どこから来たんだお前は
鳥たちは目がいい。
鈴木が高く掲げたおにぎりにすぐに気が付いて一斉に飛んできた。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアーーーー!!!!」
チュン! チュン! カァー! カァー! クルックゥ! クルックゥ!
鳥たちは鈴木の周りをすごいスピードで縦横無尽に飛び回った。
鈴木は恐怖に震えながらも鳥たちがおにぎりを食べやすいようにと両腕をまっすぐ上に伸ばして2つ並べて掲げていた。
獲物を定めた鳥たち次から次へと飛び掛かってはちびりちびりとおにぎりを削り取って飛んでいく。
食べ物よりも鈴木の着ているシースルーのカーディガンに興味を持ち、肩や背中にとまって嘴でつついたり引っ張ったりするカラスや、巣と間違えたのか鈴木のお団子ヘアの上に乗っかって身体を丸く膨らませてお昼寝をするカッコウもいた。
ほかにもTシャツの首襟の所に鉤爪をひっかけてとまって、Tシャツの中を何度も不思議そうに覗き込んで、巣作りによさそうな場所っだと思ったのか胸の谷間にモゾモゾと潜り込むエッチなスズメもいて鈴木は思わず「きゃああああああああ~!!」と悲鳴をあげて顔が熱くなってしまった。
「鈴木さんっ!」
九条は鈴木のもとへ助けに行こうとしたが、自身が振り回していたポーチが運悪く自分の頭に当たって、その衝撃で被っていたヒーポ君のゴムマスクが回転して前と後ろが逆になってしまった。
ゴムマスクの覗き穴の位置がずれて突然視界を奪われた九条はちょっとしたパニックに陥った。
はやく覗き穴を探しださなきゃとあたふたとマスクをずらしているときに、顔の近くをカラスが「カァ~!」と鳴きながら通過していったので九条は「きゃあっ!!」とびっくりしてバランスを崩して地面にしりもちをついてしまった。
そんなところへ、2匹のカラスが網の両端を咥えて飛んできた。
鈴木が畳んでオープンカーの助手席に置いてあった網のドレスだ。
カラスらは九条の上空を通過するタイミングで網を離し、落下した網は九条に覆いかぶさってしまった。
「キャア! 何なのこれはっ!?? 身動きが取れない! イヤぁああ!!」
九条は視界が真っ暗なうえに身動きまでとりにくくなってしまってさらにパニックになってしまった。もがけばもがくほど絡まってしまう。
そうしている間にも鈴木の周りにいる鳥たちの好奇心はエスカレートしていき――。
ビリビリビリ!
「きゃああああああー!」
鈴木が着ていたカーディガンはホトトギスたちに無残に引きちぎられ、引き剝がされてそのままどこかへ持っていかれてしまった。
さらにはデニムのショートパンツの腰周りに並んでとまって遊んでいたスズメやメジロやウグイスたちがかわいらしい小さな嘴を使ってチュンチュンと器用にボタンを外して――。
「いやっ……」
チュンチュンバサバサバサと無邪気にチャックを下ろして――。
「やめてっ……」
ファサッ……!
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああー!!!!」
無事、デニムのショートパンツはストンと脱げ落ちてびっくりした鳥たちはパタパタパタと一目散に飛んで行ってしまった。
その頃、オウシロウはというと上半身はほぼ裸にされてカーゴパンツも強ダメージ加工状態にさせられ体じゅう傷だらけで血を流して地面にうつぶせで倒れていたが、鈴木の甲高くてうるさい悲鳴を聞いて意識を取り戻した。
顔を上げて寝ぼけ眼で周りを見渡すと、両手でタマのようなおにぎりを掲げたパンダの顔をした女が鳥たちに囲まれておびえているのが見えた。
よく見たら下はパンティーしか穿いていないっ!
ブシャッ!! と勢いよくかつ短く大量に鼻血を噴出させて一瞬で目を覚ましたオウシロウ。
大きな目ん玉をまん丸にひん剥いてよく観察をしたら、デザインは真っ白な生地に物憂げな眼差しをした薄汚れたリアルのヤギの顔面が大きくプリントされているかわいくないパンティーだった。
なんだかやる気が出てきたオウシロウは傷だらけの重たい身体にムチを打ってなんとか起き上がろうと地面に手をつき、歯を食いしばり、ゆっくりと身体を持ち上げようとした。
その際、オウシロウ背中の上で身体を丸く膨らませて仲良く身を寄せ合い気持ちよさそうに寝ていた鳩の夫婦はびっくりしてブルブルブルッと頭を振って目をパチパチさせ、立ち上がって首を伸ばしてキョロキョロとあたりを見回し「クルックゥ、クルックゥ」と鳴いたがそんなことは今はどうでもいい。
なんとか四つん這いの体勢になったオウシロウ、いざ立ち上がろうとしたその時だ。
バサバサバサとどこからかキツツキが飛んできてオウシロウのケツにちょこんと止まり。
何を思ったか、そのキツツキはオウシロウのケツの穴があるあたりを一点集中、細長くて頑丈な嘴を使ってコココココココココココココココココココココココココココココ!! とものすごい速さでつつきだした。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
オウシロウはケツの穴に突然に伝わった激しい振動と衝撃に耐えきれずに四つん這いのまま身体をのけぞらせて叫んだ。
それで背中の上に乗っていた鳩の夫婦はびっくりしてバサバサバサバサとどこかへ飛んで行ってしまった。
コココココココココココココココココココココココココココ!!
「何!? 何の音!??」
「ぐああああああああああああああああああああっ!!」
「オウシロウっ!!?」
謎の音とオウシロウの苦しそうな叫びを聞いてただ事ではないと危惧した九条はあわててゴムマスクを脱ごうとした。両手も網に絡まっていて動かしにくかったが何とか脱ぐことができた。
そしてオウシロウの現状を知った。
コココココココココココココココココココココココココココ!!
何が目的か、一心不乱にオウシロウのケツのあなを責め続けるキツツキ。
「ぐはっ……! あ゛あっ……! やめっ……。うあっ……。コノ……ヤロ……ウっ」
オウシロウは歯を食いしばってケツの衝撃に耐えながら、震える右手をゆっくりとケツのほうに回してキツツキをやさしくそっと鷲掴みすることに成功した。
キツツキは何が起こっているのかわかっていないようで、ケツのアナをつつくのをやめて目をぱちくりさせ、首を傾げて「キョッ!」と鳴いた。
体力を削られていたオウシロウはハァ、ハァと静かに息を整えながら震える脚でゆっくりと立ち上がり、握りしめていたキツツキを空に向けてそっと放した。
そして手の甲で鼻の下から顎にかけてべったりとついていた鼻血をぬぐい取ってピシャリと地面に振り払った。
その様子を、地面にへたり込んだまま放心状態のような感じでぼーっと見ていた九条。
オウシロウと目が合った。
彼は血走った大きな目をまん丸に見開いたまま九条を睨みつけ、瞬きもせずにゆっくりと歩いて近づいてきた。
その殺気だった姿に九条はすこしだけ恐怖を覚えたが、いろいろなことが立て続けに起こったせいで頭がまともに働かずに今はただぼーっと見つめていたかった。
オウシロウは九条のそばまでやってくると彼女に絡まった網を鷲掴みにしてブチブチブチブチッと豪快に破り捨ててしまった。
九条が「ありが……」とうと言おうとした、その時だ!
「きゃあああああああああああああああああああああああ~!!!」
ウグイスにパンティーの中に潜り込まれた鈴木が絶叫した。
オウシロウは地面にへたり込む九条を見下げて「おいお前。あのパンダは俺がなんとかするからおまえはいつでも車を出せるように準備をしておけ」と脅すように言うと、「うあらああああああああああああああああああー!!」と雄叫びをあげて鈴木のもとへ突進していってしまった。




