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拷問

『がああああああああああああああああああーっ!!』 


 刑務所内は意外と静かで、面会窓口がある建物に向かって歩いている途中、少年のけたたましい咆哮が何度も聞こえていた。


「先輩、誰か叫んでますね」


「叫んでいるわね」


「なんか怖いですね」


「そうね。建物の中ではいったい何が行われているのかしらね」


「まさか拷問されているとかではないですよね」


「平岡くんの声だったりして」


「そんな……。まさか……」



   *   *   *


 ここは牢獄のある蒸し暑くて薄暗い部屋。

 窓もなくゆいいつある明かりは天井を縁取るLEDのピンクの照明のみ。

 

 手には手錠、脚には網タイツ、足首には鎖で繋がれた鉄球、そして黒いエナメル素材でできた女王様のブラとハイレグビキニのセットを着せられた平岡は三角木馬の上にまたがらせられて3人の刑務官の制服を着たおじさんらにムチを打たれていた。


 パチンッ!


「ああっ!」


 パチンッ!


「うわあっ!」


 体中汗まみれ傷だらけで鼻水とよだれを足らす平岡。


 パチンッ!


「ぐはあ!」


「おらあっ! どうだぁ!? 気持ちいいか!? これは悪いことをした罰だ! うひょひょひょひょひょ」

「うっへっへっへっへ。もっといい声で鳴けよ。うっへっへっへっへ」

「ぐへへへへ。まだまだたっぷりかわいがってやるよ。ぐへへへへ」


 悪党面をした汗まみれの刑務官のおじさんたちがニヤニヤと笑い、その中のリーダー格が容赦なくムチをふるう。


 パチンッ!


「っ……」


「あれえ? 声が小さいなぁ?」


「くっ……」

 平岡は歯を食いしばりリーダー格のおじさんを睨みつけた。


 リーダー格は平岡の顎をくいっとつかんで顔を近づけ「なんだその目は? なんか不満でもあるのか? ああ!?」と睨み返す。


「ペッ」


 平岡はリーダー格の顔に唾を吐いた。


 反射的に目をつぶったリーダー格は沸々と沸き上がる怒りを抑えるように手の甲でゆっくりと顔を拭い。


「いいだろう。おまえは自分の立場が分かっていないようだから徹底的にわからせてやろう」そう言うと、天井から吊り下がっていた鎖をジャラジャラと引っ張った。


 鎖に繋がれていたのは平岡の手錠で、彼は三角木馬にまたがったまま両腕を上にあげる体勢にさせられた。


 そんな平岡のブラを両手で掴み、真ん中からブチブチッと引きちぎるリーダー。


「木村っ!!」


「はいい!!」


「アレをやれ!」


「はいいー!!」


 リーダー格に木村と呼ばれた男は敬礼をすると一歩前へ出て平岡のそばへ近寄り、両方の手の指をすぼめて突き出すようにして胸の前に構えた。


「やめろ……」と力なく木村を睨む平岡。


「やれっ!」


「はいい!!」


 威勢のいい返事とともに真っ直ぐ前に伸ばした木村の両手の指先は、平岡の両方のチクビを的確にとらえドリルを開始した。


「ウィィィィィィィィィィィィィン!!」


「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

   *   *   *



 ――そんな事を考えながら晴天の空を見上げて心配そうな表情になる鈴木。


「キャアアア!」


 自分がどんどん斜め方向に進んでいる事に気がつかず、通路のわきに置いてあったスチールバケツの中に足を踏み入れて(つまづ)き、その(そば)にあった植木の茂みの中に倒れてしまった。


「鈴木さん!」

 先を歩いていた九条が悲鳴を聞いて引き返してきた。


 そして、茂みから突き出た鈴木のケツを見て「大丈夫!?」と驚きながら腰を掴んで引っこ抜いた。


「ごめんなさい。いろいろ考えごとをしていて」


「何やってんのよ。ちゃんと前を見て歩きなさいよ。……えっ、鼻血がでてる!」


「あっ」


「大丈夫!? 木の枝でも刺さったの?」


「あっ違います。大丈夫です。これはちょっとのぼせちゃっただけです」


「もう、しょうがないわね。これで拭きなさい」

 九条はポーチから真っ黒に汚れたハンカチを取り出して鈴木に渡した。


「ありがとうございます……」


「もうそのハンカチあなたにあげる」


 鈴木は申し訳なさそうに鼻をハンカチで押さえて頭を下げた。



 そんな事もあったがふたりはなんとか面会窓口がある建物の扉の前についた。


『あああああああああああああああああああああーっ!!』

 

 どうやら少年の咆哮はこの扉の向こうから聞こえているようだ。


 中ではいったい何が起こっているんだろうと二人はおそるおそる緊張の面持ちで扉の取っ手に手をかけた。


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