表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“シン”ニキビ同盟  作者: しろかえで
2/4

雨の日の楽しみ

最近の私は雨を心待ちにしている。


今朝も天気予報で『午後から雨になります』と報じられて

父さんや翼はガッカリしたが、私は自然と顔がほころんだ。


雨なら……


そう、雨なら大橋くんはレーシングシューズを履く代わりに図書室へ来てくれる。


そこでカレは本を読んだり、宿題をしたりしながら、いつも負け続きの勝負を挑んで来る。

私を見つめながら……



--------------------------------------------------------------------


「ねえ、大橋くん」

図書委員の私は声をひそめ気味だ。


「ん? トイレ?」


「バカっ! そうじゃなくって、ちょっとガン見しすぎ!他のクラスの子をそんなに見てたら噂になる」


「……ゴメン 噂になったら香田さん、マズいよね」


「キミもでしょ? で、どうなの? 意中の人は?」


「う~ん オレの気持ち、気付かれていないと思う」


「それって!!……私との勝負より、ソノ子の事、見つめたほうがいいよ。どうせ大橋くんは負けるんだから」


「確かにオレ、今は負け込んでいるけど……」


と、大橋くんのスマホのアラームが鳴って、カレ、慌ててそれを止めた。


「ご飯、炊けたかな、先に調理室行ってるね」



--------------------------------------------------------------------


『ニキビを触ったら負け』ゲームで負け越した大橋くんが用意してくれたもの


それは調理室での

二人だけの手巻き寿司パーティー


具材はニキビ対策になる食べ物


“ニキビ同盟”のグループLI●Eに、大橋くんは色々と情報を上げていて……今日のメニューもその一環だ。

玄米ご飯にうなぎ、“しゃぶしゃぶ”した豚肉、たらこ、納豆、サーモン、解凍した冷食のブロッコリーにカボチャなどなど。


余り大っぴらに暖房は付けられないので、こじんまりと寄り添って野菜ジュースで乾杯する。


こんなご時世だし、ウチの高校、男子生徒には調理実習もないから……家族以外の人……しかもオトコの子と差し向かいで、いわゆる“同じ釜の飯”をすることは、なかなか無い。


そう、“ニキビ同盟”の大橋くんだから……少しは恥ずかしいけど、マスクも外した。


「あ!」


「ん?」


「香田さん、マヨ付いてる 口角のあたり」


指をやってみたが

違っていたようだ。


大橋くんはテーブルの上のウェットティッシュを1枚抜いた。


「いい? ニキビには触らないようにするから」


大橋くんが前かがみに近づいて来たので……

私はなんだか思わず目を閉じた。


息遣いすら聞こえず、僅かに衣擦れの音だけ


不織布の先が、本当に触れるか触れないかくらいで

スイっ!と去っていった。


「取れたよ」


……

……


胸の鼓動が少し虚しかった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ