幕間・ネジネッジケースペシャル「ネジに喰われた男たち~ネジ漁師の526日を追う~」シリーズ第一回・前編
「稼ぎ? そりゃあよくはないさ。
だがうちは代々、この仕事を誇りを持ってやってるんだ。
危険さ。そりゃあな。『海』はいつだってオレたちに牙を剥く。
油断すれば大事故に繋がる。
だが、オレたちが採った新鮮なネジを待っている職人たちがいる。
その期待に応えたい。それだけだ」
――ヨクジさんは漁師生活30年。
その体には至る所にネジによる傷跡が刻まれ、彼がベテランであることを物語ります。
朝。
使い込んだ道具を手に、ヨクジさんは漁場へと向かいます。
キシッ、キシッと足音を立てながら海上を歩く姿は真剣そのもの。
時折足を止め、海を掘り、砂鉄の中から顔を出すネジを的確に捉えます。
もっと安全な海を汲んで溶かし、原料にすればよいのではないでしょうか?
我々のそんな疑問に、ヨクジさんは答えます。
「砂鉄はな、もうネジとしては死んどる」
――ネジは山間部に降ります。
森林の保螺子力により集まり、谷に注ぎ込み、川となるネジ。
ギシギシと流れる川は、互いを削り合いながら海に注ぎ込んでゆきます。
そこで削られてできた砂鉄は、ネジの材料としては適切ではないと、ヨクジさんは言います。
「そいつらは、ネジ同士のガチンコに負けたネジどもさ。
負けて粉になってしもうたネジは、決して一流のネジにゃあなれん」