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途中で虎目を拾い、なんとか生きて帰る事ができた。
アジトへの帰投と同時に、労いとそっくり同じ質量の説教を頂戴した。
まず、生きて帰って来られた事を褒め称えるべきだと思ったが、どうやらそれは俺の勝手なひとりよがりに過ぎなかったらしい。本当にただの使い捨ての兵隊扱いもいいところだ。
「いやあの、ですから」「結論を先に言え」
「あ、はい。すんません」
「み! みぃ! み! 右左のみい!」
「…………すみません」
「……はぁ~あのな前から言っているように俺たちアウトロオもいい加減欧米の文化を取り入れてグロバルしなきゃいけないんだよわかるかな欧米人の言動を観察していると結論を先に出してから説明をするから聞き手は頭の中で整理しやすいが日本人はさきにウダウダと言い訳をしてから結論を言って本題を煙に巻きがちでもう本当にいやらしいな強引に自分の思い通りにしようとしているようでげひんなんだよわかるか」
「あの、はい。すみません」
なんでウチのオッサンは息継ぎせずにこんだけ喋れるかな。予備の肺でもあるのかな。
「謝る気持ちはあるのかなぁ本当に」
「はい。すみません」
「今日は本当にいい天気だぞ、瑪瑙。なあ」
「はい。すみません」
「気持ちいい気温だ」
「すみません」
「洗車日和だ」
「すみません」
ネバっこいなあ、納豆かよ。ガマン汁かよ。
早く終われよ。
「――で、今回も結論としては、ヘマなわけだな。それで、前回はどうだったかな?」
我がホーム、亜芽慈守灯のボス。一応の兄貴分で説教が長くて、普通の人と日本語の使い方がかなり違う男だ。本人いわく幼稚園を中退しているらしく、今まで生きてきて文字を書いたのはたったの一度だけ、運転免許を取る時にマークシートに記入したことだけらしい。
本人いわく、だが。
毎回、何かが終わると成功しても失敗してもこの、今みたいな狐のように吊り上がった目で俺と虎目を睨み付ける。もう慣れっこだが。
整髪料で固めた髪の一部が崩れ、顔が四角めの鉄腕アトムみたいな……もう笑いを堪えるのが苦痛なくらい珍奇なシルエットになって。
本人は自分は最高にイケていると思っているようだ。なんでも、最近の〝お気に入り〟じきじきにカットしてもらったと話していたから。
うちのオッサンは、キャバクラに行くノリで、可愛い女の子のいる美容院巡りをするのが趣味。
正直、アウトロオの世界の中でも相当浮いていて避けられている。
「……見つかっていました」
「そら見ろ。いったい何度言えばお前らはマトモな仕事が出来るようになる? こんなお遣い一つこなせないようなヤツ、ここに居てもらっても食わせてはいけないんだよ。次の件も失敗したら、もう引導を渡すしかないな。あ~。きれいさっぱり出て行ってもらうって事になるから、覚悟しとかないと」
机をコツコツと叩きながら話す。キツツキじゃあるまいし。
そういえば、何かのドラマにこんな登場人物がいた気がする。
「そ、それって……」
今までずっと隣で震えていた虎目は、大きな腹を震わせた。
組長の目がそのとき、まるで洞窟の中で長年発見されずにいた水晶のように光を孕んだ。
「破門じゃ」