! おじさんが大丈夫でも、シャルロットちゃんがもし――」

「もらっておこう。ありがとう」


 もしシャルが毒に冒されたら……考えただけでぞっとする。


「悪いな。助かるよ。今度、メシでも奢らせてくれ」

「いいよ、そんなの。オレたち、おじさんがいなかったら今ごろあの隠し扉のむこうで死んでたんだから」

「気ぃつけろよ? いいやつは早死にするぜ?」

「じゃあ、おじさんが一番気をつけないとね」


 戦士少年は笑って、仲間と冒険者ギルドを出ていった。


「ヨルさんって意外と年下の子にも好かれているのね?」

「おとーさんカッコいいから、あこがれの、的」

「……ま、まあ……わからなくもないけれど……」

「……」

「な、何よ、シャル」

「顔、あかい」

「あ、赤くないわよっ」


 シャルとエリーは、精神年齢が近いのか、それとも何か波長が合うのか、なかなか上手くやれていた。


 ちょっと年は離れているが、シャルにも友達ができそうでよかった。


「じゃあ、行ってきます」


 軽くカティアさんに手を振って、背をむけた。


「行ってらっしゃいませ。また戻ってきたら、お食事、ご一緒させてくださいね」


 カティアさんのひと言に、冒険者ギルドにいた若い冒険者たちがザワついた。

 いつぞやの夜の一件で、すでに大量の嫉妬を買ってるんだ。

 もう勘弁してくれ。

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