Goodbye
去年の12月、クリスマスイベントはなかったが……
大橋くんが“ニキビ同盟”のグループLI●Eに情報を上げていた皮膚科を受診した。
そして今日は4月3日
処方されたアダ●レンとケミカルピーリング治療のおかげで、私の肌はとても改善された。
学校では前髪を垂らしオデコのニキビを隠してのマスクだけれど、春休み中はなるだけ家の中に居て、髪はヘアバンドで上げ、マスクもしなかった。
今も鏡を覗き込んで薄桜色の滑やかな肌を確かめたところだ。
きっと大橋くんは……相変わらずニキビに手をやっているのだろう。
困った人だ。情報はたくさん集めてくるのに本人はそれを実行しない。
いくらオトコの子だからといって
それじゃいけない!!
私だけ“ニキビ同盟”を卒業するわけには行かないから、明日、始業式が終わったらカレを捕まえて
マスクを外してこの成果を見せ、カレの事を指導してやろう。
と言うか……カレと同じクラスになれたらいいのに……
そうなれば、雨を心待ちしなくても済む。
鏡の中の私は
ちょっとだけ照れて、笑った。
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「キミ、香田さんだよね?」
振り返ると、そこには一条センパイが居た。
憧れのセンパイから初めて声を掛けられて、私はドギマギする。
「いきなりで申し訳ないんだけど、マスク外してもいい?」
「ええっ?!!!」
素っ頓狂な声を上げた私にはお構いなしにセンパイは私のマスクのヒモに、その指を滑らせた。
髪と肌に
センパイの指が触れて、
激しい鼓動が私の頬を染める。
「やっぱり…… 綺麗な顔立ちだね」
マスクを脱がせたセンパイは優しく微笑む。
「実は今、映画を撮り始めていて……」
そのトピックスは…とっくに私の耳に入っていた。
学年末試験の後、イケメンセンパイ二人が組んで、映画製作を始めた事。
そのヒロインが未だに決まらず、他校の女の子も視野に入れている事……
全部、知ってる!!
「オレたちの映画に出てくれない?」
「私、が ですか?」
「そう、 オレの憧れる女性のイメージに、香田さん、ピッタリなんだ!! だから頼む!!」
そう言って頭を下げてくれる一条センパイのお願いに
私は夢見心地に頷いた。
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放課後、私は一条センパイと約束した公園を目指していた。
なんだか嫌な空模様
雨降りそう
行く先をショートカットしたくて
グランドの隅を横切ろうとした時
遠くに
頬に手をやりながら
空を見上げている大橋くんが
見えた。
また、ニキビ触ってる!!
思わず足を止める。
でも
そうなのだ。
カレは進歩しない人
きっと私が願っても
それは変わらない。
だから……
涙が一筋だけ流れたけど
すぐに私はセンパイを思い出し、足早にそれらを振り切った。
ドキドキする恋心で
心をいっぱいにして