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ふしぎなはっぱとコトリ

 ある晴れた日の午後、コトリはまよい森の奥をひとりで歩いていました。

 森は木漏れ日でいっぱいで、葉っぱの上に光のかけらが落ちてきます。

 小鳥たちがちゅんちゅんと歌い、風がそよそよと枝を揺らしていました。

 けれど、コトリの耳には、普段の森の音とはちょっとちがう、かすかなすすり泣きのような音が聞こえてきました。

「……だれか泣いてる?」

 コトリはそっと音のする方へ歩いていきました。


 苔に覆われた道をぺたんぺたんと進むと、木々の間に小さな影がちらりと見えました。

「わあ……小さなおばけ?」

 その影は、白くふわふわで、まだ子どものようでした。

 目はうるうるとしていて、どうやらまいごになったらしいのです。

「こんにちは。どうしたの? まいごなの?」

 コトリが声をかけると、おばけの子は小さくうなずきました。

「……道がわからなくなっちゃったの。家に帰れないの」

「だいじょうぶ、わたしが助けてあげる!」

 コトリはにっこり笑って、手を差し出しました。

 おばけの子はしずかに手を握ると、ふわりと宙に浮かびました。

 コトリはそっとその手を握り、森の中を進んでいきます。


 途中、落ち葉のじゅうたんの上を歩くたびに、落ち葉がカサカサと音を立てます。

「この音、なんだか楽しいね」

 おばけの子も小さな手をぱたぱたと動かし、音を楽しむように笑いました。

 しばらく歩くと、森の奥に見たこともない葉っぱが生い茂る場所にたどり着きました。

 葉は透明で、光を通すと七色に光り、触れるとやわらかくふわっと手に残るのです。

「わあ……きれい!」

 コトリとおばけの子は目を輝かせ、葉の間をくぐりながら進みます。

 すると、葉のひとつがふわっと宙に舞い、光の粒を森にまき散らしました。

「この葉っぱは、道に迷ったおばけを案内してくれるんだよ」

 ふと横にいた小さな影が、そう教えてくれました。

 おばけの子は目をまんまるにして、うれしそうに葉っぱを追いかけます。

 森の中でしばらくしあそびながら、コトリはおばけの子にいろいろなことを教えました。

 木の葉でかくれんぼをしたり、苔の上でジャンプしたり。

 おばけの子は光の葉っぱを追いかけながら、楽しそうに笑っています。

「こうしていると、まいごでも怖くないね」

 コトリがそう言うと、おばけの子は小さくうなずきました。

 やがて、光る葉っぱの導きで森の出口が見えてきました。

「ここ……わたしの家の近くだ」

 おばけの子は目を輝かせ、コトリの手をぎゅっと握りました。

「ありがとう、コトリちゃん。ぼくも自分の家に帰れる気がする」

 コトリはにっこり笑い、手を振ります。

「また森にあそびに来てね」

 おばけの子はふわっと宙に浮かび、光る葉っぱとともに森の奥へと帰っていきました。


 その夜、コトリは家に帰って布団にくるまりながら思いました。

「森には、まだまだ知らないふしぎがいっぱいあるんだな」

 まよい森は今日も、まいごやさみしい気持ちを抱えたものをそっと見守り、だれも一人にしないやさしい場所なのです。

 翌朝、コトリが森を見上げると、太陽の光に葉っぱがきらきら光っていました。

 光の中に、昨日あそんだ小さなおばけの影がふわりと揺れ、まるで「また来てね」と言っているようでした。

 コトリは小さく手を振り、心の中で約束しました。

「また、まよい森に来るよ」

 森はしずかに風を揺らし、今日もやさしく息をしていました。

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