謎の効果音(郷田智)
「いくよー? せーのっ!」
パチンパチンパチンッ! パチンパチンパチンッ! パチパチパチパチパチンッ!
「あそーれっ!」
パチンパチンパチンッ! パチンパチンパチンッ! パチパチパチパチパチンッ!
「いい音鳴ってんね~! もういっちょ!」
飯田は自分で合いの手を入れながら軽快に大城のケツをたたいた。
それははまるで音がはじける様なカラッとした明るい音で――。
普通にケツを叩いても音はこんなには響かないだろう。
いったいどういう事なんだ。
俺は飯田に訊いてみることにした。
「飯田! 何だこの音は!?」
「あ、気づいた? さすが野救部のキャプテン」
「何でこんないい音が鳴るんだ!」
「私、家でネコを飼ってるの、ハイヤーッ!」
パチパチパチパチ、パチパチパチパチ、パチパチパチパチパチンッ!
「それとこれとどういう関係があるんだよ!」
「お尻ポンポン」
「お尻ポンポン!?」
「ネコが催促してくるの。ケツを向けてきて、叩けってね。あヨイサッ! でもただ叩けばいいってもんじゃない。指がしっかりとまっすぐに伸びていなかったり、きれいに揃っていなかったり、手の触れる面積が広すぎたり、力が入りすぎたり、リズムがバラバラだったり、好みのポイントが少しでもずれてたりすると気持ちよくないのか猫はすぐに私の元から離れていく。そして今度はお父さんにおねだりしに行くの。はっソーレソーレソーレソーレッ!」
飯田は少し寂しそうな表情をした。
パチパチパチパチパチンッ!
「悔しかった。だから私は毎日練習した。それで叩くのが上手くなったってわけ。ポンポポンポンポ、ポンポポンポンポ、ポンポポンポンポポンッ、アッセイヤッ!」
パチンッ!
「なるほど……」
パチパチパチンッ! パチパチパチンッ! パチパチパチパチパチンッ!
大城は鼻と口から血を垂らしたまま顔を真っ赤にして怒りをためた柴犬のような表情で静かにじっと耐えていた。
さっきまで囃し立てて盛り上がっていたサッカー部の野郎どもは飯田の狂気に若干引いてきたのか、静かになって気のどくそうにしながら見守っていた。
そうしているうち、グラウンドに響き渡る軽快なケツの音と威勢のいい飯田の掛け声に気が付いた生徒たちが、いったい何が起こっているんだというようにぞくぞくと集まってきた。
パンパンパンパンパンッ! パンパンパンパンパンッ!
「どうだオウシロウっ! 気持ちいいだろ? 我慢していないでさっさと鳴けよっ!! 気持ちいです~、もっとやってくださいブヒブヒブヒ~って鳴いてきかせろよっ! セイヤッ!」
パチンッ!!
飯田は少し強い一撃を大城の尻に食らわせた。
それでも大城は黙って耐えた。額の血管はバキバキで目は血管が血走り身体は怒りでプルプルと震えて、それでもじっと耐えていた。
飯田はその様子を見て気に食わないととでもいうようにチッと舌打ちをすると。
「まだかっこつけて何もしないでいるつもり? いいわ。だったら男に生まれたことをたっぷりと後悔させてあげる……」
飯田は足の幅を広げ重心を低くして両腕を構えた。
そして「あワンッ! あツー! あワン、ツー、スリー、フォー!」っと手拍子をしながら軽快にカウントを取ると「パッチン、パッチン」と言いながら大城の右尻と左尻を交互に1回ずつ叩きつけて。
その次に手の平を合わせて合掌の形を作ると大城の股の間にすばやく差し込んで「シャキーン、シャキーン!」と言いながら大城のケツの割れ目にそうようにシュッと引き抜くと言う行為を2回連続でして。
最後に少し傾げるように大城の股の間を覗き込んで右の手のひらを差し込み、ファミレスの呼び鈴を鳴らすかのごとく下からやさしく玉にタッチして「チ~ン!」と言うという一連の行動を、軽快なリズムにあわせて連続して続けた。
「パッチン、パッチン。シャキーン、シャキーン! チ~ン。 パッチン、パッチン。シャキーン、シャキーン! チ~ン」
ひどすぎる……。
そして俺は気がづいた。
飯田がシャキーン、シャキーンと言う時に剣を抜くようなシャキーンという音が鳴り、チ~ンを言うときにはちゃんと呼び鈴を鳴らしたようにチーンと音がするのだ。
これはいったいどういう事だっ!




