プロローグ
「俺の初めてを奪っておいて何の責任も取らないなんて、まさかそんな非道な真似はしないだろう?フィーネ・アクトン男爵令嬢」
美しい金髪に宝石のようなサファイアの瞳。
侯爵家唯一の跡取りで王宮官吏のエリート街道を行く男。
誰もが彼の妻になりたいと思うだろう。
「あのレオ・バートランドが初めてだなんて」
「おかしいか?俺は君と違って初めてを大切にしていたんだ」
なぜあの夜会に行ってしまったのか。
なぜ私はあの時気づかなかったのか。
あの甘く情熱的な彼と今目の前にいるこの男が同じ人物だったなんて今も信じられなかった。
一人で生きると決めていたのに。
仕事に生きると決めていたのに。
私の力で手に入れたもの、そのすべてが泡となる。
世界が変わったように思った今朝の自分は一体何だったのだろうか。
「これはお願いじゃない。初めて抱く人を妻にすると決めていた。それはどんなことがあっても覆らない」
選ぶ権利など私にはなかった。
ずっとずっと逃げていた結婚がこんな唐突に訪れるなんて、私じゃない令嬢だったら涙を浮かべて喜ぶだろうに、私の体は心の底から冷たくなっていった。
こんなことならあの夜会に行く前の過去に戻りたい。
イリスの何気ない一言が私のいく道を変えると思った。
でもそれは私の見た未来とは真逆の結果をもたらすなんて、あの時は夢にも思っていなかった。
たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。
久しぶりにまた書き始めました。
下にある★ボタンやブックマークで評価していただけたら幸いです。