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エイリアン(郷田智)

 謎の音の原因。


 それは辺りを見わたせばすぐにわかった。


 女子バレー部の後輩の一人が、飯田の動作に合わせてスマホ画面をタッチしていたのだ。それも顔を赤くして恥ずかしそうにしながらだ。


 きっと効果音が鳴るアプリでも使っているのだろう。


 なんて息の合った協力プレーだ。


 去年の春高バレーで3位にまで行っただけの事はある。


「あパッチン、パッチン。シャキーン、シャキーン! チ~ン。 あパッチン、パッチン。シャキーン、シャキーン! チ~ン」


 飯田はいったん叩くのをやめて身体を前に乗り出すようにして大城の顔を覗き込んだ。


「やだ怖~い。オウシロウくんもしかして怒ってるの~? 顔が怖くなってるよぉ~。いったん深呼吸しようかぁ?」 


 飯田は再び大城の後ろに立つと、大城の小さいプリケツをぎゅっと両手でわしづかみにして、

「はいっ、吸って~吐いて~、深呼吸~! もう1回! 吸って~吐いて~、深呼吸~!」

 とリズミカルに呼びかけをしながらケツ穴を横に広げるように引き伸ばしたり、逆にケツ穴の中心に向かってすぼめるように圧縮したりを繰り返して大城のケツに無理やり深呼吸をさせた。


「はい、吸って~吐いて~。心を落ち着けて~! はい吸って~吐いて~。ブヒブヒ鳴いちゃって~!」


 そしてまたさっきのパッチンパッチンシャキーンシャキーンのターンが始まった。


「はいパッチン、パッチン、シャキーン、シャキーン! チ~ン。 パッチン、パッチン、シャキーン、シャキーン! チ~ン」


 それでもじっと耐え忍ぶ大城。


「なんでよっ! あんたバカぁ!? ここまでコケにされてるっていうのに、なんで何も仕返ししてこないのよっ!」

 突然キレる飯田。


「何をやっても無駄だクソ女!!! 俺は女には絶対に手を出さねえっ!!!」


 その言葉をきいた瞬間、飯田の顔からスッと表情が消えた。

 そしてただ目だけがギロリと大きく開いていた。


「そう……。私のかわいがり方がちょっと足りなかったみたいね……」


 飯田は不気味につぶやくと、大城の横へ行き、彼の片わき腹に両手を添えて「ゴロンしろっ」と低い声でドスを利かせて、ゆっくりと裏返すようにして彼を地面に仰向けに寝かせた。 


 そのとき大城の頭に乗っていたバナナの皮はポロリと地面に落ちた。


 飯田は大城の脚の上にまたいで立ち、ギロリとおおきく見開いた目で大城を見下ろして、「スリスリしてあげるねぇ~」と不気味にほほ笑んだ。


 そして突然「ぎゃああああああああああああああああー!!!」と発狂して、大城の太ももの上にストンと腰を下ろし、大城の上に覆いかぶさるようにしてべたっと抱き着いた。

 それから猫が甘えるように顔面や頭をすりすりとこすりつけた。


「コイツめ~。クソ生意気なヤツ~。あ~ムカつくぅ~。絶対に許さないよぉ~。ああ~。もぅ好きぃ~。あぁ~ん。大好き~。かわいいなぁ~オウシロウ~。なんで君はこんなにかわいいのぉ~。好き好き大好きぃ~。愛してるぅ~」

 ごちゃごちゃとひとり言をぬかしながらすりすりする飯田。


「うわあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああ!!!!!!」

 大城は怒って激しい咆哮をした。


 そのうちに飯田の激しいスリスリのせいで大城がズボンにインしていた紺色のアンダーシャツがずれて裾が出ておへそが見えた。


 それに気づいた飯田は「きゃああああああああああああー!!!」と発狂して大城のアンダーシャツをめくってその中に頭を突っ込んだ。


 ピタッとしたアンダーシャツの中で発狂しながらモゾモゾと動めく飯田の頭。

 

 そして咆哮のしすぎでゴホッ、ゴホッっと吐血する大城。 


 その光景はまるでエイリアンの子を身ごもってしまった人間の末路かのようだった。

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