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2種類のステータスを持つ世界最強のおっさんが、愛娘と楽しく冒険をするそうです  作者: ケンノジ


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森の中での出会い2


 小川のそばで少しだけ休憩をして、俺とシャルは上流を目指し歩きはじめた。


「さっきの緑色の魔物は、なんていう魔物なの?」

「さっきのやつはな、ゴブリンっていって、多少知能はあるけど、頭の悪い種族なんだ。でもニンゲンに近くて群れに序列があったりする」


「ムレにジョレツ? ほほぅ……」


 わかってなさそうだった。


「強いやつには逆らわない。そいつの言うことを弱いやつが聞くってことだ」

「じゃあ、この森にもその強いのがいるの?」

「どうだろうな?」

「でてきたら、今度は、わたしがやっつけるから!」


 シャルはラブリーな杖を振って気合十分の様子だった。

 見つけないように祈ろう。

 厄介事は勘弁だ。

 もしいたら、シャルの様子を見守りつつ、難しそうなら俺が加勢すればいいか。


「ちょっと、あなたたち!」


 声に振り返ると、すらりとした体型の美少女が立っていた。

 急に現れた知らない人に、シャルが慌てて俺の後ろに隠れる。


「何かご用ですか?」

「何かご用じゃないわよ」と、美少女は眉間に皺を作った。


 栗色の艶のある髪の毛に、腰に剣を佩いていた。


「私が仕掛けた罠があったの。魔物を誘引する作用を持つ罠なのだけど。ゴブリンを楽に討伐するための罠だったのに、あなたがそのゴブリンを派手にやっつけちゃうから、罠に誘き寄せられていたゴブリンがみぃーんな逃げっちゃったのよ」


 なんだ、そんなことか。


「そりゃ、すみません」


 くるーんと背をむけて歩こうとすると、後ろから肩を掴まれた。


「待ちなさいよ。――手伝って。私、ゴブリン討伐のクエストをしているの。あなたのせいで、無駄な労力を使うことになっちゃったじゃない」


 面倒くさいやつに絡まれてしまった。

 まあ、知らなかったとはいえ、俺がこの子のクエストの邪魔をしちまったのは確からしい。


「あなた、見たところEかFランクの冒険者でしょ? ゴブリンと戦うのは私がやるわ。あなたは、探すのだけを手伝ってくれればいいから」


 どの道、これよりさらに奥に進まなくちゃいけない。

 装備や見た目からして、この子は俺たちよりもランクが高い冒険者のようだ。


 となれば、みんなで進んだほうが安全だし効率もいいだろう。


「オッケー、了解した。俺はヨル・ガンド。俺たちは、森の奥にある湧き水を汲むクエスト中なんだ。この子は、娘のシャルロット。ほら、シャル。お姉さんにご挨拶は?」


 俺を盾にして隠れるシャルが、ひょこっと顔を出す。


「……シャルロット……ガンド、です……こんにちは……」

「うっ、可愛い……」


 こほんっ、と美少女剣士も咳払いをして自己紹介をした。


「エリザベート・ルブラン。Bランク冒険者よ。よろしく。エリーでもエリザでも好きに呼んでちょうだい」


 ちょっと高飛車な感じの物言いだ。育ちもどことなくよさそうだった。


「職業は中級の【ソードマスター】。この程度の森なら私一人で十分なのよ? まあ、足を引っ張らないように頑張ってちょうだい」


 はーい、と俺は適当に返事をする。


――――――――――

種族:人間 エリザベート・ルブラン(火)

職業:ソードマスター

Lv:23

スキル:筋力アップ・ファストエッジ・回避の心得

――――――――――


 さっき蹴っ飛ばしたゴブリンは9レベルだったから、たしかにこの森は余裕かもしれない。


 俺とシャルは、ちなみに今は11レベル。あれから、まだ新スキルは覚えていなかった。


「ゴブリンを探しながら奥へ行くわよ。ヨルさんのクエストなら、私と一緒にできるし」


 一応、俺とシャルの職業を伝えたけど、


「ふふん。初級職でしかもEランク冒険者の手なんて借りなくても、私一人いれば余裕よ。戦闘になれば、後ろに隠れていればいいわ」


 そう言ったエリーは、ふぁさぁ、と綺麗な髪の毛をかきあげてみせた。

 こいつは頼もしい。俺とシャルも楽ができていいや。


「ピキキ!」


――――――――――

種族:魔生物スライム(水)

Lv:12

スキル:噛みつき・粘液・合体・水銃

――――――――――


 真っ青なスライムが現れた。


 俺でもシャルでも倒せただろうけど、エリーは得意そうな顔で俺たちに手で待ったをかけた。


「Cランクまでは努力でどうにでもなる――けど、Bランク以上は別。私の実力、見せてあげるわ!」


 だっ、とエリーが駆け出す。同時に、剣を抜いた。


「『ファストエッジ』!」


 スキルを使うと、剣速が不自然なくらい速くなった。


「ピィ――キッ!」


 それよりもわずかに早く、スライムがぷくっと膨れて、水色の弾丸を撃った。


「きゃんっ!?」


 顔面に直撃したようで、ばたん、と背中からエリーは倒れた。


 シャルがエリーを指差して首をかしげた。


「おとーさん、Bランクなのに、どうしてスラちゃんの攻撃がかわせないの?」

「いいかい、シャル。あれが、敵の攻撃をまったく想定してなかった人の動きだよ」

「ほぉぉぉぉぉぉ……」


「ピーキキキ」


 ……笑われてるっぽいな。


「この私をバカにして……!」


 立ち上がり、またスキルを発動させようとするエリー。

 かすかにタイムラグがあった。

 その隙を見逃さないスライムは、すすすすす、と距離を取って間合いの外から攻撃をする。


「ファストエ――、きゃあ!?」


 スキルを使おうとしたエリーに、またスライムが水色の弾丸を飛ばして、ダウンさせた。


 ちょんちょん、とシャルが俺の袖を引っ張った。


「おとーさん、あの人強そうなのに、どうしてスラちゃんにてこずってるの?」

「いいかい、シャル。あれが、油断して慢心したニンゲンだよ。冒険じゃ、ああいう人から死んでいくんだ」

「ほぉぉぉぉぉぉ……」


 実際、レベルが同じなら重傷だったろう。

 とはいえ、あのレベル差で一撃ダウン……ああ、属性の相性か。


「ス、スキルなんて使わなくても、スライムなんて一撃で――」


 スキル発動のタイムラグがなかったおかげで、今度こそ斬撃をスライムに当てた。

 ぴしゃん! と水を叩くような音がする。


「ピキー」


 斬った瞬間、切断面はすぐに元に戻っていった。


「あ、れ……?」


 スライムという魔物は、斬攻撃に耐性があるらしい。

 スライムにそんな特性があったのか。


 そういえば、俺が平原で倒したときは腕をずぼって突っ込んで核を抜き取ってたし、シャルが倒したときは魔法攻撃だった。


 俺がへえ、と感心していると、水弾をまた食らったエリーがダウンした。


「どうして私の剣が効かないのよー!」

「手伝おうか?」

「結構よっ。バカにしないでっ! この程度の敵――」


 スライムはよく戦い方を心得ているようで、エリーからきちんと距離を取り、水弾を浴びせていく。


「きゃん!?」

「よし。戦闘は任せた。俺とシャルはゴブリン捜索と湧き水の場所を探すから」


 じゃあ、と立ち去ろうとすると、


「ま、待って……」

「何?」


「手伝って……手伝ってくださいーっ」


 半泣きでエリーが喚いた。


 ちょんちょん、とシャルがまた俺の袖を引っ張って、エリーを指差した。


「おとーさん、あの人、どうして最初からそういえないの?」

「いいかい、シャル。あれが、プライドが高いせいで中々素直になれない人の典型だよ?」

「ほぉぉぉぉぉぉ……」


 やれやれ、と俺はエリーの手伝い――っていってもスライム一体だけど――をすることにした。剣に魔力を流す。

 何か、いい感じの武器に――!


 引き抜くと、いつもは形状がおかしいのに、今回は普通だった。

 その代わり、刀身は俺が流した魔力を常にまとっていた。


「何よ、それ……!?」


 何よ、と訊かれても、俺は答えられない。

 俺が教えてほしいくらいだ。


 けど、この竜牙刃はいつだって最適の形状、性質を持つ武器へ変化してくれた。


「ピキ……!」


 エリーじゃなくて、俺を警戒しはじめたスライム。


 ピキイ!


 鳴き声とともに、エリーに直撃させ続けた水弾を放った。


 軌道を読み切り、当たらないように注意する。

 グググ、と軌道が曲がった。

 ぴたり、と着弾箇所を俺の動きに合わせた。


「へえ。スライムにしては面白いことをする」


 だが。


「娘の前でカッコ悪いところ見せられないんでね……」


 接近して剣を振るう。

 ただの剣だと思っていたスライムの顔色が変わるのがわかった。


 竜牙刃が宙に白線を鋭く描いた。


 ――――ズバンッッ!!


 手に心地いい感触を残し、スライムを両断する。


「待って、斬撃はスライムには――!」

「ビギイイ!?」


 断末魔の声を上げたスライムが、核だけを残しどろどろになった。


「終わったぞ?」


 はぁぁぁぁぁぁぁ、とシャルが尊敬の眼差しを俺にむけてくる。

 やめろやめろ、お父さん照れちまう。


「な、何よ、今の……? ただの斬撃じゃないとしたら……属性物理攻撃……!?」


 へたり込んでいるエリーに手を貸して立たせてあげる。


「あ、ありがと……」


 何照れてんだ。


「属性物理?」

「し、知らないでやったの!? 上級職【エレメンタルセイバー】だけが使える特殊な物理攻撃よ」


 へえ。なんかすごそうだな?

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