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僕はお金がなかった。

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/02/20

 僕はお金がなかった。

 貧乏の家に生まれたから。


「貧乏だと辛いよね」


 幼馴染の子がそう言って同情してきた。

 確かに辛いよ。

 貧乏だと。


「これ食べていいよ。僕はたくさん持っているから」


 そう言って幼馴染はお菓子をくれた。

 おうちに一杯あるからって。


「ありがとう」


 僕はそう言ってお菓子を食べた。

 美味しかったなぁ。


「貧乏だと辛いよね」


 幼馴染はそう言って他の子にもお菓子をあげていた。

 実際その通りだ。

 あの子に比べれば僕も他の子も皆、貧乏だ。


 だから皆にあの子はお菓子を配っていた。


「皆で食べていいよ。僕はもう食べる必要がないから」


 食べる必要はない?

 どういうことだろう。


 そう思って僕らが聞くとその子は言った。


「お父さんとお母さんが言っていたんだ。僕はお金持ちだから手術をするんだって」


 よくわかんない。

 だけど、その子はそれから少しして学校を休んだ。

 かなり、長い間。



 *



 お金持ちは良いな。

 だって、お菓子をあんなに食べられるんだから。


 だけど、お金持ちになりたいと思わない。

 だって、僕は。

 ううん、僕だけじゃなくて皆も言っているけれど――。


「久しぶり」


 幼馴染はカシャカシャと音を立ててやってきた。

 人間じゃなくてロボットになって。


「この体」


 幼馴染は見せつけながら言った。


「お腹も空かないし、眠くもならない。疲れもしないし、怪我もしないんだ」


 どこか誇らし気に。


 僕と皆はそんなあの子から距離を取った。

 あの子を無視して皆でコソコソしながら喋った。

 皆が思っていることを、皆で。


 幼馴染は気にもせずに語っていた。


「おまけに心がないから仲間外れも気にならないんだ」


 カシャカシャと音を立ててロボットは笑っていた。



 気持ち悪い。

 僕は貧乏で良かった。


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― 新着の感想 ―
無駄?な説明、描写が削ぎ落とされているから、いくらでも好きに読める文なのが、作者様のすごいところだと思います。 機械の身体になって、金持ちをひけらかす道化にも、 機械の身体を選ぶしかなかった難病で、…
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