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“シン”ニキビ同盟  作者: しろかえで
1/4

その始まりは…

涙で端っこがクニャクニャになった白い不織布マスク……

外してみたら内側少し右上に、ポチンと赤く血のにじみ跡があった。


頭の中を……

さっきの言葉がリフレインして

また涙になる。

その言葉が憧れの一条センパイの口から発せられたものだから……


『見た?! 今すれ違ったコ。顔中ニキビの花盛りだったね』


確かに私はボツボツのニキビ顔!!

マスクだって涙だけじゃなくニキビの血が滲んでいる。


みっともなくもどうしようもない。


情けなくてしゃくり上げるとパフン!とレジ袋がぶつかった。

きっともうすぐ上陸する台風のせいだ。

私を蔑み、投げつけられたものではないはず……


『ごめん!!』


向うの方からオトコ声がして、バタバタ駆け寄って来る足音。


レジ袋を顔から剥がすと、同じ高校の制服が立っていた。

「ホント!ゴメン!! 袋、オレの手からすり抜けちゃって!!」


泣いていたのを見られたくなくて、私は顔を伏せながらレジ袋を差し出す。


「あの、オレ、マスクだめにしちゃった?」


そう言われて私、今更ながらマスクを外しっぱなしで、ニキビ顔を剝き出しにしている事に気が付いたが……

申し訳なさそうに覗き込むこの人の顔も私以上のニキビだらけで……

すこしだけホッとした。


この人、リュックのポケットの中から個包装のマスクを取り出し

「これ、代わりに使って下さい。お願いします」と頭を下げる。


ネクタイの色が私のリボンと同じ緑なので、1年生だと分かった。だとすると身長は結構高め?細身だけどモヤシじゃないから……やっぱり私の苦手な体育会系?


差し出されたマスクを受け取るのをためらっていると

「あの、1組の人ですよね。オレも西高で4組なんです。だから……それほど怪しくは、無いです」


どうしてだろう……


私はその時に思わず吹き出してしまった……今泣いていたばかりなのに


「オレ、なにかマズいこと言いました?」


それが癖なの?

カレはその時も、指を数あるニキビの一つにやって、ポリポリした。


「それ!」


「えっ?!」


「ダメなんですよ。掻破するの」


「ソウハ?」


「掻いて破るって書くの。ニキビを酷くさせてしまうんです」


「あぁ… そういう字なんですね… 引っ搔いちゃダメだっていうのは分かってるんです、でもつい…」


『「あっ!!」』

二人同時で声が出てしまう。


カレがまたニキビに手を伸ばしてしまったから……


私が

「これはもう罰金でも取らなきゃ直りませんね」

とため息をつくと、

カレは照れ隠しに「アハハハ」と笑った。


「笑いごとじゃないですよ、私だってニキビに苦しんでいるんです」

思わず口をとがらせると

カレは「ごめんなさい」とまた頭を下げた。


「私達、同じ高校なんだから、今度見かけたら本当に罰金取ります」


「じゃあ、オレも見かけたら罰金取ってもいい?」


「いいですよぉ。絶対私の方が勝つんだから」


「いやいや、オレ、こう見えても目ざといから、キミから取った罰金で宮殿建てちゃう!『罰金ガム宮殿』って」


「アハハ。バカみたい」


「いいや!オレ、真剣だから!」なんて、カレは腕組みしてみせる。


「宮殿どころかガム買えるお金ですら徴収させないからね」と私もいつの間にかクスクス笑っていた。


「オレ、大橋ハルって言います。字は暖房の暖です」


「私は香田紬(こうだつむぎ)です」



私は台風の風に押されたのだろうか……

こんな風に……

カレと“ニキビ同盟”を結ぶ事になったのだった。

全4話の短い連載です!!

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