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無理に決まってる。
まじで。
単純ながら、土台が腐っているのだから。
砂の上にそのままビルを建てたって簡単に陥没するのと同じだ。
説明するまでもないのに、なんで上は分からないかね。
なんで、ゴリ押せば下は本気になって勝手に自然現象的に打開すると思ってるのかね。
戦後の教育方針の負の産物め。これならゆとり教育の方がマシだろうに。
これはまだ最近――半年前の話だ。
大事にしたくないと言ったのは他でもない虎目だが、言いだしっぺが真っ先にとんずらするという点では小学生の隠れんぼと何も変わらない。
所詮、この稼業はそんな連中ばかりだ。
身体は体毛と脂肪が増えたようだが、肝心の〝アタマ〟はどんどん縮小していっている。
ま、俺も同じだがな。
「あれ、奴らどこ行った?」
「知るか! 見えないんだったら地下にでも潜ってんだろ。もっとよく探せ、絶対その辺に隠れてるぞ。気ィつけろよ」
「適当な事言わんと――うおおおお!」
もはや映画の演出か何かだと思った。
目の前のマンホールの蓋が持ち上がって、地面から黒服が数人這い出してきた。
「冗談が現実になるのはもううんざりだ、ちくしょう! くそっ!」
「走って瑪瑙! 止まらずに突っ走らないと!」
「俺の前を走れるようになってから言えや肉団子!」
飲食店街の端から端まで走り尽くした。狭苦しい路地を何度も避けて、また入っては抜けて、意識せずとも二人は自然と堤防の方へと向かっていった。
人間は、野生の勘で緊急時には少しでも広いところへ行こうとする。
「奴らは、どう、よ、ひいいぃ、ひい、ゲホッ、おえっ」
「バテてる場合じゃねえぞテメェ。お前の今日の客は、蛇より執念深いってんだろ? このままじゃ追っつかれんぞ!」
「二手に、別れよ……ワイは造船所の方へ行く、瑪瑙は魚河岸の方へ、おーけー?」
「ああ、それ迷案だねほんと」
コンテナの間を駆け抜け、漁師や水産業者らで賑わい、猫とカラスとフナムシの犇めく狂騒的な魚河岸市場に身を投じた。
鮮魚を満載した幾台ものターレットトラックがさながらフナムシよろしく縦横無尽に駆け回る構内で、身を隠せる場所は無いか睨みを利かせる。
魚の生臭いにおいに、眉間が怒る。
「お兄さん。ちょっと、赤い服の。どうしたのそんなに汗だくで。コレどう? 今朝一番の新鮮なワカ」「最高だね、もらってくぜ」
一般客と思って声をかけてきた漁師の手から、新鮮なワカメをひったくると、一目散にダッシュ。
「ちょっと! タダではあげないよ! お兄さーん!」