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疫病神のムルシエラゴ  作者: 愛車 風斗
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 帰り道。

 ホームセンターの前を通った時、あいつは店に寄れと言った。


「なんか買いたいのか」

「うん、ちょっとね」



 ほう。


 つるはしでも買って、俺を殺すのかな。

 除草剤をコーヒーに混ぜるか。

 それとも俺をお洒落な赤レンガで殴ってからコンクリートを被せるか。

 チェーンソーで血祭か。

 なんて、面白おかしい想像を膨らませながら車内でタバコを吹かしながら待っていると、何やら三つほど袋を提げて戻ってきた。



「何買ったん」

「ちょっと個人的なもの」

「……へえ、あっそ。それより時間が時間だぞ。腹も減ってきたし、飯どうするよ」


 午後一時十五分。腹拵えにはちょうどいい頃合いだ。


「イイお店知ってるんだけど、奢るから一緒にどうかな?」

「また奢ってくれるんか? 若いくせにほんと気前だけは……待て。後から請求するとか、こじ付けてなんかやろうってんじゃないだろうなぁ」


 俺はしかと睨みつける。


「違う違う。本当の奢りだって、善意だよ善意。気持ち」

「言ったな? 信じるからなそれ、言ったからな?」

「はいはい。ほら、いいから出して。時間もエネルギーももったいない」

「うるせえ。俺はお前の運転手じゃあねえんだよ。一丁前に指図すんなや」



 で、三十分くらい走らされた。

 

 途中でガソリンも満タンにさせた。キザにカード払いなんてしやがって。

 大嫌いだ、カード払いなんて。クレジットカードが作れない俺への嫌味にしかとれないからな。


 

 運転に飽きてきた頃、ふいに目当ての建物が姿を現した。

 JRの駅近くの商店街の一番端、高架のコンクリート土台に埋め込まれるような妙な造りの店だ。


「運転ご苦労様」

「……なんやここ。こんな若造くさい店、あまり来ねえなぁ。学生じゃあるまいし」


 ムーヴのドアを閉める。車体全体が身震いするように揺れる。


「占いカフェだよ。最近、若い子の間で人気でさ。よくテレビで言ってるでしょ」

「占いカフェ? 悪いけど聞いたことないな。テレビもじっくりは見ないタチだし。どういうシステムなんだ?」

「なんというか基本は普通の喫茶店なんだけど、ママがいろんな占いや人生相談に乗ってくれるってとこかな。どこのバーや喫茶でもそうかもしれないけど、差別化の基準はママの人柄や力量だね。マニアックな話になってくるんだけど、例えばタロット占いに特化した店とか、手相が見れるママがいる店とか、前世鑑定が得意な店とかさ」

「へえー。俺の若い頃はそんな小洒落たのは無かったな。喫茶ってーと漫画が読めてタバコが吸えりゃ御の字ってとこだ。まあ、とりあえず飯が食えりゃええ。喫茶ならオムライスやパスタくらいあるやろ。オッサンは腹が膨らめばインスタ映えだろうがインスタントカレーだろうがなんでもいいんだよ」

「メニュー豊富だよ。よいしょ」


 引き戸を引いて、入店。

 店に入ると不思議な匂いが漂っていた。


「んん……なんだこの匂いは?」


 なんともいえぬ、スパイシーな香り。


「知らないの? これシナモンだよ」

「あぁ……あれってこんな匂いなのか」



 シナモンって確かキノコだよな。なんか地中に生えてるやつ。



 カウンターの奥から大柄な人影が現れた。


「……えっ……」




 ――男だ。どう見ても。






 だけど格好は女。


 服装、髪の毛、メイク……女のもの――


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