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追放聖女は、ハズレスキル「トリマー」でもふもふ達と楽しく暮らします!  作者: 野生のイエネコ


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「あやめさん、大変なことになりました」


 深夜遅く、お店のドアノッカーが鳴らされて、ゼフィールたちに守ってもらいつつ、恐る恐るドアを開けると、そこにはライカンさんが居た。


「どうしたんですか、ライカンさん」

「テリア王国が、あやめさんを召喚したあの国が、邪竜と亜獣人に滅ぼされました」

「ど、どういうことですか!?」


 私が居なくなったせいで、穢れに汚染されて滅んでしまったとかだろうか。もしそうなら、無辜の民まで巻き込んでしまって、私には受け止めきれない。


 けれど、よくよく聞いてみると、国自体が壊滅したというわけではないらしい。


「王城が亜獣人と邪竜によって攻め落とされて、一夜にして王権が転覆したのです」

「そんな……。国を転覆させられるくらい、大勢の亜獣人たちが奴隷にされているということですか」

「ええ……。最初にそのことを気にするだなんて、あやめさんはお優しいですね」


 ライカンさんは、緊迫した顔を少し緩めた。

 頓珍漢なことを気にしていただろうか。私は少し恥ずかしくなる。


「少なくとも、王権転覆の主犯はシャドウの件の犯人と同じだと思われます。こちらが探る前に表に出て来てくれたのはありがたいですが、とんでもないことになってますね」

「ほんと、とんでもない。国が攻め落とされるなんて……」

「ええ。それで、テリア王国の穢れも凄まじいことになっているらしいので、あやめさんにも関わることかと、夜遅くですがお知らせにあがりました」


 そういうことだったのか。深夜、息せき切って現れたライカンさんに、一体何事かと思ったけれど、そういうことだったんだ。


「お休みのところお邪魔して申し訳ありませんでした」

「いえ、知らせてくれてありがとうございます。テリア王国、心配ですね……」


 ライカンさんは、一通り説明すると、夜闇の中へと消えていった。


 一体、この世界はどうなってしまうのか。私は聖女として何をしたらいいのか。

 その日の夜は、ぐるぐるとそんなことを考えてしまって、あんまり眠れなかった。


 そうは言っても夜は明ける。

 店の営業日でもあったので、辺りが明るくなり始めた頃には、店の掃除と開店準備を始める。


「あやめさん、顔色悪いです。準備は僕がやるです。休んだ方がいいです」


 お掃除を手伝ってくれているミントくんが、私の顔色の悪さを指摘して、休むようにとソファの方へぐいぐい押してくる。


「そんな、大丈夫よ」

「大丈夫じゃないです。準備は僕に任せるです」


 結局、ミントくんに押し切られて準備は任せることになった。あんまり眠れなかったので、ソファで仮眠をとる。


 うつらうつらとしていると、この世界に来てからの事が脳裏をゆるく横切っていった。

 突然召喚されて、ゼフィールと出会って、ルナールを助けて。お店を開くことになって。

 いつの間にかこの世界で生きていくことに馴染みつつあるけれど、それではいけないとも思う。


 でも、穢れで困っている魔獣や獣人、亜獣人たちがいるなら、助けにはなりたい。そう思わずにはいられない程度には、私はこの世界に馴染んでしまった。



 

 お昼頃、改めて尋ねてきたライカンさんが、テリア王国の動向を説明してくれた。

 

「それで、これからどうなるんでしょう」

「おそらく、戦争になると思います」

「せ、戦争!?」


 思いもよらなかった言葉に、私は素っ頓狂な声を上げてしまった。


 どうしてテリア王国の転覆が戦争になるんだろう。


「どうやらテリア王国をを占領したマグヌス・シュナウザー——シュナウザー領の前領主ですが、そやつが皇帝を名乗り、大陸に覇を唱えようとしているらしいのです」


 シュナウザー領の前領主といえば、ルナールを生贄の儀式で支配しようとした、悪徳領主ではないか。

 その悪徳領主は邪法に手を出した罪で、シュナウザー領主の座から追い落とされたと聞いている。

 その領主が邪法によって亜獣人たちを支配し、邪竜さえも支配下に納めたというのだろうか。その挙句、大陸に覇を唱えようとは。


「戦争になったら、ライカンさんも行ってしまうのですか?」

「ええ。私は衛兵ですが、軍に糾合されると思います」


 その言葉に、余計に不安が降り積もる。


 行ってほしくない。

 

 戦争にだなんて、行ってほしくないと思う程度には、私はライカンさんに情が移ってしまっていた。


「すぐにというわけではありませんよ。あやめさんこそ、聖女としての力を国に求められるかもしれません。十分に気をつけてください」

「はい……」


 それからライカンさんは、少し状況を整理するように色々なことを説明してくれた。

 

「邪竜が人間に付き従っているのもずいぶんな異常事態ですから、戦端が開かれるまでの間にそれを調査することになると思います。せめて邪法の穴でも見つかれば、多少は戦力を削れるでしょう」

『邪竜が出ているなら、我が戦ってもよいぞ。人間にあれは荷が勝つであろう』

「ゼフィール殿、ありがとうございます」


 ゼフィールは、邪竜が出たと聞いてからずっとピリピリしていた。


 そういえばゼフィールと最初に会った時も、邪竜との戦いで穢れに侵され傷ついていたのだったか。


「ゼフィール……」


 本当なら誰にも戦いになんて行ってほしくない。でも、そんなわがままを言っている場合じゃないことくらいはわかる。

 だから私は、ただゼフィールの名前を呼ぶだけにとどめたのだった。

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