表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と歌えば  作者: もち
1/2

0:図書館にて



誰かの話声も歩き回る音もただ遠くに有りて、この静寂に響くは書物をめくる音のみ。






「先生、ひとつ良いですか?」


「ん。なんだリノ?」



手元にある本の文章をそっとなぞる。



「今までに何冊も本を読んできました」


「あぁ」



彼のまるで海のような深い碧瞳に、私の鮮やかな翠眼が映る。



「リノ?」


「何が正しくて、何が間違っていたんでしょうか。……知れば知るほど、わからなくなりました」



そうだなぁ、と呟く、彼の赤髪がさらりと揺れる様をぼぅと見つめれば、彼はひとつ苦笑して私に目線を合わせてきた。



「物事の善し悪しは、結局自分の判断によるものだと俺は思うね」


「え?だって、この本を筆頭に…」



私は戸惑う。だって、どの本を見ても、いつだって”悪”だった。



ぽん。


彼の大きな手により、うっかり過去に入りかけた私は引き戻される。



「事実は事実だ。だがな、それが絶対に良いとか悪いとか確実に決められる奴なんて居ないと思うぜ」



彼は、私の頭を撫でながら呟く。



「なぁ、リノ」



俯いた私に彼の表情は見えない。自分のキャラメル色のくせ毛が、私を守るように景色を隠す。



「俺に聞かせてくれ。お前が聞いた物語の一片を」





少しして、小さな声でした返事がちょっと湿っぽかったなんて……気づかなかったよね、先生。







.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ