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「ちょっと何してるの!」
結月は恋人からちーを引き離し、止めに入った。それから恐怖で震えるちーをブランケットで包んでくれる。結月は今まで恋人がちーに危害を加えていたのに気づいてあげられなかった罪悪感で、涙が止まらなくなった。
そんな恋人は悪びれもせず、ヘラヘラと笑いながら
「俺と結婚したいならそいつどうにかして」
と言った。結月にとってちーは家族であり親友でもある。そう簡単にどうにかできる存在ではない。合コンで知り合ったポッと出の高学歴かつ経営者の彼氏より、ちーの方が結月にとって大事な存在感なのだ。
「ちーに危害を加える人とはもう一緒にいられない。別れよう。今すぐ出ていって。連絡もしてこないで」
結月がどうにかしたのはちーではなく、恋人の方だった。それから結月は恋人の連絡先を全てブロックし、家の鍵も交換する。その恋人はもう2度と結月の家には来なくなった。
ちーはあの彼氏が出ていってホッとしていた。もう嫌な目に遭わなくて済むのだから。しばらくして結月ちゃんに阿部純太郎という新しい恋人ができたけれど、純太郎さんは前の彼氏と違って優しい人だ。純太郎さんはちーのことも可愛がってくれるので、ちーも安心していた。そんなちーはいま、日曜日に遊びに来た純太郎さんの膝の上で眠っている。