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疫病神のムルシエラゴ  作者: 愛車 風斗
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6

「繰り返しになるけどさ、単純な仕事だった。だよな?」


 そもそも、構成員が三人しかいない時点で単純な、阿呆な事しかできないに決まってる。

 ましてや俺の舎弟……一年前から俺の下についているんだが、こんな奴でも可愛いっちゃ可愛いが、何せ…………。


「単純ではある。だけど、難易度が高い。これが、ワイの感想」

「それってどうよオマエ。単純って言えるか? ん? 日本語の問題よ」

「内容自体は単純だよ。敵の幹部を一人殺すだけやからして」

「それ一つだけ取ると確かに単純には聞こえるな。だけど、それを取り巻く現状として、あれは、お前の目にどう映ってるんかな」


 フロントガラスの先には、黒塗りの高級車が貫禄満点の車列を成している。

 いま、俺たちが走っているのは、三車線ある首都高速の真ん中の車線。


「西野……貫禄すごいよね」

「いや、だから感想を求めているんじゃなくてだな」


 西野にしの殺人塾さつじんじゅくは今、日本で一番勢力を持つ極道組織だ。


 必死で齧りついていかないと、ウチみたいな弱小は凌ぎを全て吸い取られる。自分たちが掌サイズの磁石で必死に錆びた釘を探して地面を這いずり回っていると、トラックについた超巨大電磁石でそこらの空き缶や標識や自転車ごとすべて攫っていってしまうような、もう笑っちゃうくらい明確な力の差がある。


 少しでもヤツらを混乱させて、凌ぎを剥がし取らなきゃこっちは干上がる。

 泥水でもいい、奪わないと枯れるんだ。なりふり構ったられるような状況じゃない。


 ――みっともない?


 はっきり言って、俺たちはもうメンツや体裁なんか気にしていられない。

 背に腹は代えられない背水の陣というヤツだ。


 第一、 ウチのボスはあれでいて重度の鬱患いだ。

 デュロキセチンとか飲んでた。

 鬱患いのアウトロオなんて……情けなくて並みの精神の持ち主なら耐えられるハズもないんだ。

 ……だけど、本当にいま、心の病になるアウトロオは増加している。

 

 それでもなぜ足を洗わないかって?

 確かに俺はチンピラに毛が生えた程度だ。ヤクザほどの威厳や力もなく、半グレほどの頭脳も勢いも無い。

 そこまで強い訳じゃない。

 

 だけど、このヘンテコなボスにも恩義があるから、抜けやしないんだよ。

 

 ――筋は、通す。

 

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