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中間市:??? -7:00-





「隔壁、降ります! ……駄目だ、防ぎきれません!」

「わかってはいたが、凄まじい破壊力だな……。迎撃班と連絡は?」

「取れません……。おそらく、全滅したものかと……」

「適合者の実力を甘く見たわけではないが、こちらの想像のはるか上をいかれたな……。このままでは、組織の存亡云々以前に、世界が滅びかねんか」

「いかがいたしましょうか……!?」

「――仕方あるまい。状況はDクラスを超えたものと判断し、シークエンスを繰り上げケースAを発令する。隔離防壁の起動と遮断用帯電霧の散布を開始せよ」

「はっ!」

「同時に、最終システムの準備を。全てが滞りなく進むよう、手配をしてくれ」

「最終システムを……!? 誰が起動されるんですか!?」

「所長以下、重役連中は私を除いて死亡しただろう。端役とはいえ、私でもスイッチを押すくらいはできる」

「し、しかし……!」

「それに、私は全てを見なければならん。全てを見て、この脳髄に記録することが、私の使命だ。……諸君は、全ての準備が整い次第、脱出を優先したまえ。所内に残っている者たちにも、通達を急げ」

「……ハッ。了解いたしました」

「研究所内に残る全所員に……生き残っている者に告ぐ! ケースA、発令! 繰り返す、ケースA、発令!! ケースA発令に伴い、最終システムが起動される! 最終システム起動と同時に、証拠隠滅のためすべてが抹消される! それは諸君らも例外ではない! ただちに研究所、および最終システム効果範囲外に脱出せよ! 繰り返す! ケースA、発令! ――!」

「……まあ、外道の類にしては長生きできた方かね」

「何をおっしゃいますか! 博士らの研究のおかげで、一体何万人の命が救われたか……!」

「外道は外道だよ。事実は正しく口にせねばならない」

「私も、博士の研究により命救われたものです! 御身のためであれば、私は……!」

「だというのであれば、私を救うためなどと言わずに脱出をしてくれたまえ。私のおかげ救われた命だというのであれば、私のために生き続けてくれ」

「博士……!」

「命というのは、無為に失ってはならない。その命は、自然に散らねばならない。それが叶わぬというのであれば……記録せねばならない。その命のあり様を。その命の散り際を。……だが、それは叶わなかった。我らの身勝手により、どれだけの命が散った? 私は、どれほどの命を見落とした? 人類のため? 世界平和のため? ――否、ただの傲慢、エゴ故に、命を落とした者たちがどれほどいるのか?」

「………」

「外道とは、道を外した者、道の外にいる者のことをそう呼ぶ。……私は外道だよ。道の外にいねば、この脳髄の好奇心を満たすことができなかった者なのだよ」

「……博士……」

「だが、私は外道でよかったと思っている。我が脳髄の好奇は今この瞬間にも満たされているし、我が良心もまた君のおかげで満たされている。私のおかげで、命が救われた。その一言がこの脳髄に記録できただけでも、私には十全すぎる」

「……私は……私は……!」

「そう気を落とすな。こうなった原因の一端を、私も担っている。故に、責務を果たすのだ。ただ、それだけの話だ。――さあ、行きたまえ。道は私が開けよう。君たちも、館内放送を終え、システムの準備を終えたら行きたまえ」

「「……ハッ!」」

「……申し訳ありません、博士……!」

「うむ、気にするな。では、息災でな、諸君」


――カシュンッ


「……ふむ、皆行ったか。通り道の隔壁は……問題なく動くか。隔離防壁と遮断用帯電霧も異常なし……。あとは、モノレールが無事起動してくれるのを祈るばかりか」


――……オオオォォォォォォ………!!


「……ふむ。人類初の適合者よ。その咆哮は如何なものだ? 拘束が解かれた故の、歓喜か? それとも、我らに対する怨嗟のものか? 興味が尽きぬ、好奇が渇く……」


――キシッ


「故に、今しばらく付きあおう。君が彩る世界の光景に。我が脳髄に、その行動の一切を記録しよう。我が好奇が欲するままに。幸いにして、この研究所、あらゆる場所を除くことができるし、隔離防壁と遮断用帯電霧のおかげで街一つが隔離できる。君は、君の想いの向くままに、外の世界で遊ぶがよい」


――ピピッ


「――さあ、始めようか適合者。君は、何を望む? 君は、何を欲する……?」






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