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おばけたちとあそぼう

 ある日の夕暮れ、コトリは森の小道を歩いていました。

 木々の葉がやわらかく風に揺れ、薄紫色の空に、ひぐらしの声がかすかに響きます。

 森の奥に向かうと、いつもより光が少しずつ薄くなり、影がやさしく森を包んでいました。

「森の奥に行ってみようかな……」

 コトリはふわりと髪を揺らしながら、足もとに散らばる苔を踏みしめました。

 水のせせらぎが近づくにつれ、ふわふわした小さなおばけたちがぽつぽつ姿を現しました。

 まるい目のおばけ、長い耳のおばけ、ふわふわの毛のおばけ……

 みんな、コトリの姿を見つけると、ぴょんぴょんと跳ねて手を振ります。

「コトリちゃん、来てくれた!」

「うん、今日もあそぼうね」

 コトリが笑うと、森の空気までやわらかくなったように感じました。

 森の奥の小川には、ぽつりぽつりと光る虫が舞っていました。

「光の虫、今日はちょっとまいごみたい……」

 ふわふわの白いおばけが小さくつぶやきます。

 コトリはそっと手を差し伸べ、光の虫をすくい上げました。

「だいじょうぶ、みんなで一緒にあそぼうね」

 おばけたちは光の虫を囲み、ふわふわと揺れながら手で光をつかみ、花や草むらへそっと運びます。

 その小さな光が、森の草や苔の上でふわりふわりと跳ね、まるで小さな星が森の中に降りてきたみたいでした。

「見て、光が水面に映ってるよ」

 コトリが指さすと、小川の水面に映った光は、まるで小さな虹の橋のように揺れていました。

 おばけたちはぴょんぴょん跳ねながら、光を追いかけます。

 コトリもいっしょに跳ね、光の粒と風と水の音が混ざった、不思議でやさしい時間に包まれました。


 日が沈み、森は夜の色に染まります。

 水面には月と星の光が映り、森全体が淡く輝きはじめました。

 小さなおばけたちは、光の虫や水面に反射した光とあそびながら、楽しそうに声をあげます。

 コトリも輪の中に入り、ふわふわのおばけの手を握ったり、光の虫をすくったりして、夜の森を駆け巡りました。

「ねえ、コトリちゃん」

 小さな白いおばけが耳元でささやきます。

「あなたの声、森の奥まで届くんだよ。ぼくら、おばけだけど、話してくれるとすごくうれしいんだ」

 コトリはそっと水面に向かって言いました。

「こんばんは。今日も楽しかったね」

 すると光の虫やおばけの小さな光が、ぽうっと水面で揺れ、まるでコトリの声に答えるように瞬きました。


 やがて夜が深くなるころ、森はしずかに息をひそめます。

 でも、水辺の光やおばけたちの淡い光が、森をやさしく照らしつづけました。

 コトリは光に包まれながら、小さなおばけたちと並んで座り、森のしずけさと温かさを感じました。

「夏のまよい森も、やっぱりすてきだね……」

 おばけたちはふわふわとうなずき、コトリの手を温かく包みました。

 夜が深くなるにつれ、森の小道には光の粒がふわりと舞い、星のかけらのように輝きました。

 コトリとおばけたちはその光を見つめ、しばらくしずかに笑いあいました。


 森の奥には、小さな光と笑顔が広がり、まよい森は今日も、コトリとおばけたちのやさしい魔法で、しずかにあたたかく輝きつづけていました。

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