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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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森の中での出会い3


「なんなのよ、その剣」


 じろーとエリーが俺の剣を見つめる。


「何って言われても。レパントの町にある装備屋で買った骨董品だ」


 何か聞こえそうだったり、聞こえなかったりするところが玉に瑕だ。


『――っ、――っ!』


 鞘に納めておく。


「協力するよ。見たところ、中距離、遠距離の攻撃ができないんだろ?」

「……そうよ。何か悪い?」


 どうやら、助けてもらったことがエリーのプライドを傷つけたらしい。

 て言っても、あそこで助けなかったらスライムにいいようにやられていただろう。


「あ、相性が悪かっただけよ。次はああはならないわ」

「別に悪いなんて言ってないよ。エリーは前衛の攻撃タイプ。俺はその防御タイプ。で、シャルが後衛の攻撃タイプだ。俺たちはパーティとしてやっていけば、それなりにバランスが取れてる。協力したほうが、早く敵を倒せる。すると?」


「はやくクエストがおわるーっ!」


「はい、シャルちゃん正解」


「そうね……じゃあ、そうしましょ」


 案外素直に俺の提案を受け入れてくれたエリー。


「新人冒険者の面倒を見てあげるのは、高ランク冒険者として当たり前のことだもの」

「はいはい。もうそれでいいよ」


 エリーが手持ちのポーションでさっき受けたダメージを回復し、俺たちはまた進みはじめた。


「……さっきスライムがいて、エリーはゴブリン討伐のクエスト……珍しいな」

「なにがめずらしいの?」

「ゴブリンは、縄張り意識が強いんだ。違う種族の魔物や魔獣は追い払おうとする。けど、さっきスライムがいただろ? 同族意識の高いゴブリンにしては、同じ森に違う魔物がいるっての中々ないことなんだよ」

「おとーさん、ものしりー!」


 そうだろうそうだろう。


「そんなの、たまたまじゃないの?」

「だといいけどな」


「私は、ここの森にゴブリンがよく出現するから、それで討伐してほしいって話だったからクエストを受けたの」


 エリーの話によると、この森は、薬草や食べられる山菜などが採れることで有名だったそうだ。

 しかし、最近ゴブリンがいて採取ができないからクエストが出されたそうだ。


「ゴブリン自体どこにでもいるし、この森にいたって不思議じゃないわよ」


 そんなことより、とエリーは俺に詰め寄ってくる。


「ヨルさん、あなた本当に【騎士】なの? 実は私をからかっている、とか……」

「なんでエリーをからかわないといけないんだよ」


 ほら、と俺は左上にEと書いてある冒険証を見せる。


「本当にEなの……?」


 釈然といかないようだが、本当のことだ。


「魔力の使い方が、上級冒険者以上に洗練されていたから……ごめんなさい、変なことを言って」


 そういや、カティアさんが、パーティを組むことを考えたらどうかと言っていた。

 シャルと二人でのんびりやるつもりだったけど、シャルや俺の評判を知り、俺たち二人に勧誘が来たり、それぞれに来たりしているそうだ。


「エリーは、今はソロで冒険中なのか?」

「そうよ。あ。パーティはお断りよ? 私、親友と組むことにしてるんだから」

「そうか。いいパーティになるといいな」

「ありがとう」


 にこり、と笑うと、それはそれは可憐な笑顔だった。


「むううう」


 シャルがエリーを睨みながら俺の足にひしっとしがみついた。


「パパ、やだ。女の人は、だめ」

「パパじゃなくてお父さんでしょ」

「おとーさんとわたしでいいのっ。他の人はいらないのっ」


 地団駄を踏んでシャルが珍しくぐずりはじめた。


「あら。ごめんなさい、私のせい?」

「ああ、まあ、ははは……ヤキモチ焼いてるみたいで」

「やきもちじゃないぃぃぃぃぃ!」


 シャルが、ぷんすこぷんすこと怒りながら俺の足をぽかぽか叩いてくる。


「抱っこ」

「はいはい」


 顔を赤くして、ちょっと泣きそうになるシャルを抱っこしてあげる。


 ぎゅっと首に抱きついてきた。


「本当に仲が良いのね」


 くすっとエリーが笑う。


「いつになったらお姉ちゃんになるんだろうな、シャルは」

「もうなってるもん」


 お姉ちゃんなら抱っこって言わないと思うぞ?

 そうなればそうなったで、ちょっと寂しかったりもするバハムート心。


 やれやれ、と俺はシャルを抱っこしたまま、エリーと森をさらに歩いていく。


 ガサッ。


 葉っぱの擦れる音がした。

 物音がしたほうを探すと、樹の上にゴブリンがいた。


「エリー、上だ」

「うん、今見つけた」


――――――――――

種族:魔鬼族 ゴブリン・アーチャー(風)

Lv:15

スキル:連射・遠視・一矢入魂

――――――――――


 ふうん?

 弓を構えちゃって。

 ゴブリンのくせにニンゲンの真似事か?

 魔物のプライドってもんがないのかね。


「ギャギャ……!」


 後ろのほうでも声が聞こえた。


「おとーさん、後ろの木の上、ゴブリンがいる!」


 抱っこしているシャルが、俺の真後ろの状況を教えてくれる。


「エリー、何体倒せばいいんだっけ?」

「一応二〇体よ」


 オーケー、まずはこいつらを倒して二体だ。

 シャルを下ろしておく。


「シャル、後ろは任せるぞ!」

「うんっ」


 とはいえ、『大盾の心得』の効果で、自然と敵の攻撃は俺へと集中する。


 ガヒョン――。


 正面のゴブリンが矢を放った。


「ヨルさん、敵の攻撃が――」

「わかってる!」


 ヒュン――と飛んできた矢を素手でつかんだ。


「ええっ!? わかってるって、そういうこと!?」


 エリーが目を丸くして焦っている。

 遠くからこそこそ攻撃してきやがって。


「ナメてんじゃねえぞ! うおらっ!」


 掴んだ矢を俺はゴブリンに投げ返す。


 弓で放つ以上の速度で矢が飛んでいく。


「ギャッ!?」


 見事に命中した。


「よし。次」

「弓の射撃以上って何よそれ……」


 俺の背後でシャルが魔法攻撃をする。


「イッシンジョーのツゴー!」

「何の魔法!?」


 逐一ツッコむエリーがまた目を丸くした。


「おとーさん、弓のゴブリンたおした!」

「よおし、よくやった」

「もう、デタラメね……」


 頭痛がしたのか、エリーがこめかみを押さえた。


 弓ゴブリンが地面に落ちると、茂みからさらに四体のゴブリンが現れた。


――――――――――

種族:魔鬼族 ゴブリン(風)

Lv:13

スキル:筋力アップ・ゴブリンズアタック

――――――――――


 こっちは普通のゴブリンだ。


「ようやく私の出番のようね」


 ふぁさぁ、って髪触ってないで早く攻撃しろよ。


「ギャ、ギャギャ――ッ!」


 鳴き声とともにゴブリン同士が合体した。


 あれがゴブリンズアタックか……!?


「おとーさん、なんかすごそうー!」

「シャル、ただ肩車しただけだから」


 あれ、意味あるのか?


「はっ!」


 気合いとともにエリーが剣で攻撃する。


 あの肩車にどれほどの意味が……?


「ギャ! ギャギャァァァァン!」


 ズバンッ!


 エリーの一撃で、悲鳴とともに二匹が倒れた。


 やっぱり意味ないのか!? あれがスキルでいいのか!?


 俺がゴブリンズアタックに気を取られている間、他の二体はシャルが魔法で倒していた。


「ギャギャォオオ!」


 ひと際大柄のゴブリンが現れた。

 ニンゲンと同じくらいの背丈で、ガタイもよく、ニンゲン二人分はありそうだった。


――――――――――

種族:魔鬼族 ゴブリン・ナイト(土)

Lv:16

スキル:大盾の心得・硬化・初級剣術

――――――――――


 そいつは、自分の体を覆い隠せるくらいの盾を持っていた。

 後ろには、弓ゴブリンが三体いて、盾ゴブリンに隠れながらこっちを攻撃してくる。


 ヒュン、ヒュン、と飛んでくる矢を鞘で叩き落とす。


「二人は後ろの弓ゴブリンを引きつけてて! 盾持ちは私がやるわ!」


 さささ、と身軽な足取りで盾ゴブリンへ接近したエリー。


「喰らいなさいっ! 『ファストエッジ』!」


 エリーの斬閃が盾ゴブリンを襲った。


 だが、ガギン! と盾で剣を弾かれた。


「このう……!」


 二撃目。

 これも盾に弾き返されてしまった。


 ああ、ああ、またバカ正直に真正面から攻撃して!

 攻撃だけは素直なんだから。


「ギャン!」


 シュ!

 盾ゴブリンが剣で突ついてくる。

 単純な攻撃だが、バランスを崩しているエリーは防御が精いっぱいだった。


「くうっ……!」


「シャル、援護を。後ろの弓ゴブリンを黙らせてくれ。俺が盾持ちをやる」

「うん!」


 シャルがイッシンジョーのツゴーを放つ。


 だが、それを見た盾ゴブリンが、弓ゴブリンの前に立ちはだかる。


 バシュウン。


 シャルの魔法を受け切り、後ろの弓ゴブリンを守った。


「あううっ。邪魔されちゃった……」


 制御したとはいえ、シャルの魔法を防御するとは……結構いい盾だな。

 それとも『硬化』のおかげか?


 斬りかかったエリーが、どんっと盾で押され尻もちをついた。

 そこを狙った矢が一矢飛んでくる。


「っ!?」


 俺はその矢を叩き落とす。


「早く立って。盾ゴブリンは俺が」

「う、うん。あ、ありがとう……」

「照れてる場合か」

「て、て、照れてないわよっ」


 その間、シャルが牽制で放つ魔法攻撃のおかげで、敵の注意がそれた。


「行くぞ、盾ゴブリン!」

「ギャオオオオオ!」


 なんかいい感じの武器――頼むぞ!


 魔力を流し竜牙刃を鞘から抜き放つ。


『――。――ッ!』


 強い光りに一瞬目を細めた。


 形状がまた違った武器に変わる。


 今回出てきたのは、大槌……ハンマーと呼んだほうが正しいだろう。


 見た目に反して全然重たくない。


 さすがに盾ゴブリンが驚いたような表情をした。


「守れんのか、その盾で――――!」

「ギャ――!」


 ハンマーを振ると、それに合わせて盾の内側に入った盾ゴブリン。


「ォォオオオラァアアアアアアッ!」


 爆音に近い衝突音が響き、俺のハンマーはゴブリンが構えた盾を打つ。


 バギ、バギバギ――ッ。


 ヒビが入り、バギンッ! と、ついに盾を破壊した。


「ギャ――!?」


 振り抜いたハンマーは盾ゴブリンに直撃。


 衝撃波が一体に広がった。


 吹き飛ぶ盾ゴブリンが、大木を一本二本、となぎ倒しながらさらに飛んでいき――。


 どおおおん、と大岩にぶつかり、盾ゴブリンはぐったりと倒れた。

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