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両親と手紙

 私はライちゃんから受け取ったお父様からの手紙の封を綺麗に開けた。


『ソフィーへ。

 ライネットくんから旅に出たことを聞きました。

 婚約が破棄になった件と学園を退学になった件はアラン君から聞いています。

 だけど私は信じていません。きっと面倒ごとに巻き込まれているのだと思っています。

 何より学園に通うことも、婚約のことも我々大人が勝手に決めたことだ。気にする必要はない。むしろ今まで付き合わせてしまったこと、悪く思っている。

 旅についても認めます。ソフィがしたいのならば何日何年でも旅に出ていなさい。

 それはきっと君の人生に大きな影響を与えることになると思います。

 もし何か困ったことがあれば遠慮なく手紙をください。すぐに駆け付けますし、お金もすぐに送りましょう。

 もし旅に疲れたら遠慮することなく帰ってきてください。

 ソフィの好きなシチューを用意して待って居ますから』


「旅に出て1週間後ぐらいの手紙ね。

 内容は大丈夫そうだった?」


 ライちゃんは心配そうにこちらを見た。

 きっと今にも泣きだしそうな表情をしていたからだろう。


「うん、大丈夫。

お父さんは私のことをずっと信じてくれてたみたい」


 その事実が堪らなく私は嬉しかった。

 それと同時に罪悪感を覚えた。


 私は学園を退学になった際、お父様に伝えることを怖がった。

 私がお父様を信じることが出来なかったからだ。


「お屋敷に戻ったら謝らないといけないなぁ」


 私は笑顔を見せた。

 その様子に安心したのか、ライちゃんは更に鞄から手紙を取り出す。


 先ほどと比べて少し新し目に見えた。


『ソフィへ

 旅に出たと聞いてから二週間が経ちました。

 ライネットくんから手紙は時期を見て渡すことは聞いている。

 きっとこの手紙を読んでいるということは、いくらか心に余裕が出来たのだろう。

 旅がソフィの人生に良い影響を与えたようで、ライネットくんには頭が下がるばかりだ。

 いつ戻ってきてくれても構わない。だからゆっくり旅を続けなさい』


 三枚目もくれた。


『ソフィへ

 体の調子はどうでしょうか。

 そろそろ資金も尽きたのでないのでしょうか。

 もちろん商人としていついかなる時も生きていけるように教えたつもりですが、同時に貴族の嗜みも教えたつもりです。あまり無理をし過ぎないように。

 もし困っているのならばすぐに言いなさい。すぐに駆け付けます。

 いつでも屋敷に戻ってきてもいいですからね』


 四枚目


『ソフィへ。

 そろそろ戻って来て下さい!!』


『…』


 四枚目の手紙は涙の痕とか、皺とか色々ついていた。

 昔から心配症な所はあったけど…うん。


「それでどうする?

 私とやりとりした感だと帰ってきてほしそうだったけど」


 そういうとライちゃんは別の便箋を見せた。

 そこにはデカデカと


『そろそろ娘を返さないと、君の両親にチクるぞ』


 と書いていた。うんお父様、必死だなぁ。

 ていうかライちゃん、両親には所在を隠してたんだ…。


 私はしばらく考えた。

 お父様に会いたい気持ちは確かにあった。

 許されているのならばなおのことだ。


 悩んでいる私を見てか、ライちゃんは思い出したように会話を切り出した。


「それともう一つの良い話がね」


 そういうと始めに出していた封筒のもう片方を手渡した。

 こちらの方は既に封が開けられている。

 つまり私個人宛てというわけではないのだろう。


 名前を見る。そこには―――


「学園から!?」


 私は差出人を見て驚いた。予想していなかったから。

 学園の名前と学園がある街を治めている人の名前。

 学園長の名前が使われていないことから考えるに―――


「捕まったみたいだよ。

 エミリアさんと学園長」

「…」


 私は封筒を開け、書かれている内容に目を通した。

 要約すると、学園長とエミリアさんは敵国のスパイであり、国の要人の子息に接触することで重要な機密を得ていたこと。

 現在は重罪人として捕まり、牢屋に入れられていること。

 そして私たちの冤罪が証明され、退学処分も撤回されたこと。またそれについての長い謝罪文だった。


「やけに貴族の子息だけ相手していると思ったらそういうことだったみたい」


 アラン様も情報を引き出す為に利用された一人なのだろう。

 そうなると彼も捕まったり―――


「間接的に国家反逆に加担していたわけだけど、国単位では処罰の対象にはならなかったみたいだよ。

 まぁお家の方でこっぴどく叱られているんだろうけど」


 ライちゃんは私の心を読んだように教えてくれた。

 

 彼も騙されていた。被害者なはずなのに不思議と同情することは出来なかった。


「それでこれからどうしようか?

 晴れて学園に復学出来るわけだけど」

「…」


 元々のこの旅の目的は、学園を追放され家にも戻りたくなかったことが理由だった。

 言わば家出だ。ライちゃんは別の目的だったわけだけど。


 問題が解消された今、学園に戻るべきなのだろう。

 貴族の令嬢としても、まだ成人していない子供としても。


 ライちゃんは心配そうな顔でこちらを見る。

 大丈夫、私の心は決まっていた。


「家に戻ろうと思うの」

「…そっか」


 ライちゃんは心配そうな、それでいてどこか安心したような表情を向けた。


「一度家に戻って、お父様とお母様、そして―――アラン様に会ってから、またライちゃんと旅を再開したいと思うの。

 いいかな?」

「!?」


 ライちゃんの表情がパァっと明るくなる。

 私たちの旅は終わらない。まだまだやりたいことがあるのだから。


 その為にも私は私の問題を、ケジメを付けなければならない。

 私のトラウマと対峙しなければならない。

 

 でなければいつまでも私は成長することが出来ないのだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] こんな友達、ほんとにいたらいいな。。。素敵なお話。 ありがとうございます。
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