幕間・ネジネッジケースペシャル「ネジに喰われた男たち~ネジ漁師の526日を追う~」シリーズ第二回・後編
――ネジ漁師をやめたくなったことは?
正直、最初のうちは毎日だったね。同期が何人もダメになっていった。
――今は違う?
違う、といっちゃあウソになるがね。
ですが、ひとたび漁が始まればヨクジさんの表情は一変。勇敢な海の男そのものになります。スタッフは、ヨクジさんをよく知る内域の上流工程、ネジ漁法の専門家でもあるドゥマさんをお招きしました。
ドゥマ「ネジ漁は大変危険な仕事ではあるが、この星のネジ循環に非常に重要な役割を担っているのはご存知のとおりである」
――ですが、その重要性・危険性とは裏腹に、あまり社会的地位を与えられていないという現状もあります。
ドゥマ「社会的地位が欲しいのかね?」
――普通は欲しいと思いますが。
ドゥマ氏はふふん、と笑う。
――ヨクジ氏はいかがでしょうか、その辺りについてなにかコメントは?
ヨクジ氏も、肩をすくめてフゥーッ、と鼻から息を吐く。
ドゥマ「……ともかく、毎日ネジは降る。彼らはそれを採り続ける。その繰返しだ」
ヨクジ「簡単に言ってくれるね、ジョーリューのセンセイは」
ドゥマ「バカが、複雑なものによいものなどないわ」
ヨクジ「はいはいわかってますよ」
――ドゥマさん、公共の放送です。あまり乱暴な言動は控えていただければ……
ヨクジ「バカいっちゃいけねえ、このオッサン、今日はおとなしい方だろ」
ドゥマ「知ったような口を利きおって、怪我の絶えん小僧が。そもそも私の考案した漁法を正確に実施すればそのような怪我などせんのだ」
ヨクジ「はいはい、わかってますよ、無駄が多いのはね」
――このような口論などはよく?
ドゥマ・ヨクジ「口論ではない」
「オレたちはなんのためにネジを採っているのか知っている」
「なんのためにネジを採り続けているのか知っている」
「俺が採り」
「私が高める」
「俺が採り」
「高め」
「今日もまた採り続けることができる」
「あなただって知っているだろう?」
「なぜテレビ受信機が世界中どこを探してもないのに、こんなテレビ番組を作り続けているのか」
「信じているからではないのかね」
「俺は信じている」
「誰かがカメラを開発してくれることを」
「誰かが電波を発見してくれることを」
――誰かが、再びテレビを発明してくれることを。