霊獣遣いの娘、プラム・エゥーグ、ちょっとがんばる?
「……ここ、ゼナンだよね」
「うに。そーだよぉー」
ゼナンの一角で、サンライトイエローの目をした小柄な少女が辺りを見渡し、オレンジがかった金色の毛並みを持つ、大きな雌のライオンっぽい生き物がのんびりとした声を上げた。
蜂蜜色の髪をツインテールにし、紅花で染めたであろう鮮やかな色をしたマントを纏った少女は、ため息混じりにもう一度辺りを見渡す。
「うぅ、異能力は得たし、15歳になったから里を出たけどさぁ……。やっぱりめんどいよぉ。あー、早く20歳になって里に帰ってのんびりパプリカ食べてお昼寝したーい」
「それぇ、冒険者になった時点でむりだよぉ、プラムちゃーん。プリム、長様から『その魂滅ぶまで主と民に尽せ』って言われてきたんだもーん。プラムちゃんも」
「わーかってるよぉ! 私も冒険者ってのになったんだもん。それぐらい……うぅ、でもお昼寝したいよぉ」
傍らの大きなライオンがきゃぴきゃぴした声で諭せばプラムと呼ばれた少女はため息を混じりに頷いた。1人と1頭はとりあえず辺りを見渡し、冒険者ギルドを探す事にした。
プリムと名乗った大きなライオンっぽい存在は、緑色の眼をきらきら輝かせて街を見る。背中にプラムを載せて、獣はのっしのっしと街をいくのだった。
しばらくして、1人と1頭は少し困ったように顔を見合わせる。道に迷って治安の悪そうな場所に来て早々、柄の悪そうな連中に絡まれているのである。
実のところ、冒険者くずれの連中がいちゃもんをつけてきたのだが、プリムとプラムにとってはただの面倒ごとなのであった。
「お前、話聞いてんのか?」
と、男の一人がいうが、プラムはあくびを1つ。
「御託聞き飽きて眠い」
「ちょっ?!」
「ふざけてんのかてめぇ!」
別の男が殴りかかるも、プラムはひょい、と身をかわす。そして、プリムがふとましい前足でべしっ、と猫パンチ。押しつぶされる冒険者くずれ。
「で、まだやる訳? すっごくめんどいんだけど。処理とか」
「うるせぇ!」
あくびしながら瞬時に生み出した槍を向けるプラム。それに立ち向かう冒険者くずれだが、やっぱりプリムのふとましい前足の犠牲となる。
「お金払う余裕ないし」
プラムはプリムの背に乗ると、のっしのっしとその場を後にする。その背中を、冒険者くずれ達は呆然とした表情で見送っていた。
「ねぇ、プラムちゃーん」
「ん?」
ならず者たちをのした後、少しはなれた場所でプリムがしゅん、とした声を上げる。不思議に思ったプリムが首を傾げるとプリムは真面目な声で言った。
「あのねぇ、うっかりプリムの能力つかっちゃった。多分、5割の確立であの人たち真人間になってると思う」
「……それはそれでいいんじゃない?」
その発言に、プリムは「またかぁ」と肩を竦めた。光の属性を持つプリムは、攻撃に己の属性をのせる事が出来る。だから、ならず者たちを猫パンチしただけで彼らの中に溜まっていた『悪意』が浄化される可能性がある。
「でも、また『舎弟にしてくれ』って言ってくるかもしれないよー」
「あ、それはめんどいよね」
1人と1頭は顔を見合わせ、げんなりしたような顔になった。
翌日、彼女達の懸念は見事的中し、舎弟になりたいと言って3人の冒険者に追いかけられる羽目になるのだった。
ここまで読んでいただき有難うございました。
因みに元ネタが判る人がいそうですよね……。
つっこみは甘んじて受けます。