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「あ~ちょっと待ってくれ……」
俺はまず、車の外に出て深呼吸をした。
東京都心隕石直撃級の大事件が、同時に二つも飛び込んできた。
虎目が生きていた、だが無事ではない。まさかの、西野殺人塾に捕まった。
次に、ボスが心中。
こちらは向こうが俺を動揺させるために敷いた罠かもしれないが、もしも本当だった場合はまずい。なぜなら、ボスもあれからずっと、音信不通だからだ。
どちらも逼迫しているが、何よりもまず、虎目の救出が先だとみた。
西野殺人塾が出入りしているビルは、ここからそう遠くない。
車で三十分も走れば大きな駅に着く。その駅からだいたい、徒歩で二分くらいのところに西野殺人塾の事務所がある。幾つかあるうちの、一つだ。大本は未だに場所が割れていない。
こいつは、いよいよ逃げられないぞ。
家に帰り、妹とカナコちゃんを前にして俺は崩れ落ちそうになった。
どう言えばいい。
何を言えばいい。
やっと出迎えてくれる可愛らしい存在を手に入れたのに!!
「お帰り」
「ただいま」
「どうなの、状況は」
「順調」
――じゃないよ全く。
「……そう、よかった。もうすぐごはん、できるからね」
「…………」
カナコちゃんはテレビを観ていた。
俺が借りてきたビデオだった。
画面の中で、黄色くてゴーグルをしたバイキンみたいな奴らがたくさん動いている。
「………………………」
この子の父親はもう、いない――?
そしてその事を知らず、この子は今、ここにこうしている――?
そしてまさに今、虎目が命の危機にさらされている――?
車が見つかってしまった今、俺が逮捕されるのも時間の問題――?
――やれやれ。
いよいよ完全に逃げ道がなくなってしまってから、ようやく進路がわかるとは皮肉だぜ。
思えば人生いつもそうだ。
本当にどうしようもなくなってからしか、わからない。
俺は結局、ロクな生き方はできないさだめ(・・・)らしい。
最初から決まっていたんだ。俺が物心つく、ずっとずっと前から。
この際、自分の事なんかどうでもええ。
俺より若い虎目とカナコちゃん、そしてなにより、妹の未来を奪うわけにはいかない。
――鉄砲玉。
既に撃ちだす砲台すら無い、文字通り一人っきりだが、最後くらい派手に散ってやる。
そうすりゃ死後に英霊と言ってもらえるかな。
どうせもともと八方塞がり。
やってやろう。
終わらせよう、このクソったれな人生を。
ようやく、俺の人生がちゃんと動き出した気がする。
俺の線路を走る、超特急。
暗い暗い、地獄行きの。




