僕はお金がなかった。
僕はお金がなかった。
貧乏の家に生まれたから。
「貧乏だと辛いよね」
幼馴染の子がそう言って同情してきた。
確かに辛いよ。
貧乏だと。
「これ食べていいよ。僕はたくさん持っているから」
そう言って幼馴染はお菓子をくれた。
おうちに一杯あるからって。
「ありがとう」
僕はそう言ってお菓子を食べた。
美味しかったなぁ。
「貧乏だと辛いよね」
幼馴染はそう言って他の子にもお菓子をあげていた。
実際その通りだ。
あの子に比べれば僕も他の子も皆、貧乏だ。
だから皆にあの子はお菓子を配っていた。
「皆で食べていいよ。僕はもう食べる必要がないから」
食べる必要はない?
どういうことだろう。
そう思って僕らが聞くとその子は言った。
「お父さんとお母さんが言っていたんだ。僕はお金持ちだから手術をするんだって」
よくわかんない。
だけど、その子はそれから少しして学校を休んだ。
かなり、長い間。
*
お金持ちは良いな。
だって、お菓子をあんなに食べられるんだから。
だけど、お金持ちになりたいと思わない。
だって、僕は。
ううん、僕だけじゃなくて皆も言っているけれど――。
「久しぶり」
幼馴染はカシャカシャと音を立ててやってきた。
人間じゃなくてロボットになって。
「この体」
幼馴染は見せつけながら言った。
「お腹も空かないし、眠くもならない。疲れもしないし、怪我もしないんだ」
どこか誇らし気に。
僕と皆はそんなあの子から距離を取った。
あの子を無視して皆でコソコソしながら喋った。
皆が思っていることを、皆で。
幼馴染は気にもせずに語っていた。
「おまけに心がないから仲間外れも気にならないんだ」
カシャカシャと音を立ててロボットは笑っていた。
気持ち悪い。
僕は貧乏で良かった。




