ご飯
見切り発車はそのまま終電。
あれはどうしよか?書くか書かないか・・・・・とりあえずどうぞ。
精神病棟地下3階、そこには普通の患者は存在しない。
「またか、また精神欠損患者か」
一人の白衣を着た男がカルテを見てつぶやく。
「はい、今回の患者は腕のみの変形ですが、切り落としますか?」
こちらも白衣を着た女性で、もう一人の医者らしき男に話し掛ける。
「いや、これは手遅れだな。恐らく、腕を切除しても進行は止まらんよ。内容を見たが精神が既に崩壊しかけている」
渋い顔しながら、やれやれといった感じで言う。
「では、地下閉鎖域へ収容しても?」
女性の方は涼しい顔で男へ問い返す。
「ああ、そうだな。もはや自我意識が殆ど無い状態だ、いつ人を襲うか判らん。回復は見込めんよ」
男は立ち上がり、彼女にも現状の症状のカルテを見せる。
「そのようですね、ではご家族への説明の準備をしましょう」
「ああ、頼むよ」
そう言って、彼女の答えを聞き、男はそのまま出ていこうとした時呼び止められた。
「先生、忘れていたのですが例の患者が目を覚ましました」
この言葉によって、男は急いで駆け出していくのだった。
「あ~ぁ、よう寝た気がする。にしても、俺いつ入院したんやろか、全然記憶にないんやけど?」
ひとりの青年が真っ白な飾の一つない空間で一人呟いていた。しかもこの青年、どうやら入院したことも、していたことも知らないらしい。
「なんかお腹すいたんやけど、ナースコールしたら飯ってもらえんのかいな?押してみるかいな」
青年はどうやらお馬鹿のようだ。そんなお馬鹿は押すに相場が決まっているし、怒られることを決して恐れはしない。何故なら、怒られることをしているつもりは全くないのだから。
「あらポチっとなっと」
ガッチャっ!!!!
「はやっ!!!めっさ早!!今押した「本当に目が覚めていたのか」・・・・ご飯は?」
医者の男と青年の目があった。ここからラブロマンスに・・・・・そんなもの始まってたまるか。
「ご、ご飯の時間は決められた時間しかないんだよ、ここ病院だし。そ、それよりも、今こうして話していることが君は理解できるかい?」
医者はいきなりご飯のことについて聞かれたため、非常に錯乱した。普通は自分が今どういう状況かを聞くのが先だと思う。だが、この青年には通用しない。
「へ?何言っちゃってるんですかい、そんなん普通でしょう。人をバカにしちゃあいけませんよ~」
「え、いや、うんと、はい」
どうやらこの医者は青年のペースに飲まれたようだ。まぁ、それはそうである、この青年はつい一年前まで全身が変形し、もはや人間ではないものへとなっていたのに、つい数週間前になぜか急激に人型へと戻ったのだから。そりゃあ開口していきなりご飯でんでんの話を普通に喋れるとも思わない。
「はぁ~、で、購買ってどこですか?」
「あぁ、この階にはなくてね・・・・・・じゃない、ウウッン。いいかい、君はね昨日まで昏睡状態で、つい一年前まで精神崩壊患者の第一級の生体変型者だったんだよ。治る方がおかしい病気で、君の場合はもっとも絶望的だったんだよ?解る?ねえ、解る?これかなり重要だよ?」
第一級の生体変形患者は国が認める保護患者だ。保護といっても隔離して出られないようにする措置が取られる。連続殺人などされては国としてもたまったものではないのだから。
「あの~それって分かったらご飯もらえますか?」
「だー!!!!もう、話の流れがごちゃごちゃになるからご飯から離れなさい!」
医者はどうやらご立腹のようです。
「へい、話が終わったらご飯出してくれるならいつだって真面目に聞きましょうとも」
「分かった、出すよ」
医者から何だか可哀想なオーラが出ていることはしょうがないことだろう。
「了解しやした、言質貰いやしたからね?」
「はいはい、それじゃ話すよ?まず、精神崩壊を起こしたら普通は呆然自失になったりするよね?でも君たちのような身体に異常をきたす例もあるんだ。しかも、化け物のような容姿になったり、溶けたり、腐乱死体のようになったりと様々なんだけど、君はこの全てに当てはまらない。君は文字同理に肉塊になってたんだ。しかも普通の患者と違って暴れるでもない、さまよいもしないただ寝てるだけ。普通は大概さまよう患者さんが多いけど、君起きないし脳波も睡眠状態、不気味以外のなにものでもない肉の塊、それだけでも特殊でしかも目を覚ました。しかも、人型に戻って尚且つ普通に話すからびっくりしたよ。でね・・・・・」
凄い勢いで話し続ける医者。だが、青年に理解できようか?
「先生、長いしわかりましぇん」
どこの鼻水小僧だねってくらいにアホずらをかましている。まあ、医者も医者で興奮のあまりちゃんと話せていない。
「はっ、すまんすまん、興奮していて話が要領をえてないね。まあ、つまり君は奇跡的な回復を遂げたわけだ。一応、退院できる運びになるから、それだけ覚えておいて」
医者は未だに興奮しながらブツブツ言い、部屋から出て行った。
「おいらのご飯はどうなったね?」
答えてくれるものは誰もいない。
は~、主人公の名前はどうしよう。