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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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森の中での出会い4


「どこまで吹っ飛ばすのよ……」


 今では小さく見えてしまう盾ゴブリンを見つめて、エリーがぼそっと言った。


「ずいぶん遠くまで飛んだな?」


 あんなところまで飛ぶとは。


 あの岩がなかったらどこまで飛んでいったのか、すごく気になる。


 他の弓ゴブリンは、シャルが倒してくれていた。


「それよりも、その剣よ。……ていうか剣でいいの?」

「一応、剣でいいと思う」

「属性物理攻撃ができる魔法剣の類いだと思ったら、もはや剣じゃないじゃない!」


 目を吊り上げたエリーが、ビシッと俺が手にしているハンマー型の竜牙刃を指差した。


「まったくもって同感だ」

「持ち主がどうして他人事なのよっ」


 しばらくすると、ハンマーが光り元の古い剣に戻った。


「さっきのハンマー……どこかで見たような気がするのよね……」

「気のせいだろ」


 エリーのクエストはゴブリン討伐のため、その証拠として、俺たちは倒したゴブリンの耳先をカットして集めていく。片耳だけ体色と少し違うので、そちらを集めるそうだ。


 シャルにできるのだろうか、と俺がそわそわしながら見守っていると、ちゃんとできていた。


「おとーさん、これでいい?」

「うん。ありがとう」


 頭を撫でると、シャルは気持ちよさそうに目を細めた。


 川辺で少し休憩をすることにして、そこでマジックボックスに入れていたパンとジャムを取りだし、三人で食べることにした。


「これくらい、恵んでもらわなくても別にいいのだけど」

「じゃあ食うなよ」

「せっかくの厚意を無駄にするほど、私は無粋な人間じゃないの」

「あー、はいはい、そうですか」


 シャルはというと、イチゴジャムがお気に召したようで、はむはむ、とパンを一生懸命食べている。


「Bランクが、なんでこんな田舎町に? 王都に行けば色んなクエストがあるんじゃないのか?」

「ズカズカ訊いてくるのね」

「気に障ったのなら謝るよ」

「ううん。そうやって訊いてくれるほうがいっそ清々しいから。……私、親友に愛想を尽かされちゃって」

「パーティを組むって言っていた人?」

「そう。組んでたんだけど、色々あって解散しちゃって。今はこっちのほうにいるって聞いたから……別れ際に、『あなたなんていなくても私一人で十分やっていけるわよっ』て意地張っちゃって」


 エリーなら言いそうだ。光景が目に浮かぶ。


 どうやら、親友の後衛職の女の子と組んでいたユニットは一時かなり有名になったそうだ。

 解散の原因は、エリーの直らない無鉄砲さと冒険知識をまったく覚えようとしないところ。それらを全部他人に任せっぱなしだったことだったという。


「私が考える原因は、これくらいかなって思うの。その当時はムカついて、あの子がいなくてもやれるんだってところを見せたくて、Cだったランクも頑張ってBに上げたわ」


「エリーは、たしかに無鉄砲でバカ正直だけど、その分、前衛として伸びしろがある」

「そ、そう?」


 ちょっと嬉しそうだだった。


「って、誰がバカ正直よ!」

「そういう部分を後衛の親友はずっとフォローしてきたんだろう。いいコンビじゃないか」

「私も、ずうっとそうだと思っていたのだけれど、あの子は、そうは思ってくれなかったみたい」


 そう言って、エリーは寂しそうに笑った。

 ああ、だから、愛想を尽かされた、と……。


「また組んでくれるといいな?」

「ええ」


 ずっと黙っているからおかしいなって思って様子を見ると、シャルがジャムの瓶に木匙を突っ込んでそのまま食っていた。


「あっ、こら!」

「っ!?」


 イタズラが見つかったみたいに、シャルは首をすくめた。


「ジャムを直接食べちゃダメでしょうが」

「……あまくておいしいから……」

「だからだよ。パンとかに塗って食べるものだから」


 俺も前同じことをしていたら、近所に住むコレットに見つかって注意されたことがある。


「おデブになるぞ」

「っ」

「ちょっと、あなた、レディになんてことを言うのよ」


 エリーには大ヒンシュクを買ったが、これくらい言わないとシャルはやめそうにない。

 あ。またひと口食いやがった。


 瓶を取りあげて、俺はマジックボックスの中に戻した。


 名残惜しそうにシャルはじっとこっちを見ているが、これに関しては譲る気はない。


「口のまわりが、ジャムだらけ……」


 あーあ、もう……。

 ハンカチでシャルの口を拭いてあげる。


「なんで、たべちゃダメなの?」

「シャルの成長によくないからだ」

「?」

「あれをいっぱい食べてると、おっぱいが大きくならないぞ?」

「えーっ!?」


 ガガーン、と巨乳を夢見るシャルがショックを受けた。


「えええええ!? 私、以前に何回かやったことがあるわ……」


 おまえもかよ。って、エリーもあっさり信じやがった。


「そういうことだったのね……この胸が小さいままなのは……!」


 何納得してんだ。

 数回やった程度じゃ影響はそれほどないと思うけどな……。

 エリーのそれは……もう、そういうおっぱいってことだ。


 前衛なら、胸が大きいと邪魔になるからいいと思うぞ?


 それは言わないことにして、休憩を終えた俺たちは、ときどき出現するゴブリンやスライムを倒し、奥へと進む。


「よし。これで、私のクエストは達成よ」


 ゴブリン討伐の証である耳の先が二〇個集まったようだ。

 あとは、俺たちのクエスト、湧き水を汲んで帰るだけ。


 それとなく、我が娘の成長を確認してみる。


――――――――――

種族:人間 シャルロット・ガンド(闇)

職業:魔法使い

Lv:12

スキル:イッシンジョーのツゴー・下級格闘術・ダークフレイム

シャドウスラッシュ(闇属性の刃を飛ばす魔法)

――――――――――


「シャル、新しい魔法を覚えてるぞ?」


 さっきゴブリンを倒したからか?

 レベルもひとつ上がっていた。


「ほんとー!?」


 キラキラ、とシャルが目を輝かせた。


「本当、本当。強そう。今度試してみるといい」

「うんっ」


 俺もシャルと同じくスキルを覚えていた。


――――――――――

種族:人間 ヨル・ガンド(状態:変身中)(光)

職業:騎士

Lv:12

スキル:劣化版ブレス・大盾の心得

フィジカルアップ(自分と味方の物理防御力を上げる)

スタンドアローン(単独行動時、全能力上昇)

――――――――――


 前衛の防御特化型になってきたな。

 けど、これなら俺が敵の攻撃を引きつけ、他の二人が攻撃してくれればいい。

 そうすれば、アタッカーの安全性は上がる。


「ねえ、ヨルさん? あなた、どうしてスキルを覚えたかどうかがわかるの?」

「どうしてって……意識すりゃ見えるからだ」


 何言ってんだ。


「普通……各地にある『決意の泉』で確認するか、限られた特異スキルがないと無理なのよ?」


「へえ。特異スキル」


 まあ、バハムートだからな。

 特異スキルなんて関係なく見えちまうもんは見えるんだよ。


 なんでこうなのか、俺にはさっぱりわからんが。


 ちらちら、とエリーが俺をチラ見してくる。


 何か言いたいらしい。


「どうした?」


「私のステータス……今、どうなってるか、見てほしいのだけど」

「ああ。それでモジモジしてたのか」


「し、してないわよっ」

「照れんなよ」

「照れてないわよっ」


 恥ずかしがらなくていいのに。


――――――――――

種族:人間 エリザベート・ルブラン(火)

職業:ソードマスター

Lv:24

スキル:筋力アップ・ファストエッジ・回避の心得

三連牙(高速の突きを三回行う剣技。三連続ヒットすればダウンさせられる)

――――――――――


「エリーは、剣技をひとつ覚えてるぞ?」

「ほ、ほんと?」


 エリーの表情がぱあっと明るくなった。


 そうか。

 こうやってステータスが見えなくちゃ、自分が成長しているのかは『決意の泉』に行くか、特異スキル持ちの人に見てもらうしかないのか。


 他のやつは、なかなか不便な冒険をしてるんだな……。


 エリーいわく、


「同じ職業だったとしても、スキルを覚えるタイミングや、何を覚えるのかは人それぞれだから、どれも一定じゃないのよ」


 とのことだ。


【騎士】になって覚えた俺のスキルは三つ、シャルが二つ。

 それに対し、エリーはレベルが倍違うのに、持っているスキルが四つなのも個人差らしい。


「……え、もうそんなにスキル持ってるの……?」

「ああ。なんか覚えたぞ?」


「三つ? 【騎士】で? ……普通、初級職じゃそんなに覚えないわよ……?」


「そうなのか」


「初級職で覚えるスキルは、よくて二個。だいたい一個どまり。私だって『筋力アップ』と『ファストエッジ』だけだったんだから」


 ということは、普通、それほどステータスを確認する必要もないってことか。

 そんなにスキルを覚えないんなら、見る必要もないわけだし。


 でも俺は、我が子の成長を見守りたいからな。

 ステータス見えてよかった。


 エリーの話では、格上の魔物とわざわざ戦ってレベルを上げようという命知らずなニンゲンはほとんどいないそうだ。

 敵の情報を集めて、敵の戦い方を覚え、倒せる敵を確実に倒して少しずつ強くなる――。


 これが冒険者の常識らしい。


 レベルが上がりにくいのは当然で、だから頻繁にステータスを確認する必要はないという。


 敵の情報もわからない状況で戦うのが自殺行為だというのは、俺でもわかる理屈だった。


「さっきのことがずっと引っかかってて、思い出そうとしてたんだけど、思い出したわ」

「何の話だ?」

「ヨルさんが剣をハンマーに変えたでしょ? それのこと」


 俺がエリーの次の言葉を待つと、「笑わないでよ?」と前置きした。


 笑わないで? もちろん俺はうなずいた。


「笑わないって。何を思い出したんだ?」

「あのハンマー……形状が特徴的だったから覚えていたんだけれど……あれ……破砕槌『トウル』だと思う」


「何それ」


「『打ち砕く者』という意味の、かつてバハムート退治に使われた伝説の大槌よ」


 なんかすごそうだな?

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