ついに決着!(郷田智)
「なに言ってんのよ! 郷田くんはワキガでしょっ!!!」
クソッ、飯田は俺がワキガであることを知っていたのか。
「べつに自分がワキガだからって他人のワキガを嗅いだらいけないなんてルールはないだろっ!」
「どうせ郷田くんは私たちのワキを嗅ぎたいだけなんでしょう!!」
「そうだが!!?」
俺はなんか文句でもあるかというように目を大きくして飯田を睨んでやった。
すると飯田は、「あんたは自分のワキの匂いでもかいでなさいよっ!! この変態っ!!!! ぷッ!」と唾を吐き捨てやがった。
もちろん唾は俺のところまでは届かなかったが……。
その時だ。
「いったい何の騒ぎなの?」
短く刈った白髪交じりのグレイヘアーが上品で、背筋がピンと伸びてスラリとしたジャージ姿のかっこいい初老の女性がやってきた。
右手には竹刀を持っていてなんだか怖そうな人だ。
「飯田? 富永と秋元も!?」
「ヤバッ。コーチッ!!」
慌てて起き上がろうとするバレー女子3人。健司は体勢を崩してドシンと尻もちをついた。
バレー女子3人は横一列にぴしっと並んで立った。
「おまえたちっ、練習をサボってこんなところでいったい何をやっているの!!」
男みたいな口調で強く怒鳴る初老の女性。
バツが悪そうにしてシュンとする飯田たち。
一気に場の空気が張り詰めた。
「すみません……」
飯田が申し訳なさそうに言った。
「何がすみませんだ! 私は何をやっているのか訊いているのっ。すみませんだけじゃわからないだろっ!」
初老女性は飯田たちを威圧するかのように自身の左の手の平にバシンッ! と竹刀を打ち付けた。
「ひぃっ……」
ビビる飯田たち。
その時だ。
周りで静かに見ていた野次馬女子たちが急にソワソワとしだした。
「ねえ、ちょっと。あれ見てよ……」
「何?」
「あのこのアレが……」
「きゃあ!」
「ウソでしょっ!?」
それに続いて野次馬男子たちもザワザワしだした。
「おっ!?」
「アーーーーッ!!!」
「オウシロウのオウシロウがぁぁぁーっ!」
彼らの視線は地面に仰向けで寝ている大城に集中していた。
正しくは大城の股間にだ。
なぜならそこには小ぶりながらも立派なテントが張られていたからだ。
(大城おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!)
俺は心の中で叫んだ。
どうしてだ!! そうか! ワキのにおいに興奮したのか!?
「マジかよこいつ~」
「ぎゃはははは、ギンギンじゃねえかぁ」
「ウホッ」
「やだぁ~」
「ウケる~」
「ちっちゃ~」
「きゃはははは。きゃはははははは」
「男子って……」
ぎゃはははと爆笑しだす男子たちにクスクスと笑う女子たち。頬を赤らめて恥ずかしそうにしているやつらや嫌悪感をあらわにしているやつもいた。
飯田たちバレー部3人と健司もテントに気が付くと気まずそうして頬を赤く染めた。
さっきまで男みたいに怖い顔をしていた初老女性もテントに気がつくと「あらまあ」と驚き、心なしか穏やかな表情になった。
そんなところに「どうかしましたか青山先生? 何かあったんですか」と野救部の監督の熱田がやってきた。
熱田は地面に寝ている大城を見るとすぐにテントに気がついたようだ。
「オウシロウっ!? おまえはいったいナニをっ、な、何で、こんなところで、堂々と、おっ立ててっ!!?」
熱田は慌てて大城のそばへ駆け寄ると、地面に片膝をつけて左手でそっと彼のテントを覆い隠した。
「コラーッ! おまえたち! 部活はどうしたーっ!? 何を見ているんだ! はやく部活に戻りなさいっ!」
「ちぇ……」
「なんだよ……」
「いいとこだったのによ……」
不満たらたらの生徒たち。
「そこーっ! 撮影するんじゃない! そこの女子たちもっ、スマホを向けるな! お前らもっ! 何を突っ立って見ている! 早く戻れって言っているだろ! 行けっ! ほらっ! 全員だ! シッシッ! 間違っても絶対にSNSとかにアップするんじゃないぞー! いいかー? 絶対にだぞー!!」
熱田のおかげで野次馬たちはしぶしぶ散っていき、現場には俺と先生方二人と飯田たち3人と大城だけが残った。
健司はどさくさに紛れて逃げていやがった。
ふと、あおむけで寝そべったままの大城を見たらへの字口で軍人のようにきりりと引き締まった真剣な表情をして俺を見ていた。
俺は「何見てんだよ」という感じで睨み返してやった。
すると心なしか大城の頬が若干赤く染まった気がした。
大城のテントを隠している熱田は大城の顔を見て、こいつはいったい何を考えているんだとでもいうように「はぁ、まったく……」とため息を漏らした。




